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平成の京大理系後期数学 -2000年-

このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

 

7回目の今回は2000年になります。

 

第1問

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複素数平面に関する問題ですが、抽象的で少し難しいです。

 

(1)複素数の掛け算は「回転と縮尺変更」を同時に行う演算です。

問題文のz-αとz-βを一種のベクトルと解釈すれば、ベクトルz-αにr(cosθ+isinθ)をかけてあげると、縮尺はr倍されて反時計回りにθ回転したものがベクトルz-βになります。

 

今この複素数の虚部が正なのでsinθ>0つまり、0<θ<πになります。よって、こんな配置になるようにzを置いてあげましょう。

 

(2) (1)の結果をうまく利用したいです。そのために、与式の両辺を(z-β) (z-γ)で割り算してあげると、(z-α)/(z-β) + (z-α)/(z-γ) が実数になることが分かります。

 

「実数になる」ということは、この分数それぞれが実数になっているか、虚部が符号違いの関係になっているかに限ります。前者の場合はα,β,γが同一直線状にない事と矛盾してしまうので、後者で決定です。

 

ということは、「片方の虚部は正、もう片方の虚部は負」となるので、(1)の結果が使えることになります。

 

「または」なのか「かつ」なのかに注意して、領域を決めていきましょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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無限級数の計算問題です。(1)は一応(2)のヒントではあるものの、無理して使わなくてもいい気がします笑

 

(1)は、左辺ー右辺を微分するという、お馴染みの解法で解けます。

 

(2)こちらも微分で素直にMnの式を求めて級数を計算します。(等差数列)×(等比数列)の形なので、公比を掛け算して差し引きすると解けるパターンです。

 

最後に極限を取るタイミングで、(1)を使えば(1次式)/(指数関数)が0に収束することを確かめられるのですが、この事実はまぁ自明ですよね笑

 

<筆者の解答>

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第3問

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格子点に関する問題です。

 

(1)ヒラメキの問題です。右辺にkが単独であるので、左辺にもaの絡まない単独のkを作りたいっていう思いで考えれば、y=kでうまくいくと思いつくかもしれません。

 

(2) aとa^2 +1 が互いに素なので、(1)の結果を使ってL上にある格子点の一般形を求めることができます。k=a(a^2 +1)のときに、その一般形のx座標とy座標がどうあがいても同時にプラスになれないことを言いましょう。

 

(3)x座標とy座標が同時にプラスになるようなパラメータの範囲を調べて、その範囲の中に必ず整数が含まれることを示します。不等式の両端の差が1より大きければOKです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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空間図形の問題です。空間図形ということでイメージがしづらく難しい問題です。

 

(1) (2)においてAP=xと文字が与えられてるので、(1)の段階からこれありきで進めてしまいましょう。

 

何もない状態では直方体を平面で切った断面を考えにくいので、XYZ座標を設定すると見通しがよくなります。

 

このときにPの座標と平面の式を計算するのが主題となります。(1)の場合はPがAC'の中点なのでx=1のときを考えればOKです。

 

(2)いきなり断面は考えにくいので、xがいくつのときにどの頂点を通過するかを調べてみましょう。

そうすると、0≦x≦1/2, 1/2≦x≦1, 1≦x≦3/2, 3/2≦x≦2の大きく4つの場合分けをすればよいと分かり、なおかつx=1を境にS(x)が対称になっていることが図形的に明らかなので、実質前者2つのみを考えればOKだとわかります。

 

0≦x≦1/2の場合は、断面が三角形になるのでかなり面積を計算しやすいです。三角錐の体積を2通りで表現する解き方が一番簡便だと思います。

 

1/2≦x≦1の場合は、平面と直方体の各辺の交点を綿密に調べる必要があり、断面の把握が大変です。調べてあげると、断面が等脚台形+二等辺三角形の形になっていることが分かるので、それぞれに分割して断面積を計算するとよいでしょう。

 

最後の対称性については、x→2-xの置き換えを行えば実現可能です。

 

<筆者の解答>

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第5問

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複素数の絡んだ数列に関する問題です。

α=r(cosθ+isinθ)と置くと、ド・モアブルの定理が使えたりと見通しがよくなります。

 

(1) |an|^2をrとθの式で表現して、θを動かして取りうる範囲を調べてあげるとよいでしょう。その最大値が4「以下」でないといけないことからr=|α|の値が決まります。

 

※実際にはcos2nθ=1にはならないのですが、そうなる場合があったとしても「少なくとも4以下じゃないといけない」という必要条件を使っています。

 

(2)  (1)の結果から、|an|=2 |cosnθ|と求まります。このときに、|am|>1となるmを実際に見つけてきてしまえば証明完了です。

 

もし1/2<|cosθ|<1だったとすればm=1とすればいいし、そうでない場合、つまり0<|cosθ|<1/2の場合も、2倍角の式を使えば1/2<|cos2θ|<1が言えるのでm=2とすればいい、というわけです。

 

ちなみに、どんなnについても|an|<2なので、nθはπの整数倍にはなりえず、言い換えればθ=(無理数)×πの形になります。こうなると |cosnθ|=0,1,1/2にはなりえないので、上記の論理が問題なく進みます。

 

<筆者の解答>

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第6問

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関数の法線、面積を計算する問題です。

 

(1) f'(x)の式とf(1)の値が必要になりますが、前者は積分の中身にxを突っ込めばいいですし、後者はt=tanθの置換で積分を解くことができます。

 

(2)実際に図に書いてみると、x=1を境に左側の部分と、右側の直角三角形の部分に、求める面積が分割できることが分かります。

 

右側の方は三角形なので面積計算が容易ですが、左側の計算が面倒そうです。何せそのままだと積分で書かれた関数f(x)をさらに積分するのですからね。

 

こんなときは、「逆関数」を考えてみるとよいでしょう。

 

実は、f(x)の逆関数はy=tanxとなります(f(x)の式でx=tanθを代入すると、最終結果がθになります)。これを利用すると、f(x)の積分値を、y=tanxの積分値で言い換えができることになります。

 

<筆者の解答>

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