このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
11回目の今回は1996年になります。
第1問
いわゆる「チェビシェフ多項式」に関する問題です。
(1)数学的帰納法でよいでしょう。cos(n+1)θ, sin(n+1)θを計算すれば一発です。
この問題文にあるfn(x)を「第1種チェビシェフ多項式」、gn(x)を「第2種チェビシェフ多項式」と呼びます。
(2) xのまま微分するのは難しいので、せっかくなので(1)で示した性質を使いましょう。つまり、x=cosθと置換してあげることで、θに関する微分に話を言い換えると見通しがよくなります。
(3) (2)の結果をうまく使うとよいでしょう。
(1)の証明の過程でfnやgnの漸化式が出てきますが、その漸化式からfn(x)とgn(x)はいずれも全ての係数が整数になることが分かります。
その上で、(2)の式で係数比較してあげれば、fp(x)の1次以上p-1次以下の全ての係数がpの倍数になることが分かります。(pが素数なので、pより小さい自然数とpは必ず互いに素になる、という性質が利用できます)
最後に定数項については、fp(0)を計算すればよいのですが、これはθ=π/2とすることで計算可能です。結果、fp(0)=cos(pπ/2)になり、pが奇数なので0になります。
<筆者の解答>
第2問
整数問題です。
m^nとn^mの1の位が「9」であれば条件を達成できるので、そうなるm,nの1の位に注目して周期性を調べてあげればよいでしょう。
<筆者の解答>
第3問
点の直線に対する対称移動に関する問題です。
問題文のままの状態では抽象的で考えづらいので、座標を設定してあげるとよいでしょう。対称性がよくなるようにl: y=x/√3, m: y=-x/√3と設定してあげると見通しがよくなります。
ここで、「直線に対する対称移動」は行列で表現しておくと扱いやすいので、lに関する対称移動を表す行列をA, mに関する対称移動を表す行列をBとして、それぞれ求めてしまいましょう。
(1) P4は、P1に行列BAを3回かけたものになります。なので、(BA)^3 =Eが言えればOKです。
(2) 行列ABとBAを眺めると、実はそれぞれ「原点周りに-120°回転」「原点周りに+120°回転」を表していることに気が付きます。これを利用して図を描くと、問題文の折れ線はある程度対称的な形状をしていることが分かります。
実質3種類の長さを計算すればよく、それの合計値の最大値を考えればOKです。
が、P1(cosΦ, sinΦ)とすると、それぞれの長さが絶対値を含んだ式になるので、場合分けがかなり面倒なことになります。
ここでは最大値さえ求めればよいので、出てきた式を合成しちゃえは答えだけなら出せます。
<筆者の解答>
第4問
四面体の成立条件を考える問題です。
一見すると、「四面体の各面が三角形として成立していればOKじゃないか?」と考えて4つの三角形の成立条件を調べに行こうとしてしまいますが、非常に面倒なうえに、それだけでは不十分です。
4面それぞれが三角形になっていたとしても、四面体を作ろうとすると潰れてしまう場合があるからです(答案の図1を「四面体のイラスト」ではなく、「ただの平面のイラスト」と捉えると、その例になっています)。
なので、最初から「四面体が成立する条件」を調べに行きましょう。
幸いにして1つの面は正三角形になっているので、綺麗にXY平面に座標を取って置くことができます。この正三角形を△ABCとし、四面体の残りの頂点をDとしたとき、DのZ座標が0にならないように取れる条件を求めればOKです。
<筆者の解答>
第5問
体積の計算問題です。
体積の問題は、特定の軸に垂直な平面で立体を切り、その断面積を軸に沿って積分するのが定石です。今回の場合はz軸に沿って断面積を積分していきます。
(1)考える立体はz軸について回転対称なので、断面は円になります。なので、平面z=tで断面を切った時、z軸から最も離れた点がどこにあって、その点とz軸との距離がいくらになっているのかに注目して断面積を考えればよいです。
(2) (1)ができていれば、Vをaで微分して増減を調べるだけです。
<筆者の解答>
第6問
確率の問題です。
簡単のために、スタート地点をA0として、反時計回りに順にA1, ・・・,An-1と点に名前を付けておきます。
(1)最初の1周でA0を飛び越えるには、An-1に到着して裏がでればOKです。なので、A0から1周せずにAn-1に到達する確率an-1を求めれば事実上終了です。
an-1は漸化式を使って計算するとうまくいきます。
(2)題意を満たすためには、2周目からk-1周目まではA1→An-1に1周することなく到達してA1へ飛び越す、を繰り返し、最後のk周目でA1→A0に到達すればOKです。
それぞれの場面の確率が、実は(1)のan-1を使って表現できるので、全部掛け算してしまいましょう。極限計算は、等比数列を0にするだけなので簡単です。
<筆者の解答>