ちょぴん先生の数学部屋

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平成の慶応理工数学 1998年

私立最難関の一角、慶應義塾大学理工学部の問題を取り上げます。

 

今回は1998年です。

第1問

3次関数の特定をする問題です。

基本的には誘導に従って解いていくだけの計算問題です。

 

ア、イ:x=-1でf'(x)=0かつf''(x)<0であれば極大値の条件をクリアでき、x=1での接線と元の曲線を連立した方程式がx=-4を解に持つ条件を考えることでb,cをaの式で書けます。

 

ウ~オ:f'(x)=0の解を調べることでエが求まり、接線同士の傾きの積が-1であることを使えばaの値が求まります(f''(-1)<0の条件からa>0となることに注意です)。オはf(エ)を計算するだけですね。

 

<筆者の解答>

 

第2問

積分の極限を求める問題で、いわゆる「ウォリス積」が背景にある問題です。

 

カについては教科書レベルの計算問題なので説明不要でしょう。

 

キ、ク:「部分積分を使って」とありますが、慣れてないと戸惑うかもしれません。sinとcosの積の形を作って「原始関数を考える」という発想で考えていくのが基本です。クはキの結果で積を取って次々に番号を下げていけばよいですね。

 

ケ:キの結果が番号が2個差があるのに対して、ケは1個差なのでキを直では使えません。ここは、はさみうちの適用を考えてみましょう。

 

コ:(nの1次式)×Sn^2の形を無理やりクから作れないかを考えてみるとよいでしょう。するとつじつま合わせでケの形が登場して極限計算ができることになります。

 

コの結果をうまく使うと、分数の掛け算の極限がπ/2に収束するという形を作ることができ、それは「ウォリス積」と呼ばれています。

 

<筆者の解答>

 

第3問

立方体を対角線を軸に回転させたときの体積を計算する問題です。

こちらも第1問同様誘導に従って基本的には考えていけばよいです。

 

サ~セ:問題文にある通りAGとQFが直交することを使いますが、内積を考えればよいですね。その結果からシ、スは計算でき、セも同様のプロセスで計算できます。

 

ソ、タ:体積を計算するときは、「回転軸に沿って積分する」ことが必要なので、積分する変数をβからwに変換しています。ソ自体は簡単な積分で計算でき、タはこれに円錐二つ分の体積を追加すればよいです。

 

<筆者の解答>

 

第4問

行列の存在の有無を確かめる問題で、これは中々難しいです。

この類の問題では、「どうにかしてA,Xを見つけてこよう」というモチベーションで挑むのが基本で、そのための条件を積み上げていきます。その条件を全て満たすものが1つでも見つかれば「存在する」ですし、矛盾してしまえば「存在しない」と判定できます。

 

(1)まずは、A,Xの成分がどんな性質を持っているかを考えて扱う文字数を減らしたい所です。

今回の場合は、「A,Xは両方とも逆行列を持たない」という性質があることに気付くことが第一歩です。そのとき、A,Xは両方とも2文字だけで成分表示できるので考えやすくなります。そうすると、うまく条件を満たすA,Xが見つかります。

 

(2)こちらは(1)のようには即座に文字を絞れないので、まずは力づくでAX, XAを計算してみます。そのときに、成分が0になるもの、ないし共通しているものに注目してx~wをa~dで表すことを考えてみましょう。

 

そうしてチェックすると、どうあがいても成分に矛盾が生じてしまうことが分かるので、A,Xは「存在しない」という結論になります。

 

<筆者の解答>

 

第5問

楕円に外接する長方形について考察する問題です。

 

(1)「直交する楕円の2本の接線の交点の軌跡は円となる」という性質を証明すればよいことになります。(この円の事を「準円」と呼びます)

 

接点の座標から計算していくと計算が非常に難解になってしまうので、楕円の外にある点(s,t)から楕円に引いた2本の接線が直交する条件、として考えていくのが良いです。

 

(2)長方形の隣り合う2つの頂点をP,Qとしたときの、OPベクトルとOQベクトルのなす角θを考えてあげれば、(1)の結果から面積がθの式で計算でき、θが90°のときに最大になることが確かめられます。これは、長方形の各頂点が軸上にある状況に相当します。

 

<筆者の解答>