ちょぴん先生の数学部屋

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平成の慶応医学部数学 1995年

私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。

 

今回は1995年の問題を解いていきます。

第1問

空間内の直線に接する球面に関する問題です。

 

l1の中心P(p, p-1, 0)とl2との最短距離が、Pを中心としてl2に接する球面の半径となります。l2上の点Q(q, q, q+1)とPとの距離を最小化していきましょう。

 

<筆者の解答>

 

第2問

不定積分の計算と、それを利用した級数の計算問題です。

 

(1)一見簡単そうなこの積分は、実はかなり厄介です。いくつか計算方法がありますが、そのうちの一つがこの問題のような変数変換です。

 

積分の中身がtだけになるように、√(1+x^2)とdxの両方をtだけの式で表現していきましょう。最後にxの式に戻すためにt=(xの式)の情報も必要です。

 

(2)ベクトルをうまく利用することで各面積がk/nや(k+1)/nの式で書けます。この形でΣ、極限と言えば区分求積法ですね。その時に(1)の積分結果が利用できます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

楕円の直交する2接線に関する問題です。

 

(1)Pを通る直線がCに接するという条件を処理すると、直線の傾きに関する2次方程式ができます。ここで解と係数の関係を使うと、傾きの積=-1という直交条件を適用できます。

結果は円となり、この円をCの「準円」と呼びます。

 

(2)楕円の中心をPとすると、(1)の結果からOPの長さは常に一定になることが分かります。ということで、Pの軌跡はOを中心にした円弧になることが分かり、あとはPのx,y座標がともに1以上2以下になることから、円弧の範囲も決まります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

確率の問題です。

 

(1)実はこの問題の最大の難問はこの(1)だったりします。

k=m+nの場合は、最初からx=nにいるので確率1となり簡単です。問題はk=0の場合です。

途中でx=-mに着地してはいけないので、途中の移動の仕方をきちんと考えないといけません。この手の問題では、「+1動くときはX方向に、-1動くときはY方向に動く」ような座標軸XYを設定して、「ある領域に侵入しないような経路を数える問題」に帰着させることが多く、実際に答案にその図を描いてみました。

 

ただ、ここから確率はおろか、経路数すら直接計算するのは困難です(カタラン数という概念が背景にあり、知ってないと計算困難です)。

 

ということで、p0の値の計算はここでは断念して後回しにし、(2)以降を先に考えることにします。

 

(2)x=-m+kからx=nに移動できる確率は、「+1動いてから、x=-m+k+1→x=nに移動できる確率」「-1動いてから、x=-m+k-1→x=nに移動できる確率」の和になります。これで漸化式が作れます。

 

(3) (2)の漸化式を解くことで、pkがp0とp1の式で表現できます。さて、(1)で後回しにしたp0をどうするか?(2)の漸化式を作った構想から、p0=「x=-mから+1動いて、x=-m+1→x=nに移動できる確率」=p1/2と計算できるのではないか?と考えました。

 

こうすることで、p0がp1を介して間接的に求まったので、これでpkがp1だけで表せました。

 

(4) P(m+n)=1を利用することでp1が求まります。そして(3)の考察からこれを半分にしたものがp0となります。ここでようやくp0が求まりましたね・・・・

 

(5) (3),(4)から即座に一般項が求まります。

 

(6) 絶対値が1未満の等比数列を作って、極限を取ればよいですね。

 

<筆者の解答>

 

第5問

行列に関する問題です。

 

(1)行列の積の行列式が、元の行列の行列式の積になる、という公式証明です。Bを成分でおいて具体的に計算してしまうのが速いです。

 

(2) (1)の性質から、Xの行列式は0となります。この条件下で、XがEの定数倍か否かで場合分けして、ケーリーハミルトンの定理を活用して矛盾を示していきます。(3)にも言える話ですが、成分比較は「0」があるものをとっかかりに検討すると見通しが良くなります。

 

(3) こちらも(1)の性質から、D(X)=0かD(X-λE)=0のいずれかだと分かります。場合分けをした上で、ケーリーハミルトンの定理を利用してXの次数を下げて計算していきましょう。

 

<筆者の解答>