2024年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、東京大学の理系数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 点の存在範囲(25分)
2. 絶対値付き積分の増減(20分)
3. 確率(40分)
4. 放物線に接する円(50分)
5. 回転体の体積(30分)
計265分
<体感難易度>
1=2<3<5<4<6
昨年に比べると大分易しめのセットだった印象です。6(2)を除けばどの問題も時間さえかければ十分解ける難易度です。というよりここ数年が難しすぎただけのような。
第1問,第2問はよくある問題で計算もさほどではないので、是非とも完答したいところです。
第3問は「確率漸化式」という方針にさえたどり着ければ一本道ですが、偶奇による場合分けが発生することに注意が必要です。
第4問は方針建ては難しくないものの計算が煩雑で本番で完答しきるのは難しい気がします。
第5問は東大の大好きな体積の問題で、発想面もあまり難しくありません。
第6問は(1)こそよくある典型問題ですが、(2)の証明が想像以上に難しく本セット最難問と言えます。
<個別解説>
第1問
点の存在領域を求める問題です。
当然初手はPの座標を文字で置くことなのですが、与えられてる条件に角度の情報が複数登場しています。これを考慮すると、Pは極座標で置いた方が見通しが良くなります。
その上で、ベクトルの内積を利用して角度の条件を処理していけばよいでしょう。
<筆者の解答>
第2問
絶対値付き積分の増減を考える問題です。
(1)まずは絶対値を外して積分を計算しないことには始まりません。tとxの大小で区間を分けて積分を実行していきましょう。
その後の微分は、いわゆる「微積分学問の基本定理」を適用する形になります。
(2)なんという丁寧な誘導。言うまでもなく、tanの2倍角の公式を適用します。
(3)これまでの結果からf(x)の増減が分かるので、この時点で最小値を与えるxの値はすぐに分かります。最大値を与えるxの候補は0と1の2つがあるのでそれぞれについてf(x)の値を計算しないと最大値が求まりません。この2つの大小比較でlog2の近似が登場するというわけです。
x=tanθの変換を施すことでf(x)の積分が最後まで計算できるので、その結果を利用するとよいです。
<筆者の解答>
第3問
確率の問題です。
問題の設定から、明らかに「確率漸化式」を使えば攻略できそうです。
(1)とりあえず(ii)の各移動方法で(a,b)がどの点に移動するかを考察すればよいかと。
(2)Pの候補は8点しかないので、n秒後に(2,1)にいる確率をan、などと8点すべてについて確率を数列で置いて漸化式を全て立式します。
すると、右辺の形が全く同じものが複数組存在することに気付くはずで、その確率の組こそが等しい確率となります。
但し、anに限ってはn=0の場合だけ等しくなくなる特別な確率であることに注意が必要です。
(3) (2)で立てた8本の漸化式から等しい確率をどんどん消していけば4本の漸化式にまとめられます。考えやすいようにn≧1の場合だけに限定してあげます。
さらに対称性に気付くと実質2本の漸化式にまとめられます。この2式をうまく足し引きすることで等比数列の形が作れて漸化式が解ける格好になります。
但し、2本の漸化式はともに番号が2個ずれた形なので、nの偶奇による場合分けが発生します。
<筆者の解答>
第4問
放物線と接する円に関する問題です。
方針自体は立てやすいものの、計算が煩雑で時間がかかる問題です。
(1) (t, f(t))をCが通る条件と、x=tでCtとy=f(x)の接線の傾きが等しくなる条件の2つを連立してあげればよいです。
cもr^2も係数に分数が入り混じった少々煩雑な多項式になります。
(2)結局、r^2 - (c-3)^2 =a^2が成立するようなtの個数を調べる問題なので、
y=F(t)=r^2-(c-3)^2とy=a^2の交点の個数を調べる問題と同じで、実質y=F(t)の概形を調べる問題となります。
このF(t)の微分計算やF(t)の各値の計算こそが、意外と煩雑で時間を食われます。特にF(3)なんて・・・
<筆者の解答>
第5問
回転体の体積の問題です。
この手の問題は一本道であり、「回転軸に垂直な平面で立体を切った断面積を求める→回転軸に沿って断面積を積分する」です。
今回の場合は、まずは△ABDを平面x=tで切った断面を考えて、それをx軸周りに回転してできる図形の面積を考えます。
△ABDの断面形状は、ベクトルを使って各辺とx=tとの交点の座標を調べることで求まります。
x軸周りに回転する際は、回転軸からの最短距離と最長距離が何なのかに注意を払う必要があります。
[訂正]初項の解答において、回転軸からの最短距離が変わってしまう場合があることをすっかり失念しておりましたので、訂正解答を追加しておきます。
端的に言うと、通常であれば回転軸からの垂線の足が最短となるのですが、実はRがその足まで届かない場合があることを見落としてしまっていたというミスになります。大変失礼いたしました。
<筆者の解答>
↓後半部分について訂正です。
第6問
冒頭で話した通り(2)は本セット最難問であり、100分かかった解答時間もほとんどが(2)の解答に費やしたものです。
(1)こちらは京大が出題しそうな問題で、京大の過去問を解いた人にとっては容易い問題だと思います。
一目見て、f(n)はf(n)=n(n^2+10n+20)と因数分解できることが分かります。「素数」絡みの問題では、因数分解できる時点で大きなアドが取れます。
素数は1とそれ自身以外に正の約数を持たない自然数の事なので、因数分解された後の各因数の絶対値が2以上だとその時点で素数ではなくなります。
よって、この事実から|n|=1か|n^2+10n+20|=1にならざるを得ません。これらを解いて、実際にf(n)が素数になるかどうかを確かめましょう。
(2) (1)と同様の考え方で|n|=1か|n^2+an+b|=1になる必要があることが分かりますが、ここからの考察がなかなか難しいです。
前者の|n|=1、つまりn=±1を代入すると、g(1)とg(-1)が素数かどうかは判定できませんので、ここからは個数を絞り込めません。ということで、個数を考えるには、|n^2+an+b|=1の場合を考えることが不可避となります。
最初、私はこの方程式を解いた結果が整数になる条件は~などと進めたのですが、結果見事に泥沼に嵌まってしまいました。そこには意外な盲点があったのです。
|n^2+an+b|=1なら、f(n)が素数になるには|n|自身が素数じゃないといけない。
このことに早く気付くべきでしたね。
上記を分解すると、
・n^2+an+b=1 →n=p(素数)とかける
・n^2+an+b=-1 →-n=q(素数)とかける
となるので、この2つのどっちが成り立つのかを考えていけばよいことになります。
両者を引き算すると矛盾が示せるので、実はこの2つの条件は一方しか成り立たないことが分かります。
最初nの候補は、
1. g(1)が素数になる
2. g(-1)が素数になる
3. 素数pについてp^2+ap+b=1となる(そんな素数pは2個以下)
4. 素数qについてq^2+aq+b=1となる(そんな素数qは2個以下)
の計6つが存在していましたが、上記の考察で3と4が同時に成立しないことが分かったので、この時点で候補が4つに絞れたことになります。
あとは、nが4つあると仮定したときに矛盾を導く背理法で、nが3つ以下なことを示していきます。
<筆者の解答>