ちょぴん先生の数学部屋

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2024年度 阪大理系数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、大阪大学の理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1.  方程式の実数解に関する極限(15分)

2.  複素数の存在範囲(90分)

3.  ねじれの位置にある2直線に垂直な直線の存在証明(40分)

4.  回転体の体積(20分) 

5.  nと互いに素なn以下の自然数の個数(50分) 

 

計215分

 

<体感難易度>

4<1<3<5<2

 

阪大にかつての難易度が帰ってきました。ここ数年が簡単めだっただけなのですが。

 

第1問は方程式の実数解に関する極限の問題で、そこまで発想も必要ないのでぜひ完答したいです。

第2問は京大第2問と同じような複素平面の問題ですが、難易度は雲泥の差です。本セット最難問と言ってよいと思います。

第3問は京大第3問とともに「ねじれの位置」が出題され話題になりました。この問題は抽象度高めの空間図形の証明問題ということで、往年の京大を彷彿とさせる問題ですね。

第4問は回転体の体積で、ごくごく標準的な問題であり完答を狙いたいところ。

第5問は互いに素な自然数の個数を調べる問題で、誘導ありとはいえ工程が長く大変です。第2問に次いで難しい問題です。

 

<個別解説>

第1問

方程式の実数解に関する極限の問題です。

 

(1) fn'(x)を計算すると、一見すると因数分解も何もできず符号判定ができないように見えます。しかし、指数関数の部分が3以上で、一方三角関数の部分が2以下なので、差の符号ははっきりとわかる、という仕掛けになっています。

 

fn(x)<0となるxは三角関数の処理がしやすいように有名角を使用するとよいです。

 

(2) (3)の存在からして、anは0に収束しそうです。

となると、anを0に収束する値で上から抑えてはさみうちに持ち込みたいです。

 

三角関数が処理しやすくなるπを含んでいて0に収束する値として、ぱっと思いつくのはπ/nです。今回は、fn(π/n)<0が分かるので、この角度がそのままうまくいきます。

 

(3) fn(an)=0を変形すると、anが単独でいる部分と、n*anがセットでいる部分が共存します。前者は(2)から極限値が分かるので、そこから間接的にn*anの極限値が分かる格好です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

複素数の存在範囲を考える問題です。

 

(1) まずは、不等式を満たすようにαとβの式をパラメータ表示しないことには始まりません。今回の場合はα+βとiα+βの2つを極形式でパラメータ表示することになりますが、関係式が2つとも不等式なので、2つずつ合計4つのパラメータが出てくることになります。京大の第2問では3つのパラメータで済んでいて各複素数それ自体を極形式表示できていたので、パラメータが4つもありしかも各々がαとβが絡まった式になっている点がこの問題の難易度を大幅に引き上げています。

 

この2つのパラメータ表示を使ってf(1+i)を4つのパラメータで表示していきます。計算が少しでもしやすくなるようにオイラーの公式を答案で使わせて頂きました。でないとsinとcosでひっちゃかめっちゃかになってしまいます。

 

次にf(1+i)の実部をX, 虚部をYとしてX,Yの関係式を調べていきます。その際は角度の方を動かして動径の方を固定すると考えやすいです。

 

すると、一部のパラメータを固定すると(X,Y)は円周上を動くことが分かるので、その円周の半径を動かし、さらに円の中心を動かしていけば全体の存在領域が分かります。

 

(2)X=0, Y=0を解いていきます。このとき、(1)の図示から動径のパラメータは両方とも最大になっていけないことが分かるので、この点で労力を節約できます。

 

<筆者の解答>

※後半の部分に計算ミスがあったため修正しました。

第3問

ねじれの位置にある2直線に垂直な直線の存在証明をする問題です。

 

京大の記事でも説明しましたが、「ねじれの位置」とは日常的な単語で言い換えれば「立体交差してる」ということです。数学的に厳密な定義をすれば、

・互いに平行ではない

・交点を持たない

の2つの条件を同時に満たす2つの直線が「ねじれの位置にある2直線」ということになります。

 

さて、問題文のままだとあまりに抽象度が高すぎるので、lとmのうちの1つを座標軸など分かりやすい直線にしちゃいましょう。私はlをx軸として考えて答案を書いています。

(ちなみに、文系第2問は本質的にこの問題と同じ問題であり、こちらではmをz軸と見なして答えさせています。本質的には一緒ですけど)

 

lをx軸と見なした場合、lの方向ベクトルは(1,0,0)となります。mがlとねじれの位置にあるなら、少なくともmの方向ベクトルは(1,0,0)の定数倍ではあってはなりません。

 

一般に、xyz空間で単位ベクトルdはd=(sinαcosβ, sinαsinβ, cosα)と表現できるので、このdが(1,0,0)と平行にならない条件を求めるとともに、mがA(0,0,a) (a>0)を通るとしてm上の点Pをパラメータ表示します。Aを通るとしたのは、分かりやすさのためです。mがlと交わりさえしなければどこを通ってもいいんですからね。

 

一方でl上の点Qを考えると、結局PQがlにも垂直でmにも垂直となるP,Qの組が1個しかとれないことが証明できれば、題意が示せたことになりますので、垂直の条件をひたすら処理し、P,Qを決定するパラメータがAやdによってただ1通り求まることを証明していきます。

 

<筆者の解答>

 

第4問

回転体の体積の問題です。

 

(1)V1は公式通りの積分を計算すればよく、円が絡んでいるため三角関数で置換積分すると見通し良く進みます。

 

(2)Cのx≦aの部分と直線y=±1,y軸で囲まれる図形をy軸周りに回転してできる立体の体積V3を同じように計算できて、V2=V1-V3で求まります。

 

あとはV1=2V2をaの方程式として解けばよいだけです。

 

<筆者の解答>

 

第5問

nと互いに素なn以下の自然数の個数に関する問題です。

 

(1) n以下の自然数のうちmで割り切れるものの個数をN(m)とすると、N(m)=[n/m]で計算できます。

今回の場合は

・p~r単独で割り切れるものの個数

・p~rのうち2つで割り切れるものの個数

・p~rすべてで割り切れるものの個数

の大きく3つの個数の情報が必要となり、これらを使うと集合の考え方でp,q,rと互いに素なものの個数が計算できます。

 

(2) (1)ではnの素因数が3つある場合を考えましたが、(2)を解くにあたってはnの素因数が一体何種類あるのかが気になってきます。

もし、素因数が4つ以上あるとすると最小の自然数は2×3×5×7=105となってしまい、100をオーバーしてしまいます。よって、nの素因数の個数は3種類以下だと判断できますので、この素因数の個数に応じて場合分けしていきます。

 

素因数がpの1種類のみなら、f(n)=p^(a-1)×(p-1)と書けます。pとp-1が互いに素なので、f(n)がnの約数ならp-1=1じゃないとダメだということになります。よって、この場合はn=2^aの形に限られます。この場合は簡単ですね。

 

素因数がp,qの2種類なら、f(n)=p^(a-1)×(p-1)×q^(b-1)×(q-1)とかけ、pとp-1、qとq-1がそれぞれ互いに素なので、p-1はqのべき乗、q-1はpのべき乗になってないとおかしいという話になります。

pとqは異なる素数なのだから少なくともどっちかは奇数のはずです。もし両方奇数だと矛盾してしまうので、片方が2だとわかります。p=2として話を進めればよいでしょう。

あとは、nの範囲からqの値を絞り込みましょう。

 

素因数がp,q,rの場合は、f(n)は(1)で示した通りの式になります。もしp,q,rのすべてが奇数ならnは奇数なのにf(n)は偶数となってしまうためf(n)がnの約数になりえません。なのでp~rのうち1つは2で確定します。上と同様にp=2としてしまいます。このときでも、f(n)が2で割り切れる回数が、nが2で割り切れる回数を上回ってしまうためf(n)はnの約数になりえません。よって、素因数が3つの場合はNGです。

 

このように、素数の問題を考えるときは、まず「2」が含まれていないかをチェックするのが大きなポイントになります。

とはいえ、素因数の個数によってアプローチがだいぶ異なるので、想像以上に難しく感じる問題だと思いますね。

 

<筆者の解答>

[訂正] 素因数が2つの場合の十分条件の検討が不足していてnが過剰になっておりましたので、修正しました。