このシリーズでは、日本医科大学の数学の問題を解いていきます。
6回目の今回は2017年です。
(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます。)
第1問
漸化式・無限級数に関する問題で、日医受験生にしてみればボーナス問題と言っていいくらいの易しい問題ですね。
(1)漸化式で逆数を取れば等差数列に帰着できます。
(2)(3)
分数の形のΣなので、部分分数分解を行って「間が相殺されて最初と最後だけが残る」タイプにできます。(3)は(2)の結果でnを無限大に飛ばすだけです。
<筆者の解答>
第2問
(1)(2)
ド・モアブルの定理でz^7を計算すればよく、その式を因数分解すれば(2)も計算できます。
(3)~(5)
複素数の実部だけ抽出する格好なので、複素共役も使って計算する形になります。複素共役は逆数に変換でき、さらにその逆数は(1)の結果を使うことで解消できます。
(6) (5)までの結果から計算することができます。
(7)cos5θ=cos(π-2θ)=-cos2θとなるので、これまたこれまでの結果から計算可能です。
<筆者の解答>
第3問
極限の計算問題で、見た目からして威圧感があり敬遠したくなる問題です。実際、発想力が必要になる難問です。
まず、分母のカッコの中身はtと無関係なので積分の外に出せて、さらに(x-√π)(x^2+π)と因数分解できます。これによって、極限を取った時に分母が0になる原因がx-√πという因数であることが分かります。
一方の分子に残る積分は、積分区間の形から極限を取ると0になることがすぐに分かります。要するに、素直に極限を取ると0/0の不定形になってしまって計算不能となってしまうわけです。なので、この積分をどうにかしないといけません。
積分の中にxとtが混在しているのはよろしくないので、展開してxを外に出すと2種類のtの関数の積分が登場することになりますが、両方とも「分母にlogt」が入っている形で、しかも分子にe^(t^2)が含まれているので、置換を施したとて計算をすることができません。なので、直接計算による強行突破は不可能で、別の方針を考えないといけません。
他に思いつきそうなのは、積分の中身を不等式評価して「はさみうちに持ち込む」などがありますが、それも式が複雑でうまくいく見通しが立ちません。
ここは、思いつかないと無理なのですが、「無理やり原始関数を定義してしまう」という方法をとります。
例えばg(t)の原始関数がG(t)だとすると、∫g(t)dt=G(x)-G(√π)と差の形にできて、先述の分母の(x-√π)と合わせると、これらの極限は、微分係数の定義からG'(√π)=g(√π)と計算することができるようになります。
<筆者の解答>
第4問
図形と整数(ついでに確率)の総合問題です。
(1)AE:ED (ないしCE:EB)の情報が分かれば、底辺の長さの比からT/Sを求めることができるので、この比を求めることがメインの作業となります。
ベクトルを使ってもよいですが、メネラウスの定理を使うのが一番でしょう。
(2)分母分子をmnで割り算すると、実質相加相乗平均の形にできます。
(3) (2)と同様の形で考えると、m/n+n/mの最大値を求めればよいことが分かるので、f(x)=x+1/xの増減を調べましょう。
<筆者の解答>
第5問
楕円を題材にした問題です。
翌年の2018年同様、第5問が突出してヘビー級で奇しくも題材も「楕円での極方程式」となっていて同じですね。
(1)A,Bの式を調べることが第一歩で、その後問題文に従ってPの座標をp,d,θの式で求めてそれがA上にある条件からpの式が計算できます。
qについては、pの式においてaをbに、2θをθに置き換えてあげればいいだけなので、手間を短縮できます。
(2)(3)これらは同時に考察してしまいます。
q/pを計算すると、実質cosθの分数関数となります。t=cosθ (0<t<1)と置き換えた上でtで微分した式の符号を場合分けして調べていきます。その式は、実質tの2次式になっていて、その軸の位置が必ず1より大きいことに注目すべきでしょう。
もし0<t<1で常に0以上であれば、q/pは単調増加となるので最小値も最大値も両方存在しないことになります。0<t<1で負になる瞬間があれば、q/pが最大値だけ持っていて最小値を持たないことが確認できます。
よって、後者になるa,b,dの条件からdの範囲が求まり、「a,bの条件」は、そんなdが存在するという条件から求まります。
<筆者の解答>