このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
10回目の今回は1997年になります。
第1問
放物線の交点に関する問題です。
C1がCpqの頂点(p,q)を通るのでq=p^2が即座に求まります。この下でもう1つの交点のx座標を計算し、そこでの接線の傾きが直交する条件からpをaの式で表現しましょう。
そのときにpが実数として存在できる条件が、aの求める条件になります。
<筆者の解答>
第2問
数列に関する問題です。答え自体は予想できるのですが、それをちゃんと論証できるかが問われています。
(1)akが1~2nの範囲なので、snの最小値がn, snの最大値が2n^2だと分かります。よって、sn=n^2は間違いなくこの条件を満たしています。
ここで、それ以外の平方数がこの範囲に収まっているかどうかを見ます。(n+1)^2と(n-1)^2の2つをチェックすれば十分です。
すると、この2つはn=1,2の時に範囲から外れることが分かります。問題文のnは「任意の自然数」と解釈できるので、一切の例外なく範囲内に収まる平方数はn^2しかありません。
とはいえ、このあたりの議論がモヤモヤするので、問題文が不親切なような気がします。
(2) sjの式からsjは単調に増加し、(1)で確かめたように最大値はn^2なので、(ロ)とあわせると、sj = j^2にしかなりえないことが分かります。
こうなってしまえば、ak=sk - sk-1でakの式が求まります。
<筆者の解答>
第3問
ベクトルを使った空間図形の証明問題です。
(1) ABとCDの長さを求めるには、OAとOBの内積、OCとODの内積の情報が必要なので、条件式を使って両者が等しい事を言いましょう。
A,B,C,Dが対称な条件になっているので、他の辺についても同じ性質が成り立っているので、実は四面体ABCDが「正四面体」になっていることが分かります。
(2)AB'CD'が長方形であることを証明しようと思ったら以下の2つを示せばOKです。
1. AB'=CD'かつAB'//CD', AD'=B'CかつAD'//B'C
→つまりベクトルとしてAB'=CD'かつAD'=B'C
2. ∠B'AD'=90°
1の方はOを始点として統一した表記に直す、2の方は内積を考えることで証明します。
問題ではそこまで求められていませんが、実は4辺の長さ全てが等しいことも言えるので長方形ABCDは正方形だったりします。
<筆者の解答>
第4問
連立方程式に関する問題です。
(1)方程式の形からa≧-1, b≧-1, c≧-1は明らかに分かるので、a>1と仮定すると矛盾が起こることを示します。a,b,cの大小関係に注目するとよいでしょう。
a>1が不適だとわかれば、対称性からb>1もc>1もNGだと分かります。
(2) 連立方程式の右辺を見てヒラメくとよいのですが、(1)の結果と合わせると実はa=cosθとすると、うまくいきます。こうすると、右辺が2倍角の公式になるのでb=cos2θ, c=cos4θとθの式で書けて、かつcos8θ=cosθまで分かってしまいます。
この方程式を解いてしまえば、0≦θ≦πの範囲で8個の解があることが分かります。
(0≦θ≦πに限定する理由は、この範囲ではaとθが1対1対応になって考えやすくなるからです)
方程式を解く際は、和積の公式を使って積の形に直すと見通しがよくなります。(cosθの8次方程式の形に直しても全く埒があきません)
<筆者の解答>
第5問
確率・期待値の問題です。
n回目の試行が終わった時に青がk枚ある確率をp(n,k)としたとき、E(n)=Σkp(n,k)とかけます。が、p(n,k)を直接求めて計算するのは難しそうなので、E(n)の漸化式を作れないかと考えます。
n回後に青がk枚ある状況で、n+1回目の操作で青の枚数が1枚増える確率と、青の枚数がそのままになる確率は簡単に計算できるので、それを使って式変形するとE(n)の漸化式を作ることができます。
あとはその漸化式を解けばお終いです。
<筆者の解答>
第6問
曲線の長さと面積を求める問題で、(1)は公式に代入して積分計算、(2)はx,yをtで微分して増減を調べる→Cの概形を見ながら面積を積分計算、するだけで解けてしまいます。
(2)の積分には(指数関数)×(三角関数)の形が登場しますが、この解き方には大きく3つあって、
1. 部分積分して同じ形を作る(ミスしやすいため非推奨)
2. 原始関数を逆算する(本回答)
3. オイラーの公式を使って指数関数の積分に一本化する(大学数学範囲。別解にて紹介)
です。どの方法もマスターしておくと今後便利でしょう。
<筆者の解答>