ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系後期数学 -1992年-

このシリーズでは、東京大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

16回目の今回は1992年です。

 

第1問

 

回転体の体積を計算する問題です。

 

(1) f(x)=x-√(x^2 -1) - a/xとして、これがx≧1で常に正となるaの条件を考えます。

 

定石通り微分すると却ってややこしくなるので得策ではありません。なので、f(x)のままの状態で正になる条件を判断したいです。

 

x-√(x^2 -1) の分子を有理化した上で全体を通分して、再び分子の有理化をするとよいでしょう。f(1)>0の条件からa<1が決まるので、それをヒントに考えていきましょう。

 

(2) ここは定石どおりに積分を実行していくと、∫√(x^2 -1)/xdxの計算が要求されます。ここでx=1/cosθという置き方がヒントだと気付けると、x=1/cosφと変数変換すればうまくいくことが分かります。

 

終結果には、(3)を考えるうえで障害になる1/cosθ - tanθが登場している(θ→π/2で∞-∞の不定形になる)ので、通分しcosθを約分することで不定形を解消しておくとよいでしょう。

 

(3) (2)ができていれば瞬殺です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

空間における抽象的な角度に関する証明問題です。

 

(1)問題設定があまりに抽象的なので、H1をxy平面、Bを原点、H2を平面z=ytanθという感じで、計算しやすいものに限定してしまいましょう。そうすると、内積の知識から題意が証明できます。

 

(2)こちらもあまりに状況が抽象的で分かりにくいです。「空間内の異なる4点A,B,C,D」と一言で言っても色々な配置がありうるわけで、考えにくくなっています。まずは4点が全部同じ平面にある状況を考え、次にそうでない状況を考えます。

 

平面内の時は、「四角形になる」「矢じり型になる」「3つが同一直線上」「4つとも同一直線上」の4パターンに大別され、それぞれが「A→B→C→Dで一周する」「A→C→B→Dで一周する」の2パターンに分かれています。

 

どの場合も基本的には「凸四角形の内角の合計は2π」という事実を使っていきます。

 

次に同一平面内にない場合ですが、こちらは実は一瞬です。

(1)で登場したA,B,Cに、さらにL上にDを加えてあげれば一般化出来ていて、θ=πにすると、先の「同一平面内にある」状況に帰着できます。さらに(1)で証明した事実から、角度の和は平面の場合に比べて小さくなることが保証されてる、というわけです。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

xの等比数列の和でできている多項式因数分解に関する問題です。

 

(1) nとmの大小で場合分けをして考えます。

まずn<mのときは、割る多項式の方が次数が高いので余りはPn(x)そのものになります。

次にn≧mのときは、xの累乗で括ると、Pn(x)÷Pm(x)の余りは、Pn-m(x)÷Pm(x)の余りに等しいことが分かります。これをn<mの状況になるまで繰り返せばよいわけです。

 

(2) (1)の考察から、Pn(x)がPm(x)で割り切れるには、nがmの倍数であればよいことが分かります。さらに、漸化式を作って変形すると、n=kmなら、

Pn(x)=Pm(x)×Pk(x^m)という累乗を含んだ因数分解が可能になります。

 

この事実を使ってP100(x)を分解していくのですが、l,m,nの中に1が含まれるか否かで考え方を分ける必要があります。P1(x)=1なので、1が混じっていると面倒なのです。

 

<筆者の解答>