ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慶応理工数学 2016年

私立最難関の一角、慶應義塾大学理工学部の問題を取り上げます。今回は2016年の問題です。

第1問

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小問集合です。

 

(1)約数の個数と和は定番ですね。2016を素因数分解すると2^5 ×3^2 ×7となるので、

個数は (指数+1)の掛け算、和は(1+2+・・+2^5)×(1+3+3^2)×(1+7)で計算できます。

 

(2)三角関数を使って面積を表現する問題で、図を描いてしまえば(ⅰ)(ⅱ)は難しくありません。(ⅲ)についても、θで微分して増減を調べればよいのですが、注意が必要です。S1'(θ) が全てcosθだけの式になるので、x=cosθとおいて調べたくなりますが、θが増えるとxが減少するといった感じにxとθの増減が逆転するので、増減表を描くときに、「x目線では減少→増加」だったのが「θ目線では増加→現象」となることに要注意です。

 

<筆者の解答>

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第2問

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2次関数の積分に関する問題です。

 

(1) 2次関数は3つ条件を決めると、一意に決まります。

 

(2)与式の積分を愚直に計算すればよいでしょう。

 

(3) Iの積分を部分積分を使って計算し、Jになることを証明します。

 

(4) g(x) = f(x) + h(x)とできることに気付ければ(3)が使えます。

 

この問題の背景にあるのは、「変分法」という手法です。変分法というのは、「ある関数f(x)の積分が最小になるようなf(x)を求めよ」という問題で、物理の分野で頻出する概念です。例えば、「消費するエネルギーが最小になるような物体の軌道は?」とか、「紐をぶら下げたときに、重力の位置エネルギーが最小になる紐の形状は?」といった問いに答えることができます。

 

今回の場合は、(1)(2)で求めた関数f(x)が、積分を最小にする関数で、これを少しだけずらして積分の値がどうなるかを調べていたのが(3)(4)だったというわけです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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確率の問題です。慶応は確率漸化式が大好きですね。。

 

(1)サイコロの目がaとb(a<b)だったときに、3がa以上b以下に含まれていれば裏返ります。よって、

・(コ)は、3をはさむようなa,bの組み合わせを列挙すればよいでしょう。

・(サ)は、3が全く裏返らないか、2回とも裏返るかの2パターンあるのでそれぞれ確率を計算します

・(シ)は、「少なくとも」とあるので余事象「3と4の両方が裏になる」を考えればよいです。3と4のそれぞれが一回の操作でどうなるかを丹念に追いかけます。

 

(2)は、(シ)の延長戦のようなもんです。pn, qnに加えて、

・3が表、4が裏になる確率rn

・3が裏、4が表になる確率sn

を考えると漸化式が立てやすくなります。あとは誘導に従ってpn - qn, pn + qnを計算しましょう。

 

<筆者の解答>

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第4問

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複素数の積に関する問題です。

 

(1)ド・モアブルの定理を使って計算すればよいでしょう。

 

(2)z= cos(2akπ/b) + i sin(2akπ/b) と一般的にかけて、kが0からb-1の範囲では2akπ/bは全部別の角度で、k=bで一周します。

 

(3) 2akπ/b = 2π/b + 2nπ (n:整数)であれば条件を満たし、これを整理すると

ak-bn =1 となります。aとbが互いに素のとき、ak-bn =1 を満たすk,nが必ず存在することが、ユークリッドの互除法により分かります。

 

(4)b1とb2が互いに素な時は、Q1に含まれる角度とQ2に含まれる角度にダブりがなく、互いに素でなく最大公約数がdの時は、d個に1個はダブります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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等面四面体に関する問題です。慶応の図形問題あるあるですが、計算が長く大変です。

 

まず第1段落から

(ニ)と(ヌ)は、1つの面で余弦定理を使えば内積が求まり、内積を使えば面積が求まります。

 

続いて第2段落

(ネ)は、AHを文字で置いて、αに垂直なのでOH・AB=0, OH・AC=0 が成立し、これを使って文字を決定します。

(ノ)は、OHが△ABCを底面にした時の高さなので、OHの長さを頑張って出します。

 

第3段落

(ハ): APベクトルを計算するとBP:PCの比がわかるのでPCの長さが求まり、あとは

sin∠BCAが分かれば、PQ=PC×sin∠BCA で求まります。

 

(ヒ): もはや捨て問のレベルです。本番でここまで時間内に解き切った受験生はほとんどいないと思います。。

切り口の形状を調べないと話にならないので、何とか頑張って調べます。

まずは、△OCA上に、垂線の足がPとなるように点Rを取ります。RPベクトルとOHベクトルが平行という事実を使ってARベクトルを調べると、RがOA上にあることが分かります。これで考える切り口の頂点の一つがRだと分かりました。

 

PQを通りαに垂直な平面をβとすると、βによる四面体の切り口の頂点のうち3つがP, Q,Rだと分かりましたが、あと1点、OBとの交点Sを考える必要があります。ベクトルの条件から、これも頑張って調べるほかありません。

 

こうしてβによる断面が四角形PQRSだとわかりましたので、この面積を求めるわけです。△PQRの方は直角三角形なので比較的簡単に求まりますが、△PRSの方は、SとPRとの距離が分からないといけません。そのために、Sからαへの垂線の足Tを新しく考えてPTを求める必要があります。

 

ここまでしてようやく(ヒ)が求まります。。。しんどすぎ

 

<筆者の解答>

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