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2024年度 東大文系数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東京大学の文系数学に挑戦します。

※原則文系ユニークの問題のみ解きます。理系との共通問題については理系の記事を参照下さい。

2024年度 東大理系数学 解いてみました。 - ちょぴん先生の数学部屋

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1.  円と接する放物線(25分)

2.  べき乗の不等式(25分)

3.  座標平面上の角度と面積(30分)

4.  円中心を含むような四角形の作り方(20分) 

 

計100分

 

<体感難易度>

4<1<3<2

 

易しめだった昨年とは一転して、骨のある問題が多めです。

 

第1問は方針建ては容易で(2)までは解けるものの、(3)は微分を使用しない文系のみの知識だと経験が必要で思いつかなかった人もいたかもしれませんね。

第2問は(1)は対数を取るだけの簡単な問題ですが、(2)は考察が必要な難問と言えるでしょう。

第3問は基本的に計算でゴリ押す問題なので、第2問(2)が解けない場合はこっちにリソースを割いた方が良かったと思います。

第4問は、今年の一橋第5問の「四角形」バージョンと評せる問題です。類題経験があればサクッと解けるでしょうが、逆に経験がないと難しく感じたかもしれませんね。

 

今年は理系との共通問題はありませんでした。

 

<個別解説>

第1問

円と接する放物線に関する問題です。

 

(1)CがP,Qを通る条件と、P,Qでの接線の傾きがそれぞれ等しくなる条件を考えればよいわけですが、前者の条件からCも円もy軸対称だと分かるので、後者はPのみ考えればOKです。

 

(2)Cとx軸との交点座標を求めて積分します。当然ながら1/6公式が有用に働きます。

 

(3)これが理系向けの出題であれば微分するだけで片が付いてしまうボーナス問題なのですが、基本的に多項式微分以外を知らない文系の受験生にとっては悩ましい問題ですね。

微分を使用しない文系数学の伝家の宝刀は「相加相乗平均」です。

ですが、普段使ってるa+b≧2√(ab)だとルートの中身にsが残ってしまいうまく評価できません。そこで一工夫が必要になります。

Aの中身は2つの関数の和ですが、それを無理やり3つの関数の和に分解して、√の中身からsが消えるようにするわけです。そうすれば、3乗についての相加相乗平均、a+b+c≧3×(abc)^(1/3)が使えます。

 

この工夫は経験してる人には容易いがそうでない人は思いつきもしない方法なので、類題演習量が明暗を分けると言えましょう。

 

<筆者の解答>

 

第2問

べき乗の不等式について考える問題です。

 

(1)両辺で常用対数を取ってnを肩から下して評価するという、基本問題ですね。

 

(2) (1)とは打って変わって不等式の左辺はべき乗の「足し算」の形になっていて、各々の底も違っています。このような状態は対数と相性が悪く、(1)のように解くことができません。ということで、別の方針を考える必要があります。

 

ここで、左辺がどんな数なのか改めて考えてみます。

 

指数関数は、指数の値が大きくなればなるほど文字通り「指数関数的に」大きくなっていき、さらに底が大きくなるほどその増加の仕方も爆発的なものになります。

 

つまり、mが十分に大きい場合、5^mに比べて4^mなどゴミ同然に無視できる値になるため、5^m+4^mの桁数は殆ど5^mの桁数で決まってしまうわけです(桁数が同じままか、せいぜい4^mが足されることで繰り上がりで桁が1つ増えるかだけです)。

 

(1)の結果からm=28のとき(2)の不等式が成立することは明らかなので、mを1へらしたm=27のとき、5^m+4^mの桁数がどうなるかを調べれば良さそうです。

 

5^27は(1)の結果から19桁であり、さらに最高位の数字は4~7のどれかだと評価できます。よって、4^27が18桁以下なら繰り上がりによる桁数増加は起こりません。

 

4^27の桁数を対数を使って調べると17桁(つまり18桁以下)だと分かるので、これで桁数増加は起こらない、つまりm=27のとき不等式の左辺は19桁のままで確定することになります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

座標平面上の角度と面積に関する問題です。基本的に発想の類は不要で計算でゴリ押すタイプの問題と言えます。

 

(1)角度の条件は余弦定理を使って処理すればよいわけですが、計算が煩雑です。途中同じ塊を1文字に置き換えるなど工夫しましょう。

 

(2)実質pの3次方程式を解く問題です。

 

(3)三角形の面積は「底辺×高さ÷2」というお馴染みの公式だけで計算できてしまうので、解くべき不等式も単純になります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

円中心を含むような四角形の作り方を数え上げる問題で、この問題の「三角形」バージョンが今年の一橋第5問になります。

 

方針としては、Oを内部に「含まない」四角形の個数を調べて、余集合の考え方で確率を計算する、という流れになります。その方が個数が数えやすいです。

 

Oを内部に含まない四角形の数え方は、

1. 辺の長さが最長となる辺を固定する

2. 残りの2頂点の決め方を調べる。

3. 4頂点決まった状態で360°回転させて合計何通りできるかを考える

4.最長の辺を動かして合計する

 

というものになります。Oを内部に含まないなら、四角形全体を上半分に押し込めることができることに注意して、個数を数え上げましょう。

 

<筆者の解答>