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2023年度 旧帝大+東工大+早慶理工+難関医学部 入試理系数学ランキング

国公立2次試験の前期日程が終わってから1週間になりますので、ここで総括を兼ねた個人的な難易度ランキングを発表します。

 

理系部門については、今年は医学部を中心に大学を拡充した結果、慈恵医科大、日医大、医科歯科大、京府医大の4つが新たにエントリーしています。

 

文系編:

2023年度 旧帝大+一橋+早稲田商 入試文系数学ランキング - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

第15位:東北大学

今年最も簡単なセットは東北大でした。差が付きそうなのは第6問(+第4問?)くらいで、残りの4問は確実に完答しなければならないレベルの平易な問題で、高得点が要求される、別の意味で難しい試験だったかと思われます。

 

第1問:確率の問題で、ルールを正しく把握し状況に合わせてしっかり場合分け出来れば容易い問題です。文系第1問との共通問題でした。

 

第2問:三角関数の方程式の解に関する問題で、(1)はsinxだけの式に直して因数分解、(2)はp(m)を不等式評価してはさみうち、という方針が立ちやすく遂行も平易な問題です。

 

第3問:漸化式の問題で、東北大を受験するレベルの受験生であれば普通に解けて欲しい難易度の漸化式です。

 

第4問:多項式の割り算と虚数解に関する問題で、このセットの中ではやや難しめの問題です。ただ、誘導にうまく乗って解の配置を複素数平面で考えてあげれば片が付きます。

 

第5問:空間ベクトルの問題です。工程こそ長めですが、基本に忠実にベクトル表示の導出を繰り返していけば最後まで行けます。

 

第6問:線分の通過領域に関する問題で、今回のセットの中で最も差が付きやすい問題だと思います。通過領域自体は比較的簡単に求まりますが、その後の面積計算がかなり面倒です。文系第4問では本問の廉価版が出題されています。

 

第14位:東京慈恵会医科大学

14位は慈恵医科大です。例年の傾向通り、私立医学部御三家の中では最も難易度の低い出題です。

 

第1問:整数問題の色彩の濃い確率の問題です。ア、イとも方法は違えど整数問題としては定番の絞り方を行えばよいです。

 

第2問:微分方程式と面積の極限計算の問題で、誘導に従って解いていけば発想も難しくなく解けます。

 

第3問:無理性の証明問題で、このセットの中ではやや難の問題です。背理法の考え方で仮定を置いて検討すると、無限降下法により矛盾が示せます。平方数を3で割った余りがキーポイントでした。

 

第4問:空間内の2直線の交点に関する問題です。(1)(2)いずれも方針は立ちやすいですが、要領よく計算を進めていく必要がありやや難です。

 

第13位:大阪大学

13位は阪大です。ここ数年は一時期に比べると阪大は本当に簡単になりました。感覚的には京大とほぼほぼ同率ですが、最難問が阪大の方が易しめだと判断しこの順位になりました。

 

第1問:不等式評価して極限を評価する問題です。(1)については典型問題ですが、(2)では(1)をどう使うか少し悩むかもしれませんね。

 

第2問:ベクトルの処理に関する問題で、基本に忠実に大きさと内積を考えて、とやっていけば解ける問題です。文系第3問との共通問題でした。

 

第3問:定点から引いた接線の個数に関する問題です。接点のx座標に関する関数の形状を調べる問題に帰着させればよいわけですが、aの値による場合分けが若干多めです。

 

第4問:ベクトルを用いた軌跡の問題です。(1)は平面に対する垂線の足について調べる典型問題で、(2)は(1)の結果を利用すればごり押しで何とかなります。

 

第5問:確率の問題で、このセットの中では最難問だと個人的には思いました。この手のサイコロの目と7で割った余りの紐づけをする問題は、一橋大の2013年第5問でも出題されていて、1対1の対応になってることに気付くことが重要です。

 

第12位:京都大学

12位は京大です。ここ数年は一時期に比べると京大も本当に簡単になりました。感覚的には阪大とほぼほぼ同率ですが、最難問が京大の方が難しめだと判断しこの順位になりました。

 

第1問:例年通り小問集合です。

(1)は定積分の計算問題で、先頭のルートを消したいという思いになれば変数変換は容易で計算もさほど難しくありません。

(2)は多項式の割り算に関する問題で、因数定理を使う際に1の5乗根を使う必要があり、意外と面倒です。

 

第2問:空間ベクトルに関する問題で、とにかく問題文の条件を整理して比を調べればよいだけの平易な問題です。文系第2問との共通問題でした。

 

第3問:確率の問題で、こちらも平易な問題です。(2)ではベン図を活用すると見通しよく解けます。

 

第4問:関数の最大最小を調べる問題で、考える関数は見た目こそ威圧感がありますが、所詮g(x)+1/g(x)の形でしかないため、結局g(x)の増減を調べればよいというのは難しくないですね。

 

第5問:立体の体積を計算する問題で、本セット最難問と思われる問題です。どちらかというと東大で出そうなタイプの問題です。xz平面に線分を固定して通過領域を調べて、それをx軸の周りに回転すればいい、という方針が立てられればそれを只管実行するのみです。

 

第6問:cosの多項式に関する問題で、「チェビシェフ多項式」が背景にある問題です。(1)はただの公式証明なので完答必須ですが、(2)は上記のチェビシェフ多項式の背景がないと方針が立てにくいかもしれませんね。

 

第11位:早稲田大学理工学部

11位は早稲田の理工です。簡単そうに見えて意外と考えにくい箇所がある、そんな印象のセットです。

 

第1問:多項式の割り算の余りの係数に関する問題で、意外と方針決めに困る問題だったりします。特に山場は(2)です。

 

第2問:確率の問題で、いくつか実験すると法則性が見えてくる、というタイプの問題です。

 

第3問:逆関数同士の交点に関する問題で、やることも単純なのでこのセットでは必ず完答すべき問題です。

 

第4問:複素数平面の問題です。誘導に乗っていけばいいのですが、意外と計算が面倒です。

 

第5問:回転体の面積の問題で、誘導に乗っていけばよいのですが、こちらは立体のイメージがある程度できていないと解き進めるのは難しいかもしれません。

 

第10位:九州大学

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10位は九大です。九大としては平年並みの難易度ですが、意外と着眼点が難しかったり作業が多かったりするセットです。

 

第1問:4次方程式と複素数平面に関する問題です。私はこれを最初小問集合だと認識していたのですが、実は密接な関連があることが後に分かった次第です。

(1)は相反方程式の形なのでx+1/xの2次方程式に帰着させるという定番解法が存在しています。(2)は対称性が高い式なので正三角形だと当たりを付けてそれを確かめに行く解法と、角度を複素数で設定して(1)の方程式に帰着させる解法があります。

 

第2問:数列の収束発散を調べる問題ですが、(4)の検討がやや難しいかと思います。anが1以下になった瞬間に以降の値が全て0になるのがポイントでした。

 

第3問:1次変換に関する問題で、「行列」の知識があると取り組みやすい問題です。が、(3)は経験がないと思いつかない代物で難しいと思います。文系第3問で同一の題材を使った問題が出題されています。

 

第4問:加法定理を満たす関数を調べる問題で、共通テストじみた読み取り型の体裁をとっています。誘導に乗ればいいのですが、とにかく計算が長い上に同じような作業の繰り返しなので退屈になりかねない問題です。

 

第5問:パラメータ表示された曲線に関する面積の問題で、九大では頻出のテーマです。典型問題なので、ぜひ押さえておきたいです。

 

第9位:慶応義塾大学医学部

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9位は慶応大医学部です。慶応医にしてはかなり易しめなセットです。とはいえそれでも時間制約は厳しく、全問穴埋め式であること特有のミスのしにくさを考慮してこの順位としています。

 

第1問:例年通り小問集合です。

(1)三角形の線分の長さに関する問題で、余弦定理の利用は思いつきやすい所です。

(2)複素数平面に関する問題で、解と係数の関係を利用すればいい問題です。

(3)面積の計算問題で、接線の式の導出も面積計算も至って典型的です。

 

第2問:確率の問題です。各問についてan, bnをきちんと考察すればさほど難しくありません。

 

第3問:接線を次々作っていく問題で、漸化式を立てて解いていけばよいです。(4)の鋭角三角形の条件は内積を使うと楽に進みます。

 

第4問:接する円の配置を考える問題で、本セット最難問です。とはいえ、図を丁寧に書いて相似などのアイテムを適切に使っていけば、時間さえ度外視すれば解き切れるかと思います。

 

第8位:日本医科大学

8位は日医です。日医らしく計算遂行が面倒な問題が揃ったセットになっています。

 

第1問:放物線の確率の融合問題で、P,Q,Rの配置を正しく調べ尽くせるかがカギになります。

 

第2問:2つの球面の交線に関する問題です。(4)での「高さ」の取りうる値をどう調べるかが悩みどころになります。

 

第3問:多項定理に関する極限の問題です。このレベルの受験生であれば多項定理については突破したい所ですが、(4)の極限計算はかなり面倒です。

 

第4問:立体の体積に関する問題で、立体のイメージが難しめな本セット最難問です。断面を如何にして考察するかがキーポイントになりました。

 

第7位:名古屋大学

7位は名大です。こちらも日医同様、最後まで遂行しきるのが難しいタイプのセットでした。文系との共通問題はありませんでした。

 

第1問:4次方程式と点の存在領域に関する問題で、誘導も丁寧で(3)も解と係数の関係を利用することは思いつきやすいです。全体の難易度考えるとこの問題は是非とも仕留めたいです。

 

第2問:回転体の体積に関する問題で、(3)までは比較的簡単に解けます。問題は(4)で、V(r)の微分計算を最後までやりきるのがかなり大変です。

 

第3問:関数の交点の個数を調べる問題で、方針は(1)~(3)まで単純ではあります。ですが、極値の符号判断がかなり難しいです。定数分離を使って解く方法と使わない方法とがありますが、後者を採用すると評価こそ大変になりますが(1)がうまく利用出来て綺麗に感じます。

 

第4問:2項係数と類似の値についての性質を調べる問題で、実質恒等式の処理の様相を呈しています。(3)でxのk次の係数を比較しよう、と考えが回ればさほど難しくありません。

 

第6位:東京医科歯科大学

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6位は医科歯科です。第1問の特異性こそ光りますが、第2問以降は実は典型問題です。が、第1問の難しさを鑑みてこの順位です。

 

第1問:折れ線の個数を調べる問題です。(2)までで実験をすることでいくつかの性質に気付かないと(3)以降が解けません。要所要所で場合分けが必要なことも相まって試験場では難しい問題だと思います。

 

第2問:空間内の点列の極限の問題です。kの偶奇で場合分けして漸化式を解いて、極限を飛ばす、とやること自体は単純です。工程は長いですが。

 

第3問:微分方程式の問題です。与式が直接積分計算できる形になっていることに気付ければ(1)は容易に解けます。(2)は連立方程式を解けばよいのですが、意外と難儀する連立方程式です。

 

第5位:慶応義塾大学理工学部

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5位は慶応理工学部です。今回は時間が足りないだけでなく、単純に問題の難易度自体も上がってる厳しいセットでした。それでいて穴埋めがメインなのでその難しさも上乗せされます。

 

第1問:微分の定義・平均値の定理に関する問題です。この手の定義や定理にどれだけ親しんでいるかが問われる問題でした。

 

第2問:空間内の台形に関する問題です。この問題は(3)の平面がイメージしにくく難しいでしょう。

 

第3問:確率の問題で、慶応らしくとても複雑なルールです。基本的に樹形図を使ったごり押しで解くほかなく、特に(3)のサは全ての場合を列挙することが極めて困難な捨て問レベルの難問です。

 

第4問:不等式評価と積分で書かれた数列に関する問題です。(1)と(2)以降が事実上独立してて別々の思考が必要になります。(2)以降は誘導にうまく乗っていけばさほど難しくありませんが、(1)が絶対値が付いている故に意外と難しいです。

 

第5問:今年はここで小問集合が出題されました。

(1)複素数平面の問題で、方針立ては難しくないものの計算を最後まで遂行するのが面倒です。

(2)こちらは打って変わって典型的な整数問題なので、今回のセットでは完答必須でしょうね。

 

第4位:北海道大学

4位は北大です。昨年に引き続き上位ランクに食い込んできました。かつての京大阪大のポジションを脅かす大躍進で、もはや「旧帝大で一番簡単」という固定観念は捨てた方が良さそうです。今後しばらくは難化傾向が続くのかもしれませんね。

 

第1問:複素数平面上の円に関する問題で、こちらは中心と半径の漸化式を立てて解く形です。(2)についてはnの値によってdnの値に場合分けが発生することに注意が必要です。全体を考えると、この問題は落とせません。

 

第2問:平面と球面との交線に関する問題です。こちらは典型的な空間図形の問題であり、これも今回は落とせない問題です。

 

第3問:関数の増減と方程式の問題です。今回のセットではこの問題がちょうど合否を分けるぐらいの問題かと思います。(1)でのグラフの増減を利用して(2)以降も考えていきます。

 

第4問:絶対値の和に関する確率の問題で、文句なしに本セット最難問です。(1)は力づくで調べれば何とかなりますが、(2)は論証が非常に難しく本番では捨て問にすべきだと思います。(3)は(2)の結論を決め打ちしてしまえばまだ対抗可能ですが・・・文系第3問でもほぼ同じ内容が出題されています。

 

第5問:円と接線に関する点が1直線に並ぶ条件に関する問題で、こちらは解法選択を誤ると泥沼に嵌るタイプの難問です。(1)の段階でf(θ)を微分しても綺麗に符号が調べられないと見切ることが大事です。(3)はそのf'(θ)の符号を実質評価する問題で、非常に難しいです。

 

第3位:京都府立医科大学

3位は京府医です。やはりというか最後まで解きにくい類の問題が揃っていて、特に第1問は飛びぬけて難しいですね。

 

第1問:凸多面体という見慣れない空間図形を考察する問題で、文句なしに本セット最難問です。本番では一番最後に後回しにするなり捨てるなりするのが賢明だったかと。

(1)は展開図を考えてしまえば解け、(2)もそれを組み立てることで何とかなりますが、(3)は頭の中でしっかりと立体がイメージできないとかなり難しいです。(4)は積分ではなく初等幾何的に解いた方が楽に計算できます。

 

第2問:パラメータ表示された曲線における接線の問題で、(1)については確実に解けるべき問題です。(2)については、「近似操作」にある程度慣れてないと証明は難しいです。

 

第3問:複素数の漸化式の問題で、(2)までは解いておきたい問題です。(3)についてはkの恒等式を考えるのですが、ある条件を見落としがちになります。

 

第4問:焦点を共有する楕円と双曲線に関する問題です。こちらは本セットの中では一番良心的で解きやすい問題かと思います。

 

第2位:東京工業大学

2位は東工大です。第1問を除いて、方針立てが難しい問題はあまりないのですが、とにかく検討に時間がかかるという質より量な問題なイメージの問題が揃っています。

 

第1問:積分値の整数部分を求める問題で、本セット最難問だと思います。誘導も何もないため方針立てが難しいです。それができたとしても結局試行錯誤で評価していかないといけないので、時間制限のある試験場で解き切るのは現実的ではないです。

 

第2問:整数問題で、今回のセットでは一番解きやすい問題です。連続3整数の積が6の倍数であることに注意できれば、よりシンプルな整数問題に帰着できます。

 

第3問:複素数を絡めた確率の問題です。各操作で出来上がる複素数の絶対値と偏角を調べて各問で使い分けることが肝要です。合わせて(1)では場合の数を調べて解く、(2)では確率漸化式を立てて解く、と方針も2分されます。

 

第4問:立体の体積の計算問題です。立体をイメージしてまずは断面を描くことが肝心です。そうして断面積を調べて積分するお決まりの手順ですが、積分計算がかなり面倒です。

 

第5問:直線に接する球面を調べる問題で、4種類の各直線と等距離にある点の座標を調べると、方針は単純なのですが、とにかく計算が長いの一言です。

 

第1位:東京大学

栄えある第1位は、東大です。

今回の東大のセットを一言でいえば「手は付けやすいが完璧に完答しきることが難しい」です。各問題1つ1つの威圧感が大きく手を付けにくかった昨年とは違って、手は動きやすく最後まで行ける気がする問題が多めです。が、ところどころ落とし穴が用意されていて、実は完答しきれていなかった、なんてことが多発するいやらしいセットです。それとは別に第6問は完全なる捨て問なのですが・・・

 

第1問:積分の極限計算の問題です。(1)で不等式を作って、はさみうちで(2)を解くという方針を立てやすいです。(1)の不等式評価は、いくらか経験を積んでいれば比較的思いつきやすいものです。今回のセットではぜひとも仕留めたい問題です。

 

第2問:確率の問題です。(1)はこのレベル帯の大学であれば標準的な難易度で、(2)も同じ調子で考えでばいいのですが、(2)についてはダブルカウントの有無などを慎重に調べる必要があります。文系第3問との共通問題でした。

 

第3問:円の接線の放物線によって切り取られる長さに関する問題です。(1)は確実に抑えたいですが、(2)はうまく文字設定して進めないと計算地獄に嵌ります。うまくいったとしてもそもそもの計算量が多めです。

 

第4問:空間内の三角形と球面との共有点に関する問題です。(2)までは確実に抑えたい基本的なベクトルの問題ですが、(3)は落とし穴もあって考えにくいです。基本的に三角形の各頂点が球の外にあるか中にあるかを検討すればいいのですが、前者の場合はそれでも交点を持ってしまう例外が存在することを見落としやすいです。

 

第5問:多項式の割り算の余りに関する問題です。整数の合同式に類似している(1)は確実に解いておきたい所です。(2)については実質{ h(x) }^49 -h(x)がf(x)で割り切れる条件だと言い換えられるかが勝負です。

 

第6問:立体の体積の問題で、立体のイメージが非常に難しい超難問で、今回は捨てるべき問題です。(1)は実は初等幾何の知識で解き切れてしまうのですが、立体のイメージが正確にできてないとそれも不可能です。(2)に至ってはWで新規に発生する領域が何かの把握も困難で、なおかつ体積計算も新規性の高い作業が多く厳しいです。

 

 

ということで、理系編のランキングでした。今年も受験お疲れさまでした。