ちょぴん先生の数学部屋

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平成の阪大理系後期数学 -2008年-

このシリーズでは、大阪大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

5回目の今回は2008年です。

 

第1問

 

整数問題に絡めた極限の計算問題です。

 

(1) 3の倍数かつ5の倍数になるようにnを決めてあげます。mod3の合同式を使うとnによらず4^n -1は必ず3の倍数になることが分かるので、実質5の倍数となる条件だけ考えればOKです。mod5の合同式を考えましょう。

 

(2) Akの定義の中がlogのままだと考えにくいので、○≦x≦△の形に直してあげましょう。16^kを3で割った余りに注意すれば、3の倍数を全て列挙できるので、和が計算できます。

 

(3) (2)ができていれば極限計算は容易です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

1次変換について考える問題です。

 

(1)Pを通ってlに垂直な直線をl', mに垂直な直線をm'とすれば、lとl'の交点がQ, mとm'の交点がRとなります。

 

(2) P1QP2Rが平行四辺形なら「P1P2ベクトル=P1Qベクトル+P2Rベクトル」の関係が成り立つので、それを利用してP2の座標を計算していきます。

 

(3) 実質M^(n-1)を計算する問題です。ケーリーハミルトンの定理を使うと、M^2が単位行列Eの定数倍になることが分かるので、nの偶奇による場合分けが発生します。

 

答案では、最終結果が汚くなるので、一部の係数を別の文字で置き換えています。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

チェビシェフ多項式を使って、cos(π/4n)が無理数であることを証明する問題です。

 

(1) cos2t, cos3tをcostだけの式に書き換えてあげればOKです。

 

(2) cos(n+1)t+cos(n-1)tを加法定理で計算してあげると漸化式が求まります。この問題のfn(x)のことを、チェビシェフ多項式と呼びます。

 

(3)「無理数であることの証明」は、「有理数であると仮定し矛盾を導く」という背理法で行うのが常套手段です。ということで、cos(π/4m)が有理数だと仮定します。

(問題文のようにnのままだと(2)までのそれと混同しそうだったので、以後mと文字を置き換えて議論していきます)

 

さて、ここからどうするか?当然(1), (2)が考えるヒントになります。

(1)の結果から、少なくともn=1,2,3のときはfn(x)は有理数係数の多項式になっており、(2)の漸化式から、nによらずfn(x)は有理数係数の多項式になることが帰納的に分かります。

 

有理数係数の多項式に、有理数を代入した結果は、当然有理数になります。ということで、もしcos(π/4m)が有理数なら、fn( cos(π/4m) )=cos(nπ/4m)も有理数となるはずです。

 

ところが、実際にはn=mのとき、cos(mπ/4m)=cos(π/4)=1/√2となって、これは無理数です。これで矛盾が起きるというわけです。

 

類題としては、京大の有名な「tan1°は有理数か?」(後期2006年第6問)があげられ、こちらも同じような発想でtan1°が無理数だと証明していきます。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

点の軌跡と、それと関連した面積の計算問題です。

 

(1)Qのx座標をq(>0)とおいて、PQ=qの条件を解くとqが2通り求まってしまいます。qが正でないといけないという条件から、符号を調べてどっちの式が妥当かを調べていきます。これができれば、Rの座標導出は容易いでしょう。

 

(2)まずはRの軌跡をざっくり調べます。Rのx,y座標をtで微分して増減を探りますが、dx/dtの符号のチェックが意外と面倒くさいです。結果的に、xは単調減少することが分かってめでたしめでたしとなります。

 

あとは置換積分を使って面積計算をしていくのですが、dの入った部分の積分が出来なさそうに見えてしまいます。ところが、X=sintと変換すると、なんとdの入った部分の積分値は0になってしまいます。これは、積分の中身がt=π/2で符号を逆にした対称な形になっているからです。

 

ということで、求める面積はdによらない定数になります。

 

<筆者の解答>