理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2007年の問題を取り上げます。
第1問
素数pで何回割り切れるかを考察する整数問題です。
(1) 具体的な例でまず考えてみると、例えば1~100のなかで5の倍数は100÷5 = 20個あり、25の倍数は、100÷25 = 4個あります。
同じように、1~Nの自然数の中でpの倍数の個数は、N÷pの商になります。
この発想で1~p^(n+1)の中にあるp^mの倍数の個数から、p^(m+1)の倍数の個数を引き算してあげると、(1)の答え、つまり「pで最大m回割り切れる自然数の個数」が求まります。この答えをN(p,m)とします。
(2) xがpで最大X回割り切れる整数、yがpで最大Y回割り切れる整数だとすると、
x=ap^X, y=bp^Yの形に書けるので、xはN(p, X)個, yはN(p, Y)個存在し、X,Yを固定すれば(x,y)の組み合わせは合計N(p, X)×N(p, Y)個あると分かります。
さらにxyがp^(n+1)で割り切れるなら、X+Y≧n+1が成り立つことが分かります。これと0≦X≦n+1, 0≦Y≦n+1を同時に満たす(X,Y)を、XY平面上の格子点として考えることができます。
この条件下でX,Yを動かしてN(p, X)×N(p, Y)を全部足せばよいのですが、落とし穴があります。
(1)で考えたN(p, m)は、あくまで0≦m≦nの範囲までしか考えていませんでした。
実際にm=n+1とすると、1~p^(n+1)の中でpで最大n+1回割り切れる整数はp^(n+1)だけなので、N(p, n+1) = 1となり、(1)の答えから外れてきます。
つまり、X=n+1あるいはY=n+1の場合だけはN(p, m)を例外扱いして計算しないといけないのです。
この例外処理に気を付けて和を計算しましょう。
<筆者の解答>
第2問
接線を回転した直線の式と、面積の極限を計算する問題です。
(1) 接線の傾きを求めて、加法定理を使って-30°回転した傾きを調べればよいでしょう。答えはそこそこ汚いです。
(2) テンプレ通りにS(a), T(a)を計算すればよいでしょう。T(a)については1/6公式を使えばよく、式の形こそ煩雑ですが計算自体は簡単です。極限計算も至って素直です。
<筆者の解答>
第3問
正八角形の3頂点からできる三角形の面積を考える問題です。正直(1)と(2)は順番が逆だと思います。
(1)はそこそこ骨の折れる問題です。
まず、正8角形には外接円が存在するのでその半径aを余弦定理から計算しましょう。このaが分からないと三角形の面積が計算できないので。外接円の中心をOとします。
今、正8角形の3頂点からできる三角形がどんな場合に最大になりうるかを考えます。
もし、三角形が鈍角三角形だとすると、底辺が共通で高さを大きくした三角形を別に必ず作ることができます。このことから面積最大の三角形の候補は鋭角三角形に限定できます。
鋭角三角形なら必ず内部にOを含む形になるので、三角形をOを中心に3分割することができて、中心角をp×π/4, q×π/4, r×π/4 (p+q+r = 8, p,q,rは自然数)とできます。こうすることで、△PQRの面積を、これら3分割した三角形の面積の和として計算することができます。あとはp,q,rを動かして最大値を探っていきます。
その際、p≦q≦rとしても一般性を失わないので、これを使って(p,q,r)の候補を絞って調べるとよいでしょう。
(2) (1)に比べると段違いに楽です。
∠PQR=90°なら、円周角の定理からPRは必ず外接円の直径になることが分かります。そうなるパターンは実質2パターンしかなく、面積が最大になるものはすぐに分かります。
<筆者の解答>
第4問
指数関数と2次関数が接する条件と、両者で囲まれる面積の総和を計算する問題です。
(1) g(x)=e^(-x)とし、y=fn(x)とy=g(x)がx=tnで接するとすると、
fn(tn) = g(tn)とfn'(tn) = g'(tn)が同時に成立します。これらを連立すればよいです。
(2) 状況を図に描くと見通しが良いです。Snを直接計算して無限級数を計算するのもアリですが、図を見ると、
「y=g(x)とy軸、x軸, x=∞で囲まれた面積」ー「y=fn(x)とx軸で囲まれた面積の総和」で計算したほうが遥かに手っ取り早いと気付きます。
前者の積分は、積分区間に∞が入る「広義積分」というもので少しだけ高校数学からはみ出してしまうのですが、実際には通常の積分と同じように計算すればOKです。
後者は、y=fn(x)とx軸で囲まれた面積は簡単に求まり、その無限級数は等比数列の無限和になるので計算が簡単にできます。
<筆者の解答>