ちょぴん先生の数学部屋

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2024年度 京大理系数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、京都大学の理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1.  立方体の面の塗分け(40分)

2.  複素数の存在範囲(20分)

3.  2直線がねじれの位置にある条件(25分)

4.  コラッツ数列が奇数になる条件(40分) 

5.  領域の面積(25分) 

6.  整数の個数に関する極限(20分) 

計130分

 

<体感難易度>

2<3=5=6<1<4

 

ここ数年平易な出題が続いていましたが、少しは元の難易度に戻りつつあるという感じです。

第1問は面の塗分けを考える問題で、状況把握を正しく行うことが必要でやや難しいです。文系第2問はこれの廉価版です。

第2問は複素数の領域の問題で今年の阪大のそれに比べればはるかに簡単です。是非とも完答したいです。

第3問は阪大とともに「ねじれの位置」が出題され話題になりましたが、この「ねじれの位置」の意味をしっかり立式できればさほど難しくありません。

第4問は本セットの最難問ですが、コラッツ数列を題材にした実に京大らしい面白い問題です。本番では後回しにすべきですが、後でじっくり解いてみることをお勧めします。

第5問は典型的な面積計算とその極限であり、是非とも完答したいです。

第6問もよくあるガウス記号による不等式評価の問題なので、押さえたいところです。

 

<個別解説>

第1問

立方体の面の塗分けに関する問題です。

 

「辺を共有するどの2つの面にも異なる色が塗られる」ということは、逆に言えば同じ色になる余地があるのは「互いに向かい合った面=対面」だけ、ということになります。この時点で3色以上なければ題意を満たす塗り方は出来ないし、逆に3色だけで塗ろうと思ったら対面同士を同じ色に塗るしかないということになります。

 

各面に名前を付けて面の向きを固定してから色を塗ると考えやすいと思いますし、3対面に異なる3色を予め塗った状態(*)をベースに考えると見通しが良くなります。

 

(1)いきなりn=4とすると(2)以降に繋がっていかないので、まずはnはそのままにし、n色プールがある中で4色以内で塗り分ける確率を考えます。

これを考えるには、ちょうど3色で塗り分けられる確率anとちょうど4色で塗り分けられる確率bnの2つを考えて、両者を足せばよいわけです(そしてp4は、この結果にn=4を代入すれば得られる)。

 

前者については(*)の状況そのものなのでanの計算は容易です(この結果にn=3を代入したものが、文系第2問(1)の答えです)。

 

後者については、(*)の状況で新色を1つ追加するわけですが、よくよく考えるとその新色は1つの面しか塗れないことが分かります。

よって新色を加えた2色になる対面を固定して場合の数を調べて最後に3倍すればお目当ての確率bnが求まることになります。

 

(2) (1)に引き続き、n色のプールがある中でちょうど5色で塗り分ける確率cn, ちょうど6色で塗り分ける確率dnを考えます。

6色あれば必ず題意を満たすような塗分けになるのでこれ以上は考える必要はありませんし、今回はn→∞の極限を考えるのでn≧6と考えてしまって支障はありません。

 

(2)の答えは1となりますが、色のプールが無限個ある中で無作為に色を選んだ時、塗られる色にダブりが生じるなんてのは相当なレアケースとなるため、直感とも合ってますね。

 

<筆者の解答>



 

第2問

複素数の存在範囲を考える問題です。

 

xとyを極形式を使ってパラメータ表示してzの式を求めるのが先決です。するとzは合計3つのパラメータを使ってかけることになります。

 

xを固定するとzは円を描きその円の半径は一定なので、xを動かしたときの中心がどんな軌跡を描くかを考えれば、その軌跡に沿って中心を動かしたときの円の通過領域が求めるべきzの存在範囲となります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

2直線がねじれの位置にある条件を考える問題です。

「ねじれの位置」という単語が中学以来で聞き慣れない人が多いと思います。そこの盲点を突くような出題でした。

 

「ねじれの位置」とは、日常的な単語で言い換えれば「立体交差してる」ということです。数学的に厳密な定義をすれば、

・互いに平行ではない

・交点を持たない

の2つの条件を同時に満たす2つの直線が「ねじれの位置にある2直線」ということになります。

よって、問題文にある2つの直線が「平行でない」かつ「交点を持たない」条件を求めていくことがこの問題の主題です。

平行でないことをベクトルの世界で言い換えれば「互いに定数倍の関係にならない」となり、交点を持たないことは「2直線上の点P,Qをそれぞれパラメータ表示したとき、P=Qとなるパラメータが存在しない」と言い換えられます。

 

この2つの条件を数式に落とし込んだ後、両方が成り立つ条件を絞り込んでいくわけですが、≠が多発する条件なので一見分かりにくいです。こういう時はベン図を使用し余集合で考察すると間違えないと思います。

 

<筆者の解答>

 

第4問

コラッツ数列が奇数になる条件を考える問題で、本セット最難問です。

 

問題文の数列は、以前取り上げたコラッツ数列そのものです(厳密には、aが奇数の時は「3倍して1足す」、3a+1は偶数なので「2で割る」の2工程を1工程にまとめた形です。詳しくはこちらをご覧ください。小学生でも理解できる数学の未解決問題 ~コラッツ予想~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )

 

(1)高々4つの項が奇数になるかを調べるだけなので、漸化式のルールに従ってa0~a3を具体的に調べてしまいましょう。

 

(2)11個の項が奇数になってるか否かを力ずくで調べるのは非現実的ですので、別の方法を考える必要があります。ここで、(1)での調査結果を眺めてみると、

・a0~a1が初めて全て奇数になるのは、a0=3

・a0~a2が初めて全て奇数になるのは、a0=7

・a0~a3が初めて全て奇数になるのは、a0=15

となっています。3, 7, 15 これらの数字を眺めた時点でピンとくる人がいるかもしれません。そうです、これらの数は全部メルセンヌ数2^n -1の形をしてるのです。

 

ということは、a0~amが初めて全て奇数になるのはa0=2^(m+1) -1のときじゃないか?と予想できそうです。この予想が正しいことを証明していくことになります。

 

まず、a0=2^(m+1) -1のときa1~amを求めると、確かに全て奇数になり、かつam+1は偶数になることが分かります。

しかし、これだけでは不十分です。今回知りたいのはa0=2^(m+1) -1が「最小の」a0かどうかなのですから。

ということで、a0が2^(m+1) -1より小さいときは、a1~amは途中で偶数になってしまうことを証明しないといけません。

具体的にa0 = 2^(m+1) -(2l+1) (lは1以上2^(m-1)以下の自然数)と表現して、a1,a2,・・・が偶数になってしまうかどうかを調べていくことになります。

 

<筆者の解答>

↓ちなみにpythonで実際にコラッツ数列をa0=2047で計算させると下のようになります。確かにa10までが奇数でa11で初めて偶数になってますね。

 

第5問

領域の面積を考える問題です。問題文に登場しているxの関数は、双曲線関数と呼ばれています。

 

(1)xの関数とy=aとの交点のx座標を調べて積分を行います。

 

(2) Saには2つ不定形の極限になる形が存在しています。

 

1つ目は、√-√の部分で∞ー∞の不定形になります。こちらは、分子を有理化することで不定形が解消できるので簡単です。

 

問題は2つ目の方です。こちらはa×logの部分で、∞×0の不定形となっています。微分係数の定義を使う形などを検討してもうまく不定形を解消できません。logが登場してる極限では、とりあえず「ネイピア数eの定義」が使えないかを考えてみることをお勧めします。

つまり、aをlogの方に移動させ、logの中身は(1+〇)^△の形にしてしまうのです。

今回の問題は、この方法で不定形が解消できて極限計算ができます。

 

<筆者の解答>

 

第6問

整数の個数に関する極限の問題です。

 

このような整数部分に関する極限では、ガウス記号を使って個数を評価してはさみうちを使うのが基本戦略になります。

 

akがn桁になることと、akがn桁でかつ最高位が1になることを、それぞれ不等式で表現してkの不等式にしてあげましょう。

 

すると、kの個数Ln, Nnの個数がガウス関数で不等式評価できるので、はさみうちに持ち込めることになります。

 

<筆者の解答>