このシリーズでは、奈良県立医科大学の前期の数学の問題を解いていきます。
12回目の今回は2011年です。
第1問
多項式の分解に関する問題です。
(1)ciたちをどう作るかを考えると、f(x)をgn(x)で割った時の商をcn, 余りをrn-1(x)→rn-1(x)をgn-1(x)で割った時の商をcn-1、余りをrn-2(x)→・・・といった感じに余りをgi(x)で次々に割っていくことで作れると分かります。
(2) (1)の結果を使ってf(x)-f(x-1)を計算すればよいです。
(3)
(1)の結果を使うとF(x)はΣdi×gi(x)と一意に表せます。ここから、diが全部整数となることを証明していきます。
F(a)がすべて整数値となる必要十分条件は、(2)の結果も使うと
1. F(0)が整数
2. F(a)-F(a-1)=Σdi×gi-1(a) がすべて整数
となります。
1.からはd0が整数だと分かり、2については、同じような議論を何回も繰り返すと、
0≦j≦nとなる全ての整数jについて、Σdi×gi-j(a) が全て整数であることと同値だと分かります。
全てのaについて整数になるので、少なくともa=0のときは整数となっていないといけません。ここからd0~dnの全てが整数でないといけないと分かります。
これで、F(a)が全部整数となる「必要条件」が「d0~dnが全て整数」だと示せました。
これが示せたからと言って、d0~dnが確実に存在しているとは言いきれていないので、十分性を示す必要があります。
gi(a)を計算すると、aによらず整数となることが分かるので、d0~dnが整数ならF(a)も整数となることが分かります。これで十分条件であることも証明できて、終了です。
<筆者の解答>
第2問
絶対値の絡んだ不等式の証明問題です。
(1), (2)ともにp,qにうまく値を入れ、辺々をうまく足し引きすることで証明していきます。
その際、三角不等式|a+b|≦|a|+|b|を利用して最終形までもっていくことになります。
(1) p=n, q=in (iは整数)とした不等式の両辺を、i=1,2,・・・,k-1として足し上げていけばよいです。
(2)元の不等式でp=n, q=kとしたものと、(1)の結果を使っていきますが、最終的に示したい式の形から逆算して辻褄合わせをする、という目線で攻めていきます。
<筆者の解答>
第3問
積分値を最小化する問題です。
偶関数・奇関数の性質をうまく使ってI(a,b)を計算していき、平方完成することで最小化ができます。
<筆者の解答>
第4問
円の接線に関する1次変換の問題です。
(1)これは教科書レベルですね。答案ではいきなり答えを描いてますが、導出方法としては、「法線ベクトルが(s,t)で、(s,t)を通るので、s(x-s)+t(y-t)=0 →sx+ty=s^2+t^2=1」という感じになります。
(2)背理法での証明になります。つまり、Aが逆行列を持たないと仮定して矛盾を導きます。
Aが逆行列を持たないとすると、平面上の任意の点が「原点を通る」直線上に移ります。ところが、Sの接線は絶対に原点を通らないので矛盾となります。
(3) L(P)上の点(x,y)をφによって(x',y')に移したとき、この(x', y')がL(Q)上にある条件をx,yの式で書いたとき、それがL(P)の式と一致すればOKです。(2)の結果から行列式ad-bcが0じゃないと保証されているので、問題なく計算が進みます。
(4) PはS上の点なのでs=cosθ, t=sinθと書け、QもS上の点なので、θの値によらずにu^2+v^2=1が成り立っているはずです。
このことから、(3)の結果を使ってθの恒等式を作り、それがちゃんと恒等式になるようにa~dを決めていきます。
恒等式になる「必要条件」はθ=0, π/2といった特別な値を代入することで3つ求まり、逆にこの3つが恒等式になる「十分条件」でもあることがわかります。
ここからの処理は経験が必要なのですが、a~dを三角関数でおいて処理するとよいでしょう。すると大きく2パターンの場合分けが発生し、それぞれが「原点中心の回転移動」「直線に対する対称移動」を表すことになります。
<筆者の解答>