このシリーズでは、大阪大学の後期の数学の問題を解いていきます。
10回目の今回は2003年です。
第1問
3次方程式の解に関する問題です。
解と係数の関係から、
-p=(n-1)+n+(n-1)=3n
q=(n-1)n+n(n+1)+(n+1)(n-1)=3n^2 -1
-r=(n-1)n(n+1)=n^3 -n
のようにp,q,rが全部nの式で書けます。あとは、p>q>rの条件から、nの候補を絞っていくとよいでしょう。
p>qからnの候補を絞って、q>rを満たすか代入して調べる、という方針がいいと思います。
p>qは2次不等式で解きやすい一方、q>rは3次不等式で解きにくいからです。
<筆者の解答>
第2問
垂線の足の軌跡を調べる問題です。
(1)OP・AB=0を式変形していけばよいです。
(2)Pがl1とl2に挟まれる条件は、t≧0かつ1-t≧0で、0≦t≦1となります。
(3) l1をx軸に見立ててA(1,0), B(bcosθ, bsinθ)となるように座標を組み、Pの軌跡を求めることにします。Pのx,y座標からbを消去すると、Pの軌跡は実はθと無関係な円になります。
この事実が分かれば、面積が計算できます。
<筆者の解答>
第3問
場合の数の問題です。「極大」という言葉を、横軸を順番、縦軸にカードの番号にしたグラフに翻訳すると考えやすくなります。
(1)2nが端にあるか、中にあるかで場合分けします。
端にある場合は、グラフが単調増加するか単調減少するかになるので、1~2nを小さい順に並べるか大きい順に並べるかになります。
中にある場合は、2nが左からl番目にあるとすると、1~2n-1のカードは、2nの左に来るか右に来るかの2択になります。この割り振りさえ決まってしまえば、2nの左は単調増加になるように、右は単調減少になるように一意に並べられるので、この割り振りの仕方が、そのまま並べ方と一致します。
(2) nと2nが極大になるとき、考えやすくするためにnが左に、2nが右にあると仮定します(最終的に2倍すれば、逆順も考えたことになります)。
このとき、グラフはnと2nをピークにした2こぶラクダの形になるので、直線部分は4つの部分に大別できます(左からA~Dと名前を付けます)。このとき、1~2nの各数字の割り振り方は、
1~k-1→AかD
k+1~n-1→A,B,C,Dのどれか
n+1~2n-1→CかD
になります。
問題文からk≦n-1なのは明らかなので、この下で割り振り方の場合の数を調べていきます( (1)と同じ理由で、割り振り方さえ決まっちゃえば、並べ方は一意に決まります)。
(3) (2)の結果をkについてΣしたものがP(n)となるので、P(n)は直接計算できます。するとP(n)は2つの等比数列の和の形になるので、割り算することで「片方が定数、もう一方が0に収束する」となるようにaを決めてあげましょう。
<筆者の解答>
第4問
円周率が無理数であることを証明する問題です。
以前、当ブログでは「円周率が無理数である」の証明を紹介したことがありますが、それとは別方法の証明ですね。
円周率が無理数であることの証明 - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)
この問題に関しては誘導が付いているので、うまく乗っていきましょう。
(1)前半は、いわゆる「e^xのテイラー展開」の証明で、fn(x)=e^x -Σx^k/k!とおいて微分して増減を確かめれば示せる典型問題です。
後半については、Σu^k×Ikをこの不等式を使って評価していきます。コツは、積分の中身を実質sinπtだけにすることです。
(2)I0はともかく、I1と漸化式の導出はかなり面倒です。
Inの積分の中身は、(tの多項式)×(三角関数)となっているので、部分積分を使ってtの多項式の次数を下げていくことになります。
最終的にInの漸化式を作りたいので、t(1-t)の形を維持することを意識しましょう。
(3)いよいよ背理法を使っていきます。
(2)の後半の結果をAnの漸化式に変えてあげると、全て整数の係数で、かつA0, A1も整数なことが(2)の前半から分かっているので、Anはすべて整数です。
そして、Inの定義式を見ると、積分の中身が正(0になるのはt=0,1のときだけ)なので、In自体も正、すなわちAnも正になります。以上からAnがすべて自然数であると分かります。
一方で、(1)の不等式を使うと、ΣAkがnと無関係なある定数未満になっていることが分かりますが、Akが全て自然数だと矛盾します。なぜなら、n→∞とすると、ΣAkは∞に発散してしまうからです。
これで円周率が有理数だという仮定が誤りだと分かったわけです。
<筆者の解答>