私立最難関の一角、慶應義塾大学の理工学部の問題を取り上げます。今回は2007年の問題です。
第1問
小問集合です。
(1)積分値を最小化する問題ですが、これは積分計算をごり押しで計算し、最小になるa,b,cを調べるほかないです。aについては微分を使い、極限計算は微分の定義に従って行います。b,cについては、積分を頑張って計算して平方完成です。
(2)鈍角三角形の個数を数える問題です。円周角の定理から、鈍角三角形となる三角形は、中心を挟まず正n角形のうち半分の側に偏ったものに限ります。
答案では、n=4のケースは相当手探りでやっていましたので、一般化したnの場合での数え方がスッキリしていると思います。それは、鈍角の対辺になる一番長い辺を一旦固定して、残りの頂点が何通り作れるかを数える方法です。これを数え切れれば、あとは固定していた一番長い辺を回転させていけば数えつくすことができたことになります。
<筆者の解答>
第2問
行列の対角化、累乗に関する問題です。
(1)でやっている作業は「対角化」という作業です。とりあえず問題文の通りに計算して、k, α, βを決めましょう。決まったらA=P×(対角行列)×P^(-1)の形にできて、
A^nは、計算すると、間に挟まるP×P^(-1)が次々と消えてくれるので、最終的にP×(対角行列のn乗)×P^(-1)の形になります。対角行列のn乗は、α, βをそれぞれn乗したものなので、非常に計算が楽です。
(2) (1)の結果を使えば、xn, ynの式が簡単に求まるので、(シ)についてはβ^n>0となる条件を、(ス)については、α^n, β^nがそれぞれ0に収束する条件を考えることになります。
<筆者の解答>
第3問
点移動の所要時間を通じて、複雑な三角関数を処理する問題です。
(1)余弦定理を使うだけの簡単な問題です。
(2)円の部分と直線の部分に分けてf(θ)を計算して微分します。
(3) f'(θ)の正負を考えていくのですが、ルートが入っている厄介な形をしています。ここは、θが入っている部分だけ抜き出して、さらに2乗してルートを消してから処理するとよいでしょう。この関数をg(θ)としてg(θ)の増減を調べます。
調べてみるとg(θ)が単調増加となって、g(θ)の範囲、ひいてはf'(θ)の範囲が分かります。
この範囲が0を含むか含まないかで場合分けが発生することになります。
(4)正弦定理を使うとsinαがθの式で書けます。ここに(3)の結果を適用すればkとの関係が分かります。
<筆者の解答>
第4問
体積計算の問題です。
(1)は部分積分を使って計算します。問題文の通り、(2)の終盤で使用します。
(2)
前半:(ニ)まで
まずは、平面z=aによる曲面の断面を考えることが第1です。いきなり断面を考えるのは難しいので、tを固定したときに直線PQのz=aでの座標を調べて、その軌跡を求めるという戦略で曲面を把握することにします。断面を把握できれば面積の計算はテンプレ通りで、体積もテンプレ通りに計算できます。
後半:(ネ)まで
今度は平面y=sによる断面を考えます。前半と同様に考察すると、曲面の断面が直角三角形になることが分かりますので、これをy軸周りに回転させましょう。
y軸から一番近い点と一番遠い点に注意する必要があり、特に後者はsの値による場合分けがあります。
最後の積分計算については、逆関数が入っているままだとやりにくいので、t=f-1(s)とまるまる置換してしまいましょう。
<筆者の解答>
第5問
(1)cosの3倍角の式、4倍角の式をその場で作って考えます。
(2) (1)の結果から、h(cosθ)=0の解は、cos3θ=cos4θの解の「一部」になり、この解のうちcosθ≠1なら、もれなくh(cosθ)=0の解になります。
よって、cos4θ=cos3θを解くことに終始します。和積の公式を使って積の形に直せると見通しが良いです。
(3) (2)の結果を使えば、解と係数の関係で求まります。
<筆者の解答>