2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、東京大学理系数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1: 積分の極限(25分)
2: 確率(15分)
3: 円の接線の放物線によって切り取られる長さの考察(50分)
4: 空間内の三角形と球面との共有点(20分)
5: 多項式の割り算の余り(30分)
6: 立体の体積(60分) ※解けてません→解答速報を見ながらなんとか解けた
計200分
<体感難易度>
1<2≦4<5<3<<6
第6問こそ飛びぬけていますが、それ以外を含めたトータルでは昨年に比べると難易度は易化したように思います。特に第2問の確率は去年の超難易度が何だったのかと言わんばかりの標準的な問題でした(簡単だという意味ではなく、超難問だった去年の確率と比べれば、格段に難易度が落ちたという意味です。そこは誤解しないで下さい)。
それ以外も、第6問を除けば比較的手を付けやすい問題です。ただ、細かい検討が必要な部分が散見され、完答しきるのは難しいです。
第6問は立体のイメージの考察すら難しい完全なる捨て問です。(私自身(1)の途中で断念してしまいました)
<個別解説>
第1問
積分の極限計算の問題です。
(1)の不等式を利用して(2)をはさみうちで計算するという、分かりやすい誘導です。
(1)まずsinの中にあるx^2が厄介極まりないですね。とりあえずθ=x^2 -kπと変換してsinの中を軽くすることが先決です。
(※単純にθ=x^2と変換してないのは、積分区間が0~πとスッキリしてた方が考えやすいからです。|sinθ|はπ周期の関数なので、-kπがあっても結果に影響がありません。)
この変数変換を行うと、分母に√(θ+kπ)という形が出てきて、証明したい式の左辺右辺近くなってきます。積分を行う際はこの分母の存在が邪魔なので、この分母を不等式評価して定数に変え、積分の外に出してあげればよいです。
(2) Bnの式は、積分区間を区切ってあげると(1)で考えたAkをk=nからk=2n-1まで足し上げた量になっています。これに気付ければ、Bnを不等式評価してはさみうちに持ち込めます。最後に使う手段は、もちろん区分求積法です。
<筆者の回答>
第2問
確率の問題です。
今回は場合の数を調べ上げることで確率を計算するタイプの問題ですが、この際、場合の数は「全ての玉を区別してカウントする」のが原則です。もし同じ色の玉を区別しないでカウントしてしまうと、「同様に確からしい」という確率計算の大原則が崩れてしまう場合があるからです。
(1)赤が隣り合わないようにするには、赤以外の8個を横一列に並べて、その両端ないし隙間に1つずつ赤を挿入していけばよいです。
(2)赤も黒も隣り合わない確率p'を計算すれば、q=p'/pで条件付確率が計算できるので、p'の計算に注力します。
赤も黒も隣り合わない状況をいきなり直接考えるのは難しいので、余事象である「赤は隣り合わないが、黒は2つ以上隣り合う」場合を調べるとよいでしょう。2つ以上隣り合う場合は、その隣り合う黒を1つの塊にして考えればよいんでしたね。
[訂正] (2)の「ちょうど2個黒が並ぶ」の検討過程で、一まとめにした「黒黒」が別の黒と隣り合う場合を2重にカウントしてしまっていました。具体的には「黒黒」黒と並ぶ場合、黒「黒黒」と並ぶ場合です。この片方分については「3つ並ぶ場合の数」と一致するのですが、それが2重に含まれちゃってるという事です。
黒が3個並ぶ場合が含まれることについては織り込み済みでしたが、それが2重に含まれていることまでは考えが及んでいませんでした。。。。焦って見落としたのではなく、素で認識がなかったのが実情です。
それに伴って、(2)の後半部分について訂正します。失礼しました。
<筆者の回答>
※こちらが初稿です。(2)でのダブルカウントに気付かずに解いてしまっています。
第3問
円の接線の放物線によって切り取られる長さに関する問題です。
(1)C上の点は(cosθ, a+sinθ)とパラメータ表示できるので、任意のθについてこの点がy>x^2に収まっている条件を考えればよいでしょう。
今回の場合はその条件はa>(θの関数)とできるので、右辺の最大値よりもaが大きければよいことになります。
(2)これは初手の方針決めが極めて重要です。
最初に接点Pの座標を決めて→接線の式を出し→放物線との交点を考えて→長さLpを調べる、という流れでやろうとすると計算量がえらいことになります。
線分の長さLpは端点の座標を使って簡単に式にできるのだから、最初に決めるべき文字は、線分の端点のx座標α, β (α<β)です。
このα,βを使うことでLpの式や線分の式が容易に作れ、その線分がCに接する条件からαとβに条件を課すことができます。
ここまでやって、ようやく接点Pの座標(cosφ, a-sinφ)を定義するわけです(※y座標のsinがマイナスになってるのは、Cの下側に接線があり、下向きが正になるように角度設定したほうが都合がいいからです)。
上記のABの式の傾きと、このφの式で書ける接線の式の傾きとが一致するはずなので、ここでα, βをφだけの式に統合できるようになります。
ここまでの考察を使うと、Lpは1/sinφだけの式で書け、逆数のままだと気持ち悪いのでさらにt=1/sinφ≧1と変換してあげるわけです。これでLpは実質tの4次関数に帰着できます。
さて、ここから何がしたいかというと、「このtの4次関数=定数」という4次方程式を考えたときに、複数のt≧1となる実数解があるかないかを調べたいわけです。もし4次関数が単調増加であれば解はどうあがいても1個しかありませんし、そうでなく極大極小があれば、定数がそれら極値の間にあれば実数解が複数個登場できるわけです。
ということで、あとはこの4次関数がt≧1で単調増加にならないaの条件を調べればお終いです。
<筆者の回答>
第4問
空間内の三角形と球面との共有点に関する問題です。
(1)P(x,y,z)とおいて内積の条件を調べて連立するだけの簡単な問題です。
(2)Hの座標をAB上にある条件からパラメータ表示して、CH⊥ABを内積で処理することでそのパラメータを確定させればいいですね。
(3)要するに、球面と三角形が交わりを持つか否かを検討せよという問題です。
ここで「交わりを持つ」状況は複数パターンがあって考えにくいですが、逆に「交わりを持たない場合は簡単で、△OHBがSの外側にあるか内側にあるかの2択しかありません。
それを考えるには、O, H, Bの各頂点が「全てSの外側にある」「全てSの内側にある」条件を考えるのが簡便でしょう。(※これでも交わりができてしまうパターンはあるにはありますが、今回の問題の場合は考えなくて良さそうです。丁寧に調べ尽くしたわけではないので、抜け漏れがあったらすみません)
この2つの条件を調べて、その逆が答えになります。
[訂正]
イヤな予感が的中してしまいました、(3)で「これでも交わりができてしまうパターンはあるにはありますが、今回の問題の場合は考えなくて良さそうです。」と軽くスルーしてしまっていた懸念事項が実際に存在していました。
つまり、三角形の各頂点がSの外側にあっても交点を持ってしまう場合がありました。それは「△OHBの辺や内部で接触する」パターンです。これを調べ損なってしまっていたので追記して、最終解答を修正しました。失礼しました。
その場合については、Qと平面OHBとの距離を知らべ、実際に接触点が△OHBの中にあるか外にあるかを検証し、同接触するかを考えていきます。
<筆者の回答>
[追記] (3)でⅠについての抜け漏れがあったのでその分を追記し、最終解答を訂正します。Ⅱについては影響ありません。
第5問
多項式の割り算の余りに関する問題です。
(1)整数での「合同式」の多項式バージョンといえる性質の証明です。g(x)=Q(x)f(x)+r(x)とおいて、2項定理を考えてあげればよいでしょう。
(1) h(x), h1(x)をそれぞれ立式してh1(x)を消去すると、 {h(x) }^49 -h2(x)がf(x)で割り切れることが分かります。h2(x)=h(x)になっているなら、結局{h(x) }^49 -h(x) =Q(x)f(x)と書けることになります。
f(x)は特別な値を入れると0になってくれるので、それを利用してh(x)の形を決定していきます。
まずは単純にx=1を代入した場合とx=2を代入した場合の2つの式ができます。が、これだけだとf(x)に含まれるx-1の「2乗」の要素を無視してしまってます。これを考慮するには、考えてる式をxで微分してからx=1を代入したものを考えればよいですね。
これで、未知数2つに対して3つの連立方程式ができました。よってこのうち2つの方程式から(a,b)を求めてしまい、それが3つ目の方程式を満たすかどうかを吟味していけばよいですね。
<筆者の回答>
第6問
立体の体積に関する問題で、これは完全なる捨て問です。私自身(2)は手も足も出ず、(1)ですら途中で行き詰まり断念してしまいました。
何が難しいかというと、立方体を考えてるくせに「上蓋は除く」となっているのです。この変な設定のせいで立体のイメージが極めて難しくなってしまっているのです。(1)でさえそうなのに、(2)では折れ線の条件になっているため収拾がつきません。
(1)途中で断念しましたが、出来た所まで説明します。
まず(i)の条件からPは原点中心の半径√3の球の中にすっぽり納まっていることになり、(ii)の条件から、Pが「z<1」にある場合は立方体の中全体が存在範囲となります。
問題は、(ii)の条件でPが「z≧1」にいる場合です。Sは上蓋のない立方体なので、Pは上方向になら立方体から飛び出すことができてしまいます。そして、(ii)の条件は、「立方体の上側の縁と線分OPが途中で接触する」ことは許しているのです。
そうなると、Pの存在限界はどうなるかといえば、まさにこの上縁と線分OPが接触するタイミングです。
この接触点を文字でおいて、OP=√3になるPをQとしたとき、Qの軌跡を調べ、そこからPの存在範囲を調べていきます。最終的に体積を調べたいので、平面z=tで断面を切った時のPの軌跡を考えるのが肝です。
このようにすると、体積を調べたい立体の断面が一通り調べられるので、その断面積を計算しtで積分すれば体積が計算できます。この「断面積を求める」所まではできました。
ところが、いざ断面積を積分しようとしたら、どうしても計算しきれない積分が残ってしまい詰んじゃった、というのが現状です。
なぜこんなことが起こるかと言えば、断面積を計算する過程で扇形の面積が登場する場面があり、その中心角θを新たに定義せざるを得なくて、後の積分ではそのθへの変数変換をしないといけなくなったからです。この場合、非積分関数にθ単体とθを使った三角関数が混在して基本的には難易度の高い積分になります。
こうして残ったθの積分が高校数学の知識ではどうあがいても計算できなかったわけです(もう大学数学そのものである複素積分を使いたくなる衝動にかられました)。計算ミスがないか何度かチェックしましたが、結論は変わりませんでした。
これは時間をおいてもう一度再考しないとダメそうです。
(2)こちらは条件が折れ線となってもはやカオスです。
この手の問題は、線分の先っちょに球を括りつけて動かすといった作業をしたくなるのですが、もう考える気力すらありません。すみません。
[追記]
(1)(2)ともに解き直しを行いました。
(1)上記の積分を使ったアプローチでは詰んでしまうことが分かったので、初等幾何的に処理する方向に方針変更しました。
Pが全体として半径√3の球面の中にいる+z<1では立方体の中にいる、という検討は今までと変わりませんが、前回苦戦したz≧1での条件をもっとシンプルに考え直すことにしました。
Pがz≧1にいる場合は、線分OPの存在できる下限は、立方体の上の縁とOPが接触する場合です。この状態でOPを動かしてみると、四角錐の側面を描くことが分かります。この四角錐の内部かつ球の内部が、Pのz≧1での存在範囲になります。
実際にこれを図示してみると、立方体から四角錐をくり抜いて、そこに球を1/6にカットした立体をはめ込んだ形状になることが分かります。
この事実を使ってVの面積を計算できます。
(※実は、一番最初に思いついた解法はこれに近いものでした。しかし、そうしてできる立体が「z=1のところで不連続になっておかしい」という変な思い込み+深読み+勘違いをしてしまったために積分計算による解法に走り、結果詰んでしまったというのが実態です。球面の部分をうまくイメージできなかったのが敗因でしたね)
(2)こちらに関しては、結局自力で解くことができなかったので、河合塾の解答速報の助けを借りつつなんとか最後まで解き切った感じです。
まず、(iii)~(v)でN=Oとすると、(1)で考えた(i), (ii)と完全一致するため、VがWに含まれる立体であることは比較的簡単に分かります。
ということは、「(iii)~(v)を満たしても、(i), (ii)を満たさないP」が実は存在していて、その立体UをVに付け加えたものがWだということになります。(※このUのイメージができなかったので、自力で解くことを諦めた次第です。)
「(iii)~(v)を満たしても、(i), (ii)を満たさないP」という状況を考えると、答案の図3のようにSの外側を迂回し回り込む形でPが存在していればよさそうです。この場合が唯一「(iii)~(v)を満たしても、(i), (ii)を満たさない」状況なので、この場合に特化して考えていきます。
OとPをつなぐロープを想像すると分かりやすいですが、ロープを短くしていくといずれ立方体の上の縁にぶつかります。
今回はPを出来るだけ遠くに持っていきたいモチベーションがあるので、出来るだけONは短くしておきたいです。そうなると、上の考察から「N自体がそもそも立方体の上の縁に存在している」場合に限定して考えれば見通しが良くなりますね。
このとき、Pの存在範囲はNを中心とした半径√3-ONの球全体になり、Pはそもそも中心がOで半径√3の球の中にいたわけですから、この小さい球は大きい球に内接していることになります。
そのときに、この小さい球の下側135°の部分がVからはみ出しますので、その体積を調べればよいです。
この体積を調べるにはどうすればいいかというと、小さい球の通過領域を、Nの存在している辺とOを含む平面で切った断面について、その辺を回転軸にして135°だけ下側に回転してあげれば実現可能です。
ここまで情報が揃うことでUの体積が求まり、それと(1)の結果を足せばWの体積となります。
135°だけ回転するなど新規性の高い操作をさせられたり、うまく断面を切らないといけなかったり、そもそも「(iii)~(v)を満たしても、(i), (ii)を満たさない」のがどんな状況なのかが分かる必要があったりと、とにかくハードルの多い問題で、(1)ができたとしても(2)は非常に難しく、捨て問であることには変わりありませんね。
<筆者の回答>
↓解きなおした結果です。
↓初稿です。(1)を積分で解こうとした結果詰みました。