ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の奈良県立医大前期数学 -2012年-

このシリーズでは、奈良県立医科大学の前期の数学の問題を解いていきます。

 

2013年以降の後期に相当する出題内容が、2012年以前は前期にて出題されていたので、この回以降は前期のセットを解きます。

 

11回目の今回は2012年です。

第1問

積分値を最大化する問題です。問題文は少々ゴツいですが、見掛け倒しです。

 

丹念に(1)~(3)を式に落とし込んでいけば、pとqの関係式と、qの範囲が求まります。(1)(2)は瞬殺でしょうが、(3)の場合は2次関数の増減を調べて考える必要があります。

 

あとはI(p,q)がシンプルなqだけの式に直るので、最大化は楽勝です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

数列に関する不等式評価の問題です。

 

まずはa1~anがどんな数列かを把握するのが第1歩です。

(2)よりaiは単調減少なことはすぐに分かります。

 

(3)がかなり強烈な条件になっていて、この条件だけで「0以下の整数」の個数が1個以下だと背理法で示すことができます。

 

つまり、aiは

(i) すべて正の整数

(ii) an-1までは正の整数で、anのみ0以下の整数

の2パターンしか考えられないわけです。あとは、このそれぞれに対してΣaiを最小にしていくことを考えましょう。

 

(ii)については、(3)の条件からさらに|an|<an-1まで言えてしまうことと(1)を考慮すると、an-1が2以上か1かで場合分けが発生します。

 

<筆者の解答>

 

第3問

行列の問題です。

 

この手の問題は、AがEの定数倍かそうでないかで場合分けして検証していくのが定番です。

前者の場合は方程式に代入することで不適だとすぐに分かるので、実質後者の場合を考える問題となります。

 

後者の場合は、ケーリーハミルトンの定理からAとEの関係式が求まるので、それと問題文の方程式が一致すればOKです。係数比較するとa~dについての方程式が2本求まるので、これらを同時に満たすa~dを全て探します。

 

一見すると手掛かりがなさそうに見えますが、a~dがすべて0以下という条件から、2本の方程式のうちの1つa+d=-1をみたすa,dは(a,d)=(0,-1), (-1,0)のたった2個に絞れてしまいます。こうなれば芋づる式にb,cも求まります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

(訂正:(4)の2項係数はnCiが正しい)

多項式に関する合同式を使って、nCiがi=0,n以外ですべてpで割り切れる条件を探る問題です。

 

(1)普通の整数における合同式と同じように、足し算と掛け算がどちらもできることを証明する小問です。定義に立ち返って左辺ー右辺がm×整数係数多項式の形にできることを説明すればよいでしょう。

 

(2)有名な性質です。pCiを分数の形で書いたとき、分子がpの倍数になる一方で分母はpで割り切れないので、pが約分されないまま残ることになり「pCiがpの倍数」と言えます。

 

(3)nに関する数学的帰納法で証明することになります。

n=1の場合の証明では2項定理を使うことになりますが、その過程で(2)が活躍します。

n=kでの成立を仮定してn=k+1での成立を証明する件では、(1)の特に「積」に関する性質が利用できます。

 

(4)直感的にはありえそうな性質です。n=p^kのときにnCiを分数で表すと、分子には素因数pが大量にあるのに対して、分母は分子よりも小さい階乗に過ぎないのでpの個数はずっと少なそう、つまり約分したときに分子のpが生き残りそう、という話です。

 

ですが、厳密な証明は意外と骨が折れます。

 

必要十分条件であることの証明が要求されているので、「n=p^k→nCiはpの倍数」(十分性)と、「nCiがpの倍数→n=p^k」(必要性)の両方の証明が必要です。

 

十分性については、(3)の結果を利用することを思いつきやすく、2項定理も絡めれば比較的簡単に証明できます。

 

問題は、必要性の証明です。

 

nCiがすべてpの倍数ということは、少なくともnC1=nはpの倍数でないといけません。このことから、nがpでk回割り切れる自然数だとすればn=l×p^kとかけます。但しlはpと互いに素な自然数です。これでl=1でないといけない、と示せればゴールです。

 

最初、冒頭の直感的な考えから、nCiの分子にあるpの個数と分母にあるpの個数を比べてみようと考えました。iをできるだけpを多く含んだ数、例えばi=l×p^(k-1)とかにして分母分子のpの個数を比較して、分子のpが約分で全て消えてしまえば「pの倍数ではない」が言えそうです。ところが、肝心の「階乗に含まれるpの個数」がうまく数えられず断念しました。

 

ここで、十分性の証明に使った(3)がまた使えないかと発想を切り替えてみると、(1+x)^nを考えることで(3)が使えると気付きました。

 

この時、もしlが1ではないと仮定して2項定理を使うと、(3)に関して矛盾が発生します。

これで背理法によりl=1でないといけないと分かったので、必要性の証明も完了です。

 

<筆者の解答>