ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東工大数学 2008年

理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2008年の問題を取り上げます。

第1問

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a次関数と対数関数が接する条件と面積を考える問題です。

 

(1) f(x)=x^a, g(x)=log(bx) と置いた時、f(s)=g(s)とf'(s)=g'(s)が両方成立するとき2曲線は接します。この条件を整理していけばOKです。

 

(2) 問題文の定義通りにA(h)を計算したのち極限を計算すればよいでしょう。A(h)は標準レベルの積分の計算で、極限計算にはhlogh →0 (h→0)を使いますが、この問題であれば証明なしで使ってよいと思います。

 

<筆者の解答>

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第2問

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0でない有限値に収束する条件と、その時の極限値を計算する問題です。

 

分数式の極限を考えるとき、極限と分母分子の次数の関係は下のようになります。

・分子の次数<分母の次数 →0に収束する

・分子の次数=分母の次数 →0でない有限値に収束する

・分子の次数>分母の次数 →発散する

よって、今回の場合は分子の次数と分母の次数が揃うようにcを決めてあげればよいと分かります。

 

また、f(x)は定義からx≦f(x)<x+1という不等式が成り立つので、これを使って1/f(ax-7)と1/f(bx+3) を評価して、はさみうちの定理に持ち込めば良さそうだと方針が見えてきます。

このようにすると、極限を考える分数式の分母は常に2次式で、分子は(b-a)x+定数という形になるので、b≠aなら1次式、b=aなら0次式となって、ここで場合分けが発生することになります。

 

b≠aのときはc=1とすれば分母分子の次数が揃い、はさみうちの定理もストレートにうまくいきます。

 

b=aのときはc=2とすれば分母分子の次数は揃うのですが、両端の極限値が違ってきてしまうので、このままでははさみうちの定理がうまく決まりません。

うまくいかなかった原因はax-7,ax+3を一塊で不等式で挟んでいたからです。

f(ax+n) = f(ax)+n (n:整数)となるので、定数部分を分離してf(ax)単独で評価すればより厳しい不等式が作れて、はさみうちの定理を適用できるようになります。

 

<筆者の解答>

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第3問

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歪なサイコロを取り扱う確率の評価問題です。これは類題経験がないと難しく(しかもその過去問が昭和レベルまで遡らないと見つからない)、(2)の右側の証明は相当な難問です。

 

(1)サイコロの出る目がiとなる確率をpi = 1/6 +qi と置いて考えるのがミソです。本来1/6で同じであってほしいのに、歪なのでqiだけ誤差が乗ってしまう、、という発想です。(これ以外の置き方ではうまくいきません)

このとき、確率の性質からΣpi =1なので、Σqi = 0が分かります。この式を使って、

P = Σpi^2 をqiの式に直して計算してみましょう。

 

(2) Q= (p1+p3+p5) × (p2 + p4 + p6) と計算されるので、これを評価していくことになります。

Σpi =1を使えばQの式は、p1+p3+p5の上凸の2次関数に帰着できるので、不等式の左側は簡単に証明できます。

 

問題は右側の証明。

不等式証明の基本で、Q-(1/2 -3/2P)が0以上になることを示せばよいのですが、piが色々入り乱れているので方針が立てにくいです。

ここで思い出したいのが(1)です。(1)は1/6+(2乗の和)≧1/6という形で証明できたのでした。これと同じ考え方で、Q-(1/2 -3/2P)が「2乗の和」でかければ証明できたことになりそうだと見通しが立ちます。とはいえ、2乗の形で書こうにも、このままでは役者が足りなくて平方完成がうまくいきません。なので、無理やり役者を連れてこれないかと考えるわけです。

 

ここがこの問題1番の難所なのですが、1/2という定数項を、わざと1/2×1と考え、

そしてこれまたわざと、1= (Σpi)^2 と考えてはどうでしょうか?Σpi =1だったので、この式は1をわざと複雑な形に書きなおしただけになります。

この発想を使えば、平方完成に足りなかった役者を無理やり引きずり出すことに成功します。結果、最終的に平方完成がうまくいって、不等式の右側を示すことができます。

 

この発想を試験場で思いつくのは至難の業ですね。。

 

<筆者の解答>

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第4問

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正三角形の頂点の軌跡を求める問題です。

 

(1) いきなりPQがx軸に垂直として解いても構いませんが、(2)を見越してP,Qが一般の配置の場合のRの座標を計算して、その特殊な場合として考える方が結局無駄がありません。

P(p, -ptanα), Q(q, qtanα)とかけるので、PQ=1となる条件と、Rの座標を計算できます。Rの座標の計算は、60°回転の行列を使うのが一番効率的です。角度と長さを同時に扱えるのが回転行列の利点ですので。(1)は、このうちp=qとなる場合になります。

 

(2) (1)の下準備のおかげで、pとqを消去するだけで楕円の式が求まってしまいます。

 

<筆者の解答>

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