ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の日医大数学 -2016年-

このシリーズでは、日本医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

7回目の今回は2016年です。

(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます。)

第1問(1)

第1問は小問集合となっていますが、小問にしてはどれもボリューミーで、実質大問3つといって差し支えないでしょう。1つ目のこの問題は、図形問題です。

 

(1)(2)余弦定理、正弦定理を使って計算していきます。

 

(3)まだ使っていないBC=CDの情報から、円周角の定理でACが∠BADの2等分線になっていることが分かるので、この性質からBP:PDが分かります。

 

(4)△PQRは直角三角形なので、まずは(3)までの結果を使って3辺の長さを全て求めていきます。こうすることで、外周の長さと面積から内接円の半径が求まるのですが、半径は2重根号を含む結構複雑な形になります。

時間が足りなければ無理して計算しなくてもよいとは思いますが、分母を有理化すると予想外にシンプルになります。

 

<筆者の解答>

 

第1問(2)

余りに関する和の計算問題です。

 

まずはnを3で割った余りで分類してan, bnをそれぞれ調べることが先決です。

注意すべきは、「余りを取る⇒足し算」なのであって「足し算する⇒余りを取る」ではないことです。つまり、Σの中身は「3以上」になる場合が普通にあるという事です。

 

もし間違って「足し算を先にやって余りを取る」とやってしまうと(2)が解けません。筆者も最初この罠に引っかかってしまいました。

 

(2)については、それに加えてmを3で割った余りによる場合分けが発生します。

 

<筆者の解答>

 

第1問(3)

双曲線と直線の距離に関する問題です。(1)が(2)のヒントになっていることに気付けるかがポイントとなります。

 

(1) Cとlkを連立してできる方程式が重解を持てばよいですね。

 

(2) 通常であれば、C上の点をパラメータ表示してその点とl0との距離を求めて最小化する、という流れになるのですが、いささか面倒です。

 

ここで注目すべきは、lkはkがいくら動いても並行だという事実です。kを動かすといつかはCに接触するのですが、その瞬間を調べたのが(1)でした。

図を描いてみると、その接触する点とl0との距離こそが、Cとl0の距離そのものになっていると分かります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

積分値を評価する問題です。

 

(1)積分の中にx,tが混在しているのが不都合なので、s=x-t+1と変数変換してxを積分の外に出してしまえばよいです。そうすることで微分ができます。

 

(2)F(x)=f(x)-g(x)の増減を微分で調べてあげればよいでしょう。

 

(3)発想力と計算力の必要な難問です。

ヒントとして直線の情報が与えられていますが、これをどう使うか?

(2)の結果から、F(x)はx=1で最小値0を取る関数だと分かっています。そして、件の直線もx=1で値0をとります。ということで、y=F(x)のグラフと直線を合わせたらどうなるかを考えることにします。

 

実は直線の傾きは、y=F(x)のx=√2での接線の傾きと等しいので、x=√2では、必ずy=F(x)よりも直線が上に来ます。この関係からf(√2)をg(√2)の式で挟む不等式が作れます。

 

g(√2)の評価は問題文の情報で行えますが、実は√2自体の評価も必要となってきます。要求されている評価は意外とシビアで、√2を小数点第3位までの精度で評価しないと答えにたどり着けない罠があります。実質4桁×4桁の掛け算が必要になるので、なかなか大変です。

 

<筆者の解答>

 

第3問

通過領域を調べる問題です。

 

(1)やることは中学数学レベルで、説明不要でしょう。定義域もt-5≦x≦tと即答できます。

 

(2)いきなり「線分」の通過領域を考えるのはややこしいので、まずは「直線」の通過領域Eを調べましょう。それをP,Qの軌跡となる曲線で切り取ってあげればDとなります。

 

Eの調べ方は、xを固定してtを動かしたときのyの範囲を調べる「順像法」と、(1)の式をtの2次方程式と見なして、それが1≦t≦3となる解を持つx,yの条件を調べる「逆像法」の2種類がありますが、答案では前者を採用しています。2次関数の軸の位置で場合分けをしてyの範囲をxの式で求めていきます。

 

<筆者の解答>