ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 東北大理系数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、東北大学理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1: 確率 (15分)

2: 三角関数の方程式の実数解の個数(10分)

3:  漸化式(15分)

4:  多項式の割り算と虚数解(20分)

5:  空間ベクトル(20分)

6:  線分の通過領域(70分)

計150分

 

<体感難易度>

3≦2≦1≦5<4<6

 

今回のセットは極めて簡単なセットでした。骨が折れそうなのは通過領域の第6問、虚数解について考察する第4問くらいのもので、残りの4問は旧帝の受験生にとっては取るに足りない程度の難易度だったと思います。

この四問は少なくとも完答必須、第4問もほぼほぼ出来ていないと話にならず、正直試験問題として機能していて差が付きそうなのは第6問だけという、高得点勝負になりそうです。

 

<個別解説>

第1問

確率の問題です。

 

(1)引き分けになるのはAが白だけを、Bが赤だけを引き続ける状況なので、玉の取り出し方は1通りしかないですね。

 

(2)Aが累計k回目(kは奇数)で初めて赤を取り出す状況を場合分けして調べればよいです。

 

<筆者の回答>

 

第2問

三角関数の方程式の実数解の個数に関する問題です。

 

(1)sin3xを3倍角の公式でsinxの多項式にしてしまえば、ただの因数分解です。(3倍角の公式は、ド忘れしても加法定理からその場で導出できるので安心です)

結果として、f(x)=0の解は「整数×π/2」のものが全てです。

 

(2) (1)の結果からf(x)=0の解はx=nπ/2 (n:自然数)とまとめて書けるので、このうちm以下になるものの個数はガウス記号を使った式で書けます。

 

このガウス記号を不等式評価すれば、はさみうちに持ち込んで極限計算できますね。

 

<筆者の回答>

 

第3問

漸化式に関する問題です。

 

(1)この漸化式は「両辺にn+1をかければうまくいきそうだ」というのは経験を積んでいればすぐに思いつけると思います。こうすることで階差数列に帰着できます。

 

(2)Sm =Σanとすると、Sm自体がmの式で直接計算できます。部分分数分解を使うタイプのシグマ計算です。Smが求まってしまえばあとは容易いです。

 

<筆者の回答>

 

第4問

多項式の割り算と虚数解に関する問題です。

 

(1) f(x)=0の解が綺麗に書けるわけでもないので、因数定理ではなく、直接筆算による力づくで商と余りを計算してしまいましょう。こうして余りが出た後にaの値を代入して0になることを確かめればよいです。

 

(2) (1)の割り算の商をg(x)とします。すると、x^4+x^3+x^2+x+1=f(x)g(x)と書けるわけですが、この左辺は見覚えがあるはずです。両辺にx-1をかけることで、x^5-1=(x-1)f(x)g(x)とできるので、結局f(x)g(x)=0の解は、x^5-1=0の虚数解、つまり1の5乗根のうち虚数になるもの4つ、となるわけです。

 

この虚数解は実部が正の物が2つ、負の物が2つあるわけですが、前者はf(x)の担当、後者はg(x)の担当になっています。1の5乗根を複素平面に書くと、0中心で頂点の一つが1になる正五角形の頂点になるので、そこからαを極形式で書けます。

 

(3) α^5 =1になることに注意して与式を簡単にすると、α^3+α^2となります。この2つは、g(x)=0の2つの虚数解なので、解と係数の関係から値が求まります。

 

<筆者の回答>

 

第5問

空間ベクトルの問題です。

 

(1)与えられてる条件を使って内積計算するのみです。

 

(2)垂線の足の表示を調べる基本問題です。

Hは平面OAB上にあるので、OH=xa+ybという線形和で書けます。さらにCHとこの平面が垂直なので、CH⊥a, CH⊥bの2つが同時に成り立ちます。こうなるような係数x,yを調べてあげましょう。

 

(3) (2)と同じ要領でOKをa,b,cの式で求めて、そこからHKがcだけの式で書けることを確かめればHKとcが平行だと言えます。

 

<筆者の回答>

 

第6問

線分の通過領域を調べる問題です。

 

(1) f'(x)=0となる正の実数xを求めればOKです。この小問は、(2)の通過領域を図示する際のヒントになります。

 

(2)通過領域を調べる問題の基本は、「順像法」「逆像法」といったものなのですが(答案は途中までこの解法を想定して書いています)、今回の場合は、PQの傾きと長さが常に一定なので、実質0≦x≦2でのPの軌跡を求めればよいことになります(Qの軌跡は、これをx,y方向に+1ずつ平行移動すればいいだけなので)。

 

f(x)のグラフは最初単調増加して途中で極大値を迎え、あとは単調減少していく挙動を示すので、PQは、最初右上に進んでいき途中で折り返して右下に進んでいく挙動を示すことになります。この折り返し地点こそが、(1)で調べた直線になっています。

 

図示する際は、無理してf(x)の極大値の情報を書き込まなくてもいい気がします(極大となるxが複雑な式なので)。

 

[追記]面積を計算し忘れていたので、追記しました。

Sの面積については、区間ごとに分けて地道に計算するほかなく、計算ミスのリスクも高いので余裕があればやるくらいでよいですね。

 

<筆者の回答>