2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、京都大学理系数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1(1): 積分計算(5分)
1(2): 多項式の割り算の余り(25分)
2: 空間ベクトル (10分)
3: 確率 (10分)
4: 関数の最大最小 (15分)
5: 立体の体積 (30分)
6: cosの値が素数の逆数になる条件(15分)
計110分
<体感難易度>
1(1)<2<3<6<4<1(2)<5
ここ数年の易化傾向は止まることなく、今年のセットも解きやすい問題でした(去年よりは少し難しいか)。もう「京大の数学は易しくなった」という位置づけでいいんじゃないでしょうかね。
とはいえ、1(2)は結構面倒ですし、第5問の体積も歯ごたえがあります。第6問は後述しますがほぼ知識問題の様相を呈しています。
<個別解説>
第1問
小問集合です。
(1)積分の計算問題です。
とにかく√xが邪魔なので、t=√xと置換することで解消してしまいましょう。logの絡んだ積分なので、部分積分を利用します。
(2)多項式の割り算に関する問題です。
因数定理の適用を当然考えるのですが、そのためにはx^4+x^3+x^2+x^+1=0の解を知る必要があります。これは両辺にx-1をかけることでx^5=1とできるので、結局1の5乗根の内虚数の物4つが解となります。α=cos72°+isin72°とすれば、残りの虚数解はα^2, α^3, α^4と書けるので、これらを代入して余りの係数を調べてきます。
方程式が4つできるので、本来であればそれを愚直に解く必要があるのですが、今回は明らかに自明な解を即座に導出して答えとしています。
αたちの実部虚部をチェックすれば、確かにそれが正しいと分かります。
[追記]
(2)について別解を紹介します。
x^2023 -1をx-1で括ってあげると初項1公比xの等比数列の和の形が出てくるので、それをx^4+x^3+x^2+x+1で括ることによって容易に余りが導出できます。こちらの方がはるかに簡単でしたね・・・
<筆者の回答>
(2)の別解です。
第2問
空間ベクトルに関する問題で、とても京大とは思えないレベルに易しい問題です。
まず、OR=rODとパラメータ表示でき、さらにQR上の点S, PC上の点Tをそれぞれパラメータ表示できます。
QRとPCが交わるということはS=Tになるという事なので、OA, OB, OCの和に直して経緯数比較すれば事足ります。
(※O,A,B,Cが同一平面上にないので、OA, OB, OCは1次独立です)
<筆者の回答>
第3問
確率の問題で、こちらも易しい問題です。
(1)X1~Xnの中に1つでも5があればYは5で割り切れるので、余事象で考えるとよいです。
(2)ベン図を使って考えると分かりやすく、「Yが3でも5でも割り切れない」「Yが3で割り切れ5で割り切れない」「Yが5で割り切れ3で割り切れない」の3つの情報があればOKです。
この手の問題は「割り切れない」のほうが考えやすいので、上記のような発想になります。
<筆者の回答>
第4問
関数の最大最小を考える問題です。
f(x)は見た目がごついですが、よく見ると、f(x)=g(x)+1/g(x)の形に過ぎません。
この形で思いつくのは「相加相乗平均」ですが、残念ながらg(x)>1なので最小値は調べられません。(※相加相乗平均の考え方では、g(x)=1のときにf(x)は最小になるはずです)なので、ちゃんと微分しましょう。
微分すると、f'(x)の符号とg'(x)の符号は一致するので、増減を知るにはg'(x)の情報があればよいことになります。
[訂正] 最小値に関して、最後の最後で計算ミスをしています。分子の末尾は20ではなく16が正しいです。失礼しました。
<筆者の回答>
第5問
立体の体積の問題で、本セット最難問です。
まずは状況把握です。OP=(p,0,0), |OQ|=qとすると、(c)からq=1-|p|が分かります。
このことから、Pがx軸上に固定されていれば、OQの長さは常に一定だという事がわかります。さらにQがyz平面上にあるわけですから、Pを固定したときのPQの通過領域は、円錐の側面になりますね。
こう考えると、Pを動かすとこの円錐側面が動くので、その通過領域を考えようとなるわけです。が、曲面を直接動かすのは考えにくいですね。
そこで、x軸周りの回転対称性からQをz軸上に固定してしまって、先にPを動かしてPQのxz平面内での通過領域を調べてから、それをx軸周りに回転することにしましょう。
通過領域を調べる方法は順像法と逆像法の大きく2つがありますが、答案では前者を採用しています。
最初に「直線」PQの通過領域を調べて、それをx,z軸で切り取れば「線分」PQの通過領域となります。
<筆者の回答>
第6問
cosの値が素数の逆数になる条件について考察する問題です。
この問題は、「チェビシェフ多項式」という背景知識があると飛躍的に解きやすくなりますが、逆にそれがないと解きにくいという知識問題に近い代物です。
(1)3倍角と4倍角の式の導出です。加法定理を丹念に使ってあげれば証明できます。このとき、いずれも「整数係数のcosθの多項式で書けている」「最高次係数が2進数になっている」という特徴を持っていることを気に留めておきましょう。
(2) cos(n+1)θ+cos(n-1)θを計算することにより、cosnθのnに関する漸化式を作ることができます。
この漸化式から、「cosnθは、cosθの整数係数のn次多項式Tn(cosθ)で書ける」ことが帰納的に分かり、さらにTn(x)の最高次係数が2^(n-1)になっていることも分かります。このTn(x)のことを「チェビシェフ多項式」と呼ぶわけです。
この状態で、θ=mπ/n, cosθ=1/pを代入して、mod pを考えてあげると「Tn(x)の最高次係数がpの倍数」という結果が得られます。ところが、上記の通りTn(x)の最高次係数は2進数でpで割り切れません。これで矛盾しました。
というわけで、cosθ=1/pとなるとき、θはπ×有理数には絶対にならないことが分かりました。
このブログでも何度か名前が登場している「チェビシェフ多項式」ですが、今年の入試問題解きが一段落したら、単独で「チェビシェフ多項式」に関する特集記事を上げようと考えていますので、お楽しみに。
<筆者の回答>