皆さん、こんにちは。
4回シリーズでお届けしている「直交多項式」のいよいよラストです。
最終回の今回は「ラゲール多項式」、並びにその拡張版である「ラゲール陪多項式」について紹介します。
この「ラゲール陪多項式」は、水素原子の電子に関するシュレディンガー方程式で、動径方向の方程式を解く際に登場します。
1. ラゲール多項式
1-1. 母関数による定義
ラゲール多項式は、次のように母関数で定義されます。
例によってこのままだと実態がよく分からないので、一般項であるロドリゲスの公式を導出します。
1-2. ロドリゲスの公式
最終的にtの多項式で整理したいので、まずは指数関数の部分をテイラー展開した形に直します。
すると、分数関数が残ってしまうためそれを以下のようにテイラー展開していきます。
これらを合わせると、母関数は以下のように展開できます。
ここから、ルジャンドル多項式の時と同じように、tのn次の係数を抜き出してあげると下のようになります。
これで一般項は出来たのですが、やはりよく分からない複雑な形をしているため、例によって別の関数gn(x)を持ち出して、変形していきます。
すると、ラゲール多項式がgn(x)の式と全く一緒になることが分かります。
これで見やすくなりましたね。これこそがラゲール多項式の「ロドリゲスの公式」です。
要するに、x^n×e^(-x)をn回微分したときにできる多項式が、ラゲール多項式です。
1-3. 漸化式
これまでと同じように、母関数をtで微分することによって漸化式を作れます。
これにより、ラゲール多項式Ln(x)は整数係数のn次多項式であることが分かり、具体的には下のように書けることが分かります。
1-4. 微分方程式
こちらも、ルジャンドル多項式の時と同様に、先にhn(x)=x^n×e^(-x)の微分方程式を用意し、それをライプニッツの公式でn回微分することで作成できます。
この微分方程式が「ラゲール微分方程式」と呼ばれるものになります。
1-5. 直交性
ラゲール多項式も直交多項式なわけですが、実際の直交性は下のようになっています。
積分範囲は0≦x<∞、重み関数はw(x)=e^(-x)です。
証明については、部分積分を繰り返すと積分の和の形になるため、その1つ1つの積分を処理することで可能です。
最終的には、被積分関数が「微分した形」になるため、微分回数が0になる1パターンを例外にほとんどの場合で積分計算が完全に実行でき0になります。唯一の例外については、「ガンマ関数」の形になり、積分結果は階乗となります。(ガンマ関数についてはこちらをご覧ください。(1/2)!=??? ~階乗の一般化:ガンマ関数・ベータ関数~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com))
2.ラゲール陪多項式
次に、拡張版である「ラゲール陪多項式」について説明します。
2-1. 定義
定義はラゲール多項式自体を使って次のように書けます。
ルジャンドル陪関数とは違って、こちらはラゲール多項式をk回微分しただけというシンプルな定義です。
2-2. 微分方程式
元のラゲール微分方程式を、ルジャンドル微分方程式の時と同様にk回微分することで作成できます。
これが「ラゲール『陪』微分方程式」と呼ばれるもので、冒頭の動径関数を導く際に登場します。k=0とすれば、元の「ラゲール微分方程式」に戻ります。
2-3. 漸化式
後の直交性を示すのに必要な情報なので、今回はこちらについても漸化式を調べておきます。
まず、元の母関数をxでk回微分することにより、ラゲール『陪』多項式の母関数が求まります。
これを例のごとくtで微分することで漸化式が求まります。
こちらもk=0とすれば、元のラゲール多項式の漸化式に戻ります。
2-3. 直交性
ラゲール陪多項式については、2種類の直交性を考えることができます。
2-3-1. 直交性その1
まず、重み関数をw(x)=x^k×e^(-x)に変更した次の定義を考えます。
この場合は、微分方程式を変形することで「微分して同じ形ができる」形にし、それを用いて部分積分して番号を落としていって、元のラゲール多項式の直交性に帰着させることで考えられます。
2-3-2. 直交性その2
次に、重み関数をw(x)=x^(k+1)×e^(-x)に変更した次の定義を考えます。
その1との違いは、xの次数が1つ増えていることです。後日紹介するシュレディンガー方程式を解いた際には、このその2の直交性の方が重要になるので、こちらを別途紹介しています。
xが余計に一個増えてしまった格好なので、それをうまく吸収する必要があります。実は、そのために、わざわざ漸化式を導出していました。
漸化式を変形すると下のようになり、
これを代入することでその1の場合に帰着できるのです。
こうすると、この場合は完全には「直交」しないことが分かります。通常考えるm=nの場合だけでなく、m=n±1の場合も内積が0になりません。
ただ、それ以外の場合は0になってくれるので、かなり性質はよいです。
これで、初歩的なシュレディンガー方程式を解く際に必要な「直交多項式」は全て紹介できました。
ということで後日、量子力学の方程式であるシュレディンガー方程式を実際に解いてみる記事を複数回に分けてあげていきますので、お楽しみに。