ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 名大理系数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、名古屋大学理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1: 4次方程式と点の存在領域 (30分)

2: 回転体の体積(55分)

3: 2曲線の交点の個数 (50分)

4:  2項係数と類似した係数に関する証明問題(20分)

計155分

 

<体感難易度>

1<4<2≦3

 

今年の名古屋大は、全体的に発想力より計算力が求められるセットになったと思います。方針自体は簡単に立つが、最後までやり切るのが大変という類です。

 

第1問は標準的な問題なので完答必須、第4問は発想さえできれば比較的簡単にけりが付きます。あとの第2問は(4)の計算がえぐく、第3問も検討が長い難問という感じで、これら2つは部分点どまりでも仕方ないですね。

 

<個別解説>

第1問

4次方程式と点の存在領域に関する問題です。

 

(1)この小問は4次方程式とは無関係に、αが|z-1|=1上にあるという条件だけで成り立つ関係式です。|α-1|=1を処理しましょう。

 

(2) (1)と同様の関係式がβについても成り立ち、かつ4次方程式が(x-α)(x-α*)(x-β)(x-β*)=0と因数分解できることを利用して、展開した式で係数比較を行えばよいです。

 

(3) (2)の結果からp=t+u, s=tuとなります。

4次方程式の解がそもそも虚数である条件から0<t<4, 0<u<4が分かり、4次方程式の解4つはすべて相異なるのでt≠uも言えます。

 

解と係数の関係からtとuはz^2-pz+s=0の2つの解になっているので、この2次方程式が、上記の3つの条件を満たすようなp,sの条件を調べれば存在領域が求まることになります。

 

<筆者の回答>

 

第2問

回転体の体積に関する問題です。この問題は(3)までは比較的簡単なのですが、(4)だけ計算量がえぐい、という問題になっています。

 

(1)半径の差<中心間距離<半径の和であれば2つの円は2つの交点を持ちます。

 

(2)CとDを連立してyを消去するだけですね。

 

(3)考える回転体は、円錐と円を回転した部分の和になっています。後者については積分で求められます。

 

(4) (3)で求まったV(r)をrで微分して符号変化を調べる、という方針自体はすぐに立ちますが、hもrの関数になっているが故に、肝心要のV(r)の微分計算がとにかくエグイの一言です。

展開等を端折らずに愚直にやり切り、rやhなどの塊ごとに整理していく、というのが計算ミスを減らすコツです。計算をやりきると実は綺麗に因数分解できます。

 

V'(r)=0の解が求まったら、それらの大小関係と(1)の条件に注意すればどこで最大になるかが分かり、その後の極限計算はほぼオマケです。

 

<筆者の回答>

 

第3問

2曲線の交点の個数に関する問題です。

 

(1)分数の形のままだと面倒なので分母を払ってしまいましょう。その状態で両辺の差を微分して増減を調べていきます。

この(1)の結果は、(3)に至るまでしばらく顔を見せないのですが・・・

 

(2) (3)での検討の予行練習のような設問です。

2曲線を連立してできるxの方程式H(x)=0の解の個数を調べればよいので、H(x)を微分して増減を調べます。今回の場合は2回微分までしないと様子が見えてきません。

 

このようにして検討していくと、H'(β)=0となる負の実数βが一つだけあって、そのβに対してH(x)はx=βで最小値を取ることが分かります。

この最小値H(β)が正なら「交点0個」、0なら「交点1個」、負なら「交点2個」であることが分かりますので、あとはβの範囲を絞ってH(β)の符号を判定しましょう。

 

[訂正]最後の符号判定の計算にミスがあったので訂正します。おかげで評価がかなり面倒になってしまいました・・・(βが-7/6<β<-1と結構シビアに評価できないとH(β)が負だと断定できません)

 

(3) (2)における「3」が「a」に変わっただけなので、やることは(2)とほぼ一緒です。答案でも、それを見越して(2)と(3)のフォーマットをほとんど一緒に揃えています。ということで、この小問に関してもH(β)の符号が肝心になるわけです。

 

今回は「交点1個」の状況を調べたいので、H(β)=0を調べることになります。この式でaを消去して変形していくと、、、なんとここで(1)の方程式の形になるのです!!

終盤に来てのあまりに綺麗な伏線回収に、思わず膝を打ちました。

 

(1)の結果からH(β)=0となるβがただ一つあることが分かり、H'(β)=0の関係式から対応するaも一意に決まります。これで題意が示せました。

 

[追記] (3)においてはa=xの式という形に定数分離して解くという別解がありますので載せておきます。(2)もそれに倣って解答すると、評価が大分楽なものになります。結果論ですが、この別解の方が楽でしたね。

 

<筆者の回答>

(2)(3)別解

 

第4問

2項係数と類似した係数に関する証明問題です。

 

(1) x=1を代入すれば瞬殺です。

 

(2)証明する式は威圧感がありますが、完全なる見掛け倒しです。二番目の式でx→x+1の置き換えをすれば2項定理が使えます。

 

(3) 証明したい式の左辺は、(2)の式をこねくり回せば出て来そうです。ということは、右辺の方は、(2)で使ってない1番目の式でx→x+1の置き換えをすれば出てくるのではと予想できます。

 

実際に、Pn(x+1)=Pn+1(x) /xと変形できるので、そこから右辺の形を作ることができます。このとき、右辺を係数にする多項式の形になっているので、「k次の係数を比較すればよい」と発想できれば、ほとんど解けたも同然です。

 

(2)の結果について、Σをばらして書いてみることでk次の係数を知ることができるので、これで証明完了ですね。

 

<筆者の回答>