2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、東京工業大学数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1: 積分値の整数部分 (55分)※関数電卓で無理やり解いた
2: 整数問題(25分)
3: 複素数を絡めた確率 (35分)
4: 立体の体積(45分)
5: 直線に接する球面(50分)
計210分
<体感難易度>
2<3<4<5<<1
難易度は昨年に比べると若干難化した感じです。どの問題もひねりがあったり見当がとにかく長かったりと、相変わらずの手強いセットです。
第1問は私自身最終的に関数電卓に頼ることしかできなかった難問で本番では捨てるべきでしょうね。第2問・第3問は出来れば完答したい問題で、第4問・第5問は部分点狙いでいいと思います。
<個別解説>
第1問
積分値の整数部分を求める問題で、誘導も何もなく方針決めすらままならない難問です。方針が立ったとしても最後まで評価しきるのは至難の業です
(私自身最終的には机上で解くことを諦め、関数電卓に頼ってしまいました)。
まず最初に大事な事実ですが、言うまでもなく「この定積分Iは計算できません」。原始関数はおろか、特殊な変数変換で定積分を計算することすらできないのです。
なので、非積分関数を積分できる関数で不等式評価する必要があるのです。
最初、この非積分関数が下凸単調減少なグラフであることを使って、台形の面積で上下ではさむというアイデアで進めましたが、評価結果があまりに複雑で手に負えなくなり断念しました(参考までにその答案を載せておきます)。
ということで、非積分関数をそのままにして不等式評価する路線は諦め、分母だけを如何にして評価するかに軸足を移しました。
非積分関数を観察してみると、xとe^xの和が分母になっています。xが十分大きい所では、この2つでは殆どe^xの方が値を決めてしまっています。ということで、まずは、x+e^x≧e^xと不等式評価出来て、この結果を使うとIは2未満であることが示せます。Iは正の値なことは明らかなので、この時点でIの整数部分は0か1の2択に絞れます。
0か1かを絞るためには、今度はIを下から評価する必要があります。そのためには、x+e^xを上から押さえる必要があります。
e^xというのは発散の仕方がどんなn次多項式よりも強いので、一括して上から押さえるのは厳しそうです。一括が難しいなら、区間を分けてしまえばよさそうです。積分区間を整数ごとに区切ると、その中で両端を結んだ線分は必ずy=e^xのグラフよりも上側にあります(y=e^xが下凸なので)。
これによって非積分関数の分母を1次関数で評価できるので、積分計算が可能になります。
ここからは、もう試行錯誤です。
xが大きい所では積分値はほとんど無視できるくらい小さくなるので、念のため最初の2項だけ拾って(1項目だけでも1に近そうだけど不安だったので)、その値を下から評価する方針で行きます。
と思ったのですが、eそれ単体(2.7<e<2.8)はともかく、log(e+1)とかlog2とか、近似値がよく分からない数ばかりが登場し、これらをその場で評価するのはほぼほぼ不可能だと判断しました。ということで、最後は関数電卓に頼らざるを得ませんでした。
結果I>1が確かめられたので、Iの整数部分は1だと結論付けられることになります。
予備校の解答速報がどういうアプローチで攻略してくるか、楽しみです。
[追記]河合塾と駿台の方で解答速報が上がっていたので、その解法を紹介します。上記のように課題はIを下から評価する方法なので、それに対してどうアプローチしてくるかに興味がありました。
ざっくりいうと、河合塾の方は「非積分関数のグラフを描き、Iよりも小さな直角三角形を接線で作って評価する」、駿台は「e^x≧1+xの関係を使って『xの方』を消去する」という方法でした。
意外とラフな評価でI>1が示せちゃうんですね。。。いずれにせよ、私の敗因は精度よく細かく評価しすぎようとしたことでした。最初から正解を引き当てようとして見事に泥沼に嵌った格好です。
まぁ、どの方法を取るにせよ、初見でこの問題を解き切るのは極めて難しいですね。
<筆者の回答>
↓最初のアイデアです。
ちなみに、pythonによる数値計算を行うと、1.6・・・となるようです。
(※積分区間上端が2023だとoverflowエラーとなるため、700に制限しています。これでも整数部分の特定には十分です)
第2問
整数問題です。
この手の左辺が文字式、右辺が数字、というケースでは、まず左辺を因数分解することを考えましょう。
このとき、(x-1)x(x+1), (y-1)y(y+1)といった式が登場し、これらは「連続3整数の積」なので6の倍数になります。右辺を因数分解するとちょうど6^3が入っているので両辺を6^3で割ることで見通しが良くなります。
具体的には、A=(x-1)x(x+1)/6, B=(y-1)y(y+1)/6としてあげると、与式はBA^2=400というかなりスッキリした式になります。
AとBは整数だと分かっているので、この式によってA,Bの候補を絞ることができます。あとは、それぞれ対応するx,yがあるか否かをチェックしていきます。
この際、「連続3整数の積」のリストをいくつか作っておくと楽に検討できるでしょう。
<筆者の回答>
第3問
複素数を絡めた確率の問題です。
この問題文の操作を1回することで、合計6通りの複素数が生まれます。予めこれら6つの複素数について、絶対値と偏角を調べておきましょう。
(1) |zn|は、それまでに生まれた複素数の絶対値の積になります。
登場する絶対値は1,2,√3の3種類なので、絶対値が2のものがa回、√3のものがb回、1のものが残りのn-(a+b)回生まれるとすると、|zn|=2^a×3^(b/2)と書けます。これが5未満になるような(a,b)の組み合わせを調べてあげればよいでしょう。
(2)zn^2が実数ということは、zn自体は実数か純虚数、つまり偏角が90°の整数倍になります。
操作で生まれる6つの複素数の偏角は、0°, 30°, 60°, 90°の4種類なので、znの偏角の取りうる値は30°の整数倍だけです。
複素数平面に落とし込むと、znの偏角は実質「偏角が軸上にある(→このときzn^2は実数になる)」「偏角が軸から30°左回りにずれてる」「偏角が軸から60°左回りにずれてる」の3つの状態しかないことが分かるので、これで確率漸化式を立てることができます。
[訂正] Q1の値を間違って計算していました。正しくはQ1=2/3なので、最終結果はn→n-1と変えたものになります。失礼しました。
<筆者の回答>
第4問
立体の体積の問題です。
A, Bはいずれも円柱から四角柱をくり抜いた立体で、穴の形状については、Aは辺が座標軸に平行、Bは対角線が座標軸に平行、となっています。
このことに注意して、まずはA,Bを別々に考え、それぞれについて平面z=tでの断面を調べましょう。2つの立体の断面が分かれば、それらをドッキングすることで共通部分の断面が調べられるわけです。
あとは、その断面積を調べてtで積分すれば体積が求まります。積分計算が面倒ですが頑張りましょう。
[訂正] 積分計算にミスがあったので修正しました。
<筆者の回答>
第5問
直線に接する球面について考察する問題です。
(1)ABとBCから等距離にある点Pを(X, Y, Z)と定義します。目標は、2直線から等距離にある条件からX,Y,Zの関係式を作ることです。
ABとPとの距離d1についてですが、AB上の点Sをパラメータ表示し、PSの長さが最小になるようにSのパラメータを決めることで求めることができます。BCとPとの距離d2についても全く同様です。
これでd1, d2がX~Zの式で求まったので、あとはd1=d2を処理していきましょう。結果として2種類の平面の式が導出されます。
(2)直線AB, BC, CD, DAに全て接する球面について考えると、その中心Pはこれらの4直線全てと等距離の位置にあり、その距離こそが半径rになります。ということで、(1)と同じ要領でCDとPとの距離d3, DAとPとの距離d4を調べて、d1=d2=d3=d4となるようなPの座標(X, Y, Z)を全て調べ尽くせばよいことになります。
このとき、対称性の高い式同士を連立させると、平易な関係式が得られて見通しが良くなります。場合分けも発生しかなり面倒ですが、力づくでやり抜くしかありません。
<筆者の回答>