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21世紀の奈良県立医大後期数学 -2013年-

このシリーズでは、奈良県立医科大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

10回目の今回は2013年です。

第1問

積分方程式の問題です。

 

与式の定積分をAと文字でおいて、Aの式にf(x)の式を代入してAを決定するという典型問題です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

ベクトル列の問題です。

 

(1)今回の問題は、vnの一般項を調べてもうまく解けません。vnの一般項は調べると、{A^(n-1)+A^(n-2)+・・・+A+E}v1で計算できるのですが、Aの累乗の計算が面倒なので、v1に係ってる行列の正体がよく分からないのです。

 

なので、今回登場する文字が全て「整数」であることを利用して解いていきたい所です。

vkが0になるので、vkを漸化式を使ってvk-1の式で表すと、bxk-1 = -1となって、xk-1が整数なので、bが1の約数でないといけないと分かるわけです。

 

(2) vk=0となっているので、漸化式を使うとvn+k =vnが分かり、結局vnは周期kで一巡することが分かります。周期があるということは、vnの取りうる値は有限個しかなく、そのどれも成分は有限の値です。

 

ということで、vnの成分が発散することはありえません。

 

(3)(4)

xnの漸化式を解いて、xnの一般項が発散するかどうかをチェックします。もし発散してしまうと、(2)の結果に反するので不適となります。

 

(3)ではb=-1のとき、a≠0だとxnが必ず発散することを示し、(4)ではb=1のとき、|a|≧2だとxnが必ず発散することを示す流れになります。

 

ちなみに、(4)では「b=1のとき、|a|<2では必ずOKである」を証明する必要はありませんが、その場合の話をしておくと、|a|<2のとき、xnの一般項に出てくる公比が両方とも「絶対値が1の虚数」になります。このような虚数の累乗は周期性を持つ「可能性」があります。

 

具体的には、cosθ=a/2, sinθ=√(4-a^2) /2とおいたとき、このθが「πの有理数倍」であれば周期性を持ち、それ以外の時は周期性を持ちません。例えばa=1ならばθ=π/3なので周期をもち、a=6/5ならばcosθ=3/5, sinθ=4/5でθは「πの有理数倍」にならないので周期性を持ちません。

 

ということで、「b=1のとき、|a|<2では必ずOKである」とは必ずしも言えません。

 

<筆者の解答>

 

第3問

3次関数の接線に関する問題です。

 

3次関数のx=tにおける接線が(1,1)を通るとしたときにできるtの3次方程式がちょうど2つの実数解を持つ条件を考えていけばよいです。

 

方程式の左辺の極値=右辺となっていれば条件達成です。

 

<筆者の解答>

 

第4問

2項係数が素数で割り切れるか否かを調べる問題です。

 

(1)これは有名な性質です。pCiを分数の形に書くと、分子には素因数pが入っている一方で分母にはpが含まれていません、ということで、分子のpはどうあがいても約分されずに生き残るため、pCi全体がpの倍数だと言えます。

 

(2)以降でも、pと(p-1)!が互いに素である、という性質を利用していきます。

 

(2)解法選択が悩ましい問題です。最初、npCpをpで割った余りを調べるのがかなり面倒に感じたので、帰納法を使おうかと考えましたが、うまくいきませんでした。

 

結果的には、最初に候補から外した、「npCp -nを力ずくで計算する」という解法でうまくいきました。

npCp -nを分数の形にして通分すると、分母分子がpで割り切れ、かつ分子全体がnで括れることが分かります。その状態でn以外の残りの分子についてmod pを考えてあげることで、分子がpで割り切れることが分かります。

 

分母には(p-1)!しか残らないので、「pと(p-1)!が互いに素」という性質から分子の素因数pは必ず生き残ります。

 

(3) (2)の結果を利用して合同式を使えば容易に示せます。

 

(4) mをpで割った商をk, 余りをjとすると、[m/p]=kとなるので、結局(kp+j)Cp -kがpで割り切れることを証明することとなります。

 

j=0のときは(2)の結果からpの倍数になることが分かっているので、jを1つずらした者同士の差、{ (kp+j)Cp -k} - { (kp+j-1)Cp -k} がpで割り切れれば、全てのjに対し(kp+j)Cp -kがpで割り切れることが、帰納的に示せます。ということで、

{ (kp+j)Cp -k} - { (kp+j-1)Cp -k} = (kp+j)Cp - (kp+j-1)Cpがpで割り切れることを証明します。

 

この2項係数の差は、お馴染みの「アイドル選抜の公式」により、(kp+j-1)C(p-1)と計算できるので、これを(2)と同じように分数に直していきます。

 

すると、分子にはかならずpの倍数が含まれていて、分母は(p-1)!しかないので、同様の議論でpが生き残ると言えます。

 

<筆者の解答>