ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慶応理工数学 2018年

私立最難関の一角、慶應義塾大学理工学部の問題を取り上げます。今回は2018年の問題です。

第1問

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例のごとく、第1問は小問集合です。

 

(1) ここで登場している方程式は、x^2を境にして係数が鏡写しになっている、いわゆる「相反方程式」と呼ばれるもので、誘導にある通りにy=x+1/xと変換するとうまく解けます。そのためには、x^2 + 1/x^2をyで表現する必要があるので、yを2乗してみましょう。

 

(2) 対称式に関する問題です。3次式がxとyの対称式になっているので、s=x+yとt=xyという2つの基本対称式で必ず書くことができます。ここでxとyが両方実数になっている必要があるので、s^2 -4t ≧0がs,tの条件式になります。不等式を計算していくと分数が出てくるので、分母の正負によって場合分けが発生します。

 

(3)式の割り算に関する問題です。まず、x^3n -1 を因数分解することで、f(x)がx^n-1で割り切れることがすぐに分かります。よって、残った部分がx^3 -1で割り切れることを調べていきます。因数定理を使えばよく、x=1,ω, ω^2 (ω:1の3乗根のうち虚数になるもの)を代入して0になればOKです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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確率の問題です。

 

「1か2が出る」回数をa, 「3か4が出る」回数をb, 「5か6が出る」回数をc, と置くと、x=a, y=b-c と座標を書けるので、条件を満たす(a,b,c)の組の個数を考えるとよいでしょう。(1)~(3)はすべてこの手法で解くことができます。

 

(4)は、n-1回までにx=1に移動していて、n回目にx=2に移動すればよいので、n-1回目まででa,b,cの満たす条件を考えます。

 

(5) 「x=2を2回以上通る」よりも、「x=2を1回以下しか通らない」の方が数えやすいので余事象を考えます。

「x=2を1回以下しか通らない」は、1. ずっとx=1以下である、2. x=2についた直後にx=3に移動する の2択なので、それぞれ考えていきましょう。後者の確率を計算するときに(4)の結果を使えます。

 

<筆者の解答>

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第3問

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積分で書かれた数列についての問題です。

 

(1) n=1の時は、x=sinθと置換してもOKですが、円の面積を使うともっと楽に計算できます。漸化式の作成は、無理やり(x)'を作って部分積分します。

 

(2) (シ)の両辺にan-1をかければ、an×an-1の漸化式ができるのでそれを解きます。

 

(3)anの積分の形から、anは常に0以上1以下で、かつ単調減少することが分かります。さらに、(シ)を使うとan/an-1を下から押さえることができて、はさみうちの定理が使えます。

 

(4) anを√の中に無理やり突っ込んで、これまた無理やり(2) (3)の形を作ると極限計算できます。

 

<筆者の解答>

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第4問

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空間図形の問題ですが、計算処理が非常に長く、最後までたどり着くのが大変な問題です。詳細は答案を見て頂くとして、方針を簡単に説明します。

 

(1) (ソ)は内積の計算から容易に求まります。このように考えると∠AOPが常に一定値なので、Sが円錐の側面だと分かります。

その後は、AB上にある+S上にあるという2つの条件からCの式を計算し、問題文の条件をフル動員してOB・ODを求めます。

 

(2) これもQが、T上にある+S上にある という2条件を使って求めていきます。T上にある条件は、s+t+u=1です。

 

(3) Eは、定義からOQの長さが最小となる時のQです。(2)でs,tの関係式が求まっているので、1文字のパラメータでOQを表現することができるので、頑張って最小化しましょう。ここの最小化も工夫をうまくしないと泥沼です。

体積の方は、△OCDを底面にすると、Eから△OCDに下した垂線の足をHとすればEHが高さとなりますので、EHを頑張って計算すれば求まることになります。底面を△OCDにする理由は、直角三角形故面積が計算しやすいからです。

 

<筆者の解答>

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第5問

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妨害領域のある「最短経路」に関する問題で、問題文による誘導がなければ手も足も出ない難問です。誘導通りに計算をしていきましょう。

 

(1) Qの軌跡の処理は、特筆することはない基本問題です。円と直線の接する条件は、中心との距離を考えるのが簡便です。

 

(2) 極方程式で書かれた曲線の長さは、√(dx/dθ)^2+(dy/dθ)^2 の積分で求まり、x=f(θ)cosθ、y=f(θ)sinθ と書けるのでθだけの式で長さを表現できます。f(θ)に具体的な関数を突っ込んで積分を計算していくと、θ1の恒等式が出来上がります。そこからαとβを求めましょう。

 

面積は、x>0とx<0で分けて計算するとよいでしょう。x>0の面積は図を描けば簡単に分かりますが、x<0の計算には腕力が必要です。

 

<筆者の解答>

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