ちょぴん先生の数学部屋

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令和の山梨大医学部後期数学 -2023年-

山梨大学医学部後期の数学の2023年の問題を解いていきます。

第1問(1)

 

図形問題です。

中心角が45°と扱いやすい角度なのもあり、確実に解かなければならない問題でしょう。ア、イともに余弦定理でよいでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第1問(2)

 

確率の問題です。

白がi個である確率で和をとればPn,kが求まるので、あとは具体的に計算するのみです。

 

<筆者の解答>

 

第1問(3)

 

2項係数の素因数分解に関する問題で、今回の第1問の小問の中では一番難しい問題かと思います。

 

200C100は、分子が101×102×・・・×200, 分母が1×2×・・・×100になっているので、素因数pの個数が「分子>分母」になっていれば、約分したときに分子にpが生き残って200C100がpで割り切れることになります。

 

ということで、分母分子のpの個数をそれぞれ調べていきます。

N!に含まれる素因数pの個数がΣ[N/p^m] (※mに関するΣ)で計算できることに注意しますが、今回知りたいpが2桁なので、シグマのうち実際に生き残る項はごくわずかです。

pの最大値が知りたいので、pが大きい条件下で調べると効率が良いです。

 

<筆者の解答>

 

第1問(4)

 

ベクトルの問題です。

直線状にある条件からP,Qの座標をパラメータ表示し、直交する条件から連立方程式を作って解くという典型問題です。

 

<筆者の解答>

 

第1問(5)

線形計画法の問題です。

(x-2)^2+(y-1)^2 = R^2は円と解釈できるので、|x+2y|≦1と円が交点を持つRの最小値を求める問題、と解釈しなおせばよいです。

 

<筆者の解答>

 

第2問(1)

関数の最小値を求める問題です。

見た目からして、t=x+1/xと変換するとf(x)はtの3次式で表せそうなので、その方針で進めましょう。tの取りうる値の範囲に注意です。

 

<筆者の解答>

 

第2問(2)

 

複素平面に関する問題です。

この手の問題では、z=x+iyとして式をx,yの式に直すのが定番ではありますが、今回は√が混じった複雑な式になってしまうので、そもそもの式の図形的な意味を考えた方が得策です。

Cの式は、点1+iからの距離と点-1-iからの距離の和が6で一定、と解釈できます。この条件でピンとくるのが「楕円」ですね。

このことから、この楕円と合同な楕円(軸が座標軸に平行)の式を作ること、もっと言えば長径と短径を求めることに主眼を置けばよいとわかります。

 

<筆者の解答>

 

第2問(3)

 

8次式を同定する問題です。これは発想の必要な難問と言えます。

 

8次式は、9個の点の情報があれば係数が全て一意に求まるので、原理的にはx=0,1,・・・,8を代入してできる9つの式を連立してあげれば係数が求まります。でも、9本の連立方程式なんか解きたくないですよね・・・ということで、そうせずともf(x)を求める方法を考えることにします。

 

k=0,1,・・・,8ではf(k)の値がkの式でかけていることに注目して、試しにg(x)=f(x)-x^2/(x+1)とおいてみてはどうでしょう。こうすると、k=0,1,・・・,8ではg(k)=0となるので、g(x)の分子(9次式)はax(x-1)(x-2)・・・(x-8) (a:0でない係数)と因数分解できるはずです。

こうすることで、f(x)が分数式の形で求まるのでf(9)がaを含んだ式で求まります。

あとはaを求めればよいのですが、これはf(x)が8次式になる、つまり分子がx+1で割り切れるという情報を利用します。これは因数定理を使えば事足ります。

 

<筆者の解答>

 

第2問(4)

 

面積と回転体の体積を求める問題です。

 

グラフを書けば面積の計算は容易いです。回転体については、一度グラフの下半分を上側に折り返してから回転する必要があります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

確率の問題ですが、実質的には、4枚の番号がa,b,c,d (a<b<c<d)のときにa+b+c+d≦20となるような(a,b,c,d)の組み合わせの個数を調べる、場合の数の問題です。

 

a<b<c<dという大小関係をつけておくことで、4a+6≦a+b+c+d≦4d-6と評価できます。

ここからa≧4の場合はNG, さらに(4≦)d≦6のときはa,b,cが何であろうとOKだとわかります。

ということで、先に4≦d≦6の場合の組数を調べ、あとは1≦a≦3かつ7≦d≦10の条件下で、a,dの値で場合分けして虱潰しに(b,c)の組数を調べればよいです。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

整数問題です。東大の2006年第4問が似たような問題になっています。平成の東大理系数学 -2006年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

(1)方程式に代入してaを求めるだけなので容易いでしょう。a>5に注意です。

 

(2) (1,2,5)と(1)の例から、(an, an+1, an+2)の情報からan+3を計算する漸化式を作ればいい、と思いつけば勝ちです。その漸化式がan+3>an+2を満たしているかの確認も忘れずに。

 

(3) 最初のいくつかで偶奇を実験して調べてみると規則性が見えてくるので、それを帰納法で示します。

 

<筆者の解答>

 

第5問

 

チェビシェフ多項式を題材にした問題です。

(詳しくはこちら。内積の概念を関数にも・・・直交多項式 その1 ~チェビシェフ多項式~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )

 

(1)まさにチェビシェフ多項式の定義そのものです。帰納法で証明しましょう。

 

(2)これは「第2種」チェビシェフ多項式の直交関係の計算ですね。

(1)の知見から、当然x=cosθの置換積分を行うことになります。その際、fn'(x)をθの式として計算する必要があります。あくまで元の式が「xでの微分」なので、「θでの積分」に書き換える必要があります。

 

ここができれば、あとは典型的な積分計算です。(途中積分区間が0~πと綺麗になるように巧みに変数変換を行ったりしています)

最終的に、pとqが等しいか否かで場合分けが発生することに要注意です。

 

結局p=qのときだけ有限な値となりp≠qでは0になるという性質から、Ip,qはまさに「直交関係」を表すものになっていて、直交関数の言葉で書けば、

「f'3n(x)は、積分区間[-1/2,1/2],重み関数√(1-x^2)の、直交関数系」となるわけです。

 

ちなみに、答案の最後のδp,qは「クロネッカーのデルタ」と呼ばれる記号で、p=qの時だけ1, それ以外では0となる量です。

直交関係を書くのに好都合な記号で、大学の教科書でも普通に使用されています。

 

<筆者の解答>