ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の日医大数学 -2013年-

このシリーズでは、日本医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

10回目の今回は2013年です。

(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます。)

第1問

行列の計算問題です。

今回の問題の背景には、「行列の固有値固有ベクトル」の話があり、この記事で取り上げています。

この2次曲線の正体はな~んだ? ~行列の対角化~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

(1)A-kEの行列式が0になるkを求めればよいですね。ここで求まるkは、Aの固有値となります。

 

(2)2つの式を連立してP,Qを求めればよいですね。Pは固有値αに対するAの固有ベクトルを並べたものに、Qは固有値βに対するAの固有ベクトルを並べたものになっています。

 

(3)地道に計算すると、P^2=P, Q^2=Q, PQ=QP=Oという綺麗な結果が得られます。

 

(4)PQ=QPなので、素直に2項定理でA^nを計算できます。そこに(3)を適用することでかなりシンプルな式になります。

 

(5)~(7)についてもやることは一緒です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

平方数の逆数の無限和の値を評価する問題です。

 

(1)中辺の級数は、Σ1/(m+k)^2 (k=0,1,2,・・・,n-m)となるので、このΣの中身を不等式で評価します。

(m+k)^2の片方の因数を1ずらしてあげると挟むことができ、なおかつそのΣは部分分数分解によって直接計算できる形になります。

 

以後説明のために、この中辺をS(m,n)とします。

 

(2) 平方数の逆数のnまでの和は、1+S(2,n)と書けるので、(1)の結果を利用して最終的にn→∞の極限を考えるとよいでしょう。

 

(3) (1)の結果は、平方数の逆数のnまでの和のうち、m-1項目までは正確に計算して、m項目以降は不等式で近似するというコンセプトになっています。

ということは、mを大きくすればするほど近似精度が上がっていくことになります。

 

今回の場合は、最終結果の分母に18や36といった3^2が含まれたものになっているので、m=4として考えてあげればうまくいきそうです。あとは(2)と一緒です。

 

ちなみに、平方数の逆数の無限和の極限値を求める問題は「バーゼル問題」と呼ばれており、今日ではその答えが「π^2/6」になることが分かっています。ただの分数の和なのに、無限個足すと円周率πが登場するという摩訶不思議な結果です。

 

このバーゼル問題に関しては、証明などもこちらで紹介しています。

バーゼル問題 カテゴリーの記事一覧 - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>

 

第3問

関数の増減、積分、極限を考える総合問題です。

 

(1)I0(x)については、logが消えるので計算は容易でしょう。

Ik+1(x)を計算してIk(x)を作るには、積分の中身のlogxの次数を下げないといけないので、(1/x^2)の部分を積分して部分積分するとよいでしょう。I4(x)はこうしてできた漸化式を利用すればよいですね。

I0(x), I4(x)については今回は不定積分なので、最後に積分定数を付けることを忘れずに。

 

(2)右辺ー左辺を微分して増減を調べればよいでしょう。

 

(3)

(a) f(x)を微分して増減を調べていきます。x→∞については(2)の結果を使ってはさみうちで調べれば0に収束すると分かります。

 

(b)当然f(x)を積分するのですが、1/xがちょうどlogxの微分になっていることに気付けると楽に計算できます。

 

(c)こちらは計算過程で、(1)で求めたI4(x)が登場します。

 

(d) (b)~(c)の結果を使用すると、結局1/lognのn→∞の極限を考えればよくなり、当然これは0に収束します。

 

<筆者の解答>