ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系後期数学 -1994年-

このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

 

13回目の今回は1994年になります。

 

第1問

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不等式証明の問題です。

 

左辺ー右辺≧0を確かめるという王道パターンです。ただ左辺ー右辺を計算するだけだと途中で詰まってしまうため、三角不等式|a+b|≦|a+|b|を途中で挟むとよいです。すると、最終的にab+|ab|の符号チェックに帰着します(これは0以上ですね)

 

等号成立条件は、ab+|ab|の等号成立と|a+b|≦|a+|b|の等号成立を同時に満たす条件となります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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行列の絡んだ漸化式の問題です。

 

(1)一見してケーリーハミルトンの定理の形だとわかるので、この定理の利用を思いつけばOKです。

 

(2)ckとck+1がpの倍数なら、(1)の漸化式からck+2もpの倍数だとすぐに分かります。この論理を使えば、n=k+2から先はすべてpの倍数だと分かります。

 

少し難しいのは巻き戻す方、n=k-1以前もpの倍数と言えるのかの証明の方です。

ここは背理法を使うとよいでしょう。つまりck-1がpの倍数でないと仮定したときに矛盾が起こることを、漸化式を使って証明します。この仮定の下ではad-bcがpの倍数でないといけなくなる、というのがキーポイントです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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点の軌跡を求める問題です。

 

P(p,0), Q(0,q)とおいて、問題文を満たすにはpとqがどんな条件を満たしていないといけないか、p,qを使ってRの座標がどう書けるのか、の2点を抑えればよいでしょう。

 

前者については、先に直線PQの式を出して、それが円と接する条件を調べるのが一番早いでしょうかね。

 

後者については、色々方法があるかと思いますが、一番早く片が付く回転行列を使った方法を解答では採用しています。

 

この問題ではa,bの関係式を求めるまでで終わっていますが、この関係式の具体的な形状は大学数学を使わないと調べられないのでここで留めているのでしょう。

 

実際には、「行列の対角化」を行うことで、この関係式が「平行移動して45°回転した双曲線」を表していると分かります(オマケとして掲載しています)。

 

対角化についてはこちらの記事で解説していますので、興味があれば是非ご一読を。

この2次曲線の正体はな~んだ? ~行列の対角化~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>

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オマケ:Rの軌跡がどんな図形かを調べました。

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第4問

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確率の問題です。

 

正直、この問題は「各試合の勝者がどのように推移するか」を図に書き出せば8割がた解けたも同然です。

 

ここからA~Cの優勝するための条件、最高でも4回戦で終わることなどが分かってしまいます。

 

この図をもとに(1)~(3)を解いてしまえばよいです。

 

(3)の最終結果はp=1/√3となって1/2よりも大きくなります。なので、この手の勝負をフェアにやるには、初戦で戦わないCはA,Bよりも少し格上の選手を充てるべきだと言えることになります。格上のCを後から参戦させることがいい感じにハンデになる、というわけです。

 

<筆者の解答>

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第5問

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面積最大化の問題です。

 

rの値によって弧PQが半円を超えるか否かが決まり、それによってS(r)の形状が変わるので場合分けして式を求めます。結果として両者でS(r)の式は同じものになります。

 

ここで半径rで弧の長さが1になるときの扇形の中心角は1/rと定義するのでした。それがラジアンの定義です。この後微分を行うことを考慮すると、角度はラジアンを採用すべきです。

ラジアンって何だ? - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

さて、S(r)の式を見ると、sinの中に1/rという分数が入っていて、微分する際にかなり面倒なことになりそうです。ということで、θ=1/rと変換してS(r)をθの関数として微分すると見通しがよくなります。この関数をf(θ)とします。

 

するとf'(θ)はすぐには符号を判断できない形になります。分母は常に正なので、符号は分子だけで決まります。なので分子をg(θ)とおいて、g(θ)の増減を調べることでf'(θ)の符号をチェックするという方針で行きましょう。

(実はこのg(θ)は因数分解ができてそれだけで符号判断ができると、後になって気が付きましたので、別解として載せておきます)

 

<筆者の解答>

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第6問

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積分を使った数列の評価の問題です。

 

(1)In+1を部分積分を使って計算します。logが出てきたら、1=(x)'をつくって無理やり部分積分する、というのが定石です。

 

(2) Inの中身を見ると、nが増えるほど値が減少する関数だと分かります。なので、Inは単調減少する数列だと分かります。

 

この事実を使うと、In≦I1=1が分かるので、それと(1)の漸化式を利用してあげれば、求めたい不等式が求まります。右側に関しては、分母の形からIn+2を使いそうだと予想ができます。

 

<筆者の解答>

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