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平成の京大理系後期数学 -1995年-

このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

 

12回目の今回は1995年になります。

 

第1問

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多項式の割り算の余りに関する問題です。

 

(1) (イ)より因数定理が利用できるので、そこからrnをαとβの式で書くことができます。そうなれば、目標の不等式は簡単に導出できます。

 

(2)まずは、α>β>0となるようなa,bの条件を決めていきます。問題はその後。

 

α/β>1なので、そのn乗はnを大きくするにつれて単調増加します。

 

もし、α-1がマイナスだとしたら、nを大きくしていくと(1)の右辺はマイナス方向にどんどん小さくなっていってしまいます。そうなるといつかはβ-1より小さくなるので、(1)の式が成り立たなくなってしまいます。

 

よって、α-1≧0が必要になるので、こうなるa,bの条件が必要だと分かります。この条件を見落としがちなので、注意が必要です。

 

逆にα-1≧0なら(1)の右辺はnが大きくなるにつれて無限大に大きくなるので、n=1のときさえ成り立っていれば(1)は常に成り立ちます。

 

以上の条件を図示すれば答えです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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角度の漸化式の問題です。

αnと同じように、∠BOC=βn, ∠COA=γnとおいて考えると見通しがよくなります。

 

(1)αn, βn, γnの漸化式を作って、問題文の左辺を計算して2πになることをチェックします。

 

(2) (1)の式を使ってαn+2を計算していきましょう。

 ※余裕があれば、(2)の誘導無しで(1)の漸化式を直接解いてみるといい練習になります。

 

(3) (2)の漸化式を解くのみです。

この結果から、n→∞でαn, βn, γnはすべて2π/3に収束することが分かります。

 

<筆者の解答>

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第3問

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2次関数に関する証明問題です。

 

申し訳ありませんが、この問題に関してはしっかり解き切ることができませんでした。。

 

方針は以下の通りとなります。

まずp(x)の条件から、最低限|p(1)|≦1, |p(-1)|≦1, |p(0)|≦1, の3つの不等式が成立します。

 

もしp(x)が-1<x<1に極値がなければ(つまり単調増加or減少なら)上記3つで十分ですし、極値があれば|p(-b/2a)|≦1,が追加の条件になります。 

 

その下で、|q(1)|≦1と|q(-1)|≦1は成立はすぐに確かめられます。もしq(x)が-1<x<1で極値がなければ、これで証明完了です。

 

問題は、q(x)が極値を持つ場合です。

 

このとき、q(-b/2c)が極値となって最大値か最小値かのいずれかになります。これの絶対値が2以下だと示せれば勝ちなのですが、ここまで出してきた条件を総動員しても、筆者には残念ながら|q(-b/2c)|≦3までしか示すことが出来ず、どうしても「≦2」まで詰め切れませんでした。。。

 

何か足りない条件や不備があれば、是非教えて下さい。。。

 

<筆者の解答>

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第4問

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行列のユニタリ変換に関する問題です。

 

(1)これは対偶を考えるとよいでしょう。つまり「もしPが逆行列を持たないなら、xはyの実数倍になる」を証明します。

 

以後、yがxの実数倍にならないことを「xとyが一次独立」と表現します。

 

(2) 問題文の式の左辺は3つの行列の積になっていて計算がどえらいことになります。ここは、あえてPを左からかけて(2個の行列の積)=(2個の行列の積)の形にすると見通しがよくなります。

 

終結果はy=Bxとなりますが、BがEの実数倍でないときyとxは一次独立になります。

(Bをかけることでベクトルの向きが変わるので)

 

(3) いわゆる「行列のユニタリ変換」と呼ばれる操作になります。ここで証明するのは「ユニタリ変換の前後でa+dとad-bcの値は変化しない」ということになります。

 

こちらでも(2)と同様にPを左からかけて処理を進めると見通しがよくなります。そこからxとyの関係式を作って、ケーリーハミルトンの定理に持ち込みます。

 

<筆者の解答>

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第5問

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2人プレイのババ抜きを題材にした確率の問題です。「0」のカードをジョーカーと解釈すれば、まんまババ抜きのルールそのものです。

 

(1)n=1の場合とn=2の場合のそれぞれに対して、どうなればA,Bが勝つのかを考えましょう。お互いが0を引き合うとループになることに注意して確率を計算します。

 

(2)まず、引き分けはあり得ないので、pn+qn=1は自明でしょう。

 

次に、最初の状態からB→Aの順番にカードを引き合うとどうなるかを考えます。

 

Bが0を引いたとき、「Bが1枚多く持っていて次がAの番」となります。pn,qnは「Aが1枚多く持っていて次がBの番」という状況からA,Bが勝つ確率でしたので、これはAとBの立場が逆転した状況になります。よって、ここからAが勝つ確率はqnです。

 

Bが0以外を引いたとき、Bには必ず捨てカードが発生し、その状況からAがカードを引けば、Aにも捨てカードが必ず発生します。つまり最終的には「Aが1枚多く持っていて次がBの番」という状態になり、なおかつBの枚数が2枚減っています。ということで、この状態からAが勝つ確率はpn-2です。

 

以上から漸化式を立てることができます。

 

(3) (2)の漸化式でan=(n+2)pnとすれば、anの一個飛びの等差数列の形になります。一個飛びなのでnの偶奇による場合分けが発生します。

 

求まった結果を見るとpnは常に1/2未満なので、このゲームは先攻のBが有利であることが分かります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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直線の交点と、それに関する面積の問題です。

 

(1) Laの式と直線RQの式を求めて、両者を連立してできるx0, y0がともにプラスになるaの範囲を求めればOKです。

Laの式は、先にx=tでのCの接線の式を出して、それがAを通る条件からtを求める、という方針で進めます。

 

(2) 素直にS1, S2をaの式で表現して進めようとすると、rとmの関係式が非常に調べにくくなってしまいます。

 

問題文になんでわざわざrとmと直接関係ない「面積T」が書かれているのか、疑問に思いませんでしたか?これ自体が実は大ヒントです。

 

S1,S2は、よく見ると直角三角形からTを差し引いた部分になっていて、それらの直角三角形の面積は「一定」です。

 

ここからわかる事実は「S1とS2はTだけの式(それも簡単な1次式)で表現できる」ということです。こうなれば、rとmの関係式が簡単に調べられます。

 

あとは、rの範囲、ひいてはTの範囲を調べればOKです。

 

Tはaの式で書くことができるので、微分を使って範囲を調べましょう。

 

<筆者の解答>

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