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2023年度 旧帝大+一橋+早稲田商 入試文系数学ランキング

国公立2次試験の前期日程が終わってから1週間になりますので、ここで総括を兼ねた個人的な難易度ランキングを発表します。

 

文系部門は、今年は早稲田大学商学部が新たにエントリーしています。

 

理系編:

2023年度 旧帝大+東工大+早慶理工+難関医学部 入試理系数学ランキング - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

第9位:東北大学

今年最も簡単なセットは東北大でした。全体的な難易度が低いため高得点が要求される、別の意味で難しい試験だったかと思われます。

 

第1問:確率の問題で、ルールを正しく把握し状況に合わせてしっかり場合分け出来れば容易い問題です。理系第1問との共通問題でした。

 

第2問:円の接線に関する問題で、図を描いて三平方の定理、相似、三角比、といった知識を総動員して解いていきますが、難易度は低めです。

 

第3問:2次関数の最大最小に関する問題で、きちっとaの値で場合分けができていれば解ける問題でした。

 

第4問:線分の通過領域に関する問題です。通過領域自体が比較的簡単に求まり、面積計算もさほど難しくありません。理系第6問ではf(x)の形状をより複雑にした上位互換な問題が出題されています。

 

第8位:大阪大学

8位は阪大です。例年通り阪大の文系は易しめのセットです。

 

第1問: 方程式が実数解を持つ条件を図示する問題で、sinθの2次方程式に帰着させれば典型問題になります。

 

第2問:対数を含んだ関数の最大値を求める問題で、(1)でただの3次関数に帰着できるので(2)で微分で増減を調べます。但しaの値による場合分けが発生することには注意が必要です。

 

第3問:ベクトルの処理に関する問題で、基本に忠実に大きさと内積を考えて、とやっていけば解ける問題です。理系第2問との共通問題でした。

 

第7位:京都大学

7位は京大です。ここ数年は一時期に比べると京大も本当に簡単になりました。感覚的には阪大とほぼほぼ同率ですが、最難問が京大の方が難しめだと判断しこの順位になりました。

 

第1問:例年通りの小問集合問題です。

(1)確率の問題で、京大史上最も簡単な出題と言っても過言じゃないです。これができない人は、流石に京大に挑戦する資格はないでしょうね。

(2)3乗根に関する分母の有理化をする問題で、これは意外と経験がないかもしれません。3乗根の部分をbとして、出来るだけb^3を作りたいという発想で考えると、分母を1次式で因数分解して、3乗の因数分解の公式になるように相方の2次式をかければいい、と思いつけるかもしれません。

 

第2問:空間ベクトルに関する問題で、とにかく問題文の条件を整理して比を調べればよいだけの平易な問題です。理系第2問との共通問題でした。

 

第3問:正五角形の1辺の長さを評価する問題で、このセットの中では最難問だと思います。(1)は公式証明なので流石に完答すべきですが、(2)は文系用の問題であることを考慮すると難しい部類でしょう。sin36°の値を(1)の結果を使って評価するのがポイントです。

 

第4問:漸化式に関する問題で、Snは差を取ることでanにできる、という知識でSnを漸化式から消すという定番解法を使えばよいでしょう。地味にnの範囲については注意を払う必要はありますが。

 

第5問:積分方程式の問題で、定積分の部分を定数の文字でおいて連立するという方針立ては容易でしょう。ただ、その連立方程式を解くのが少し面倒ですね。

 

第6位:九州大学

6位は九大です。九大としては平年並みの難易度ですが、意外と着眼点が難しかったり作業が多かったりするセットです。

 

第1問:面積が等しい条件を調べる問題です。各々の面積を直接計算することなくいきなりS1-S2=0で検討できたかが明暗を分けます。

 

第2問:3次関数の接線が絡んだ三角形の外心に関する問題です。この問題は(3)を解くにあたって(2)が華麗な誘導になっていることに気付けるかがポイントです。

 

第3問:ベクトルの問題で本セット最易問です。ベクトルを成分表示してしまえば単なる連立方程式ですし、(2)の結果を使えば(3)も容易です。理系第3問ではもっとテーマを膨らませた出題がされています。

 

第4問:複素数を絡めた確率の問題で、複素数平面の理解と確率漸化式の理解の両方を要求される難しめの問題で、かつ良問です。ωが複素平面上で120°回転を表していることに注意してznの変化の仕方を丁寧に追って漸化式を立てていきます。

 

第5位:名古屋大学

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5位は名大です。こちらは最後まで遂行しきるのが難しいタイプのセットでした。理系との共通問題はありませんでした。

 

第1問:接する3次関数と2次関数を図示する問題で、2通り候補がある中のどっちを先に検討するかがメンタルに影響を与えかねない、というちょっと運ゲー臭い問題です。

 

第2問:立方体の対角線に関する問題で、底面等注目する図形を的確に決められればスムーズに進む問題です。

 

第3問:確率の問題で、ルールを的確に把握する必要がある難問です。最初の5回は球の種類によらず必ず1枚ずつ減っていくことに気付くことが重要です。(2)では「並び替え」の場合の数の問題に帰着できると楽です。

 

第4位:東京大学

4位は東大です。今年の東大文系は比較的解きやすいセットだったと言えます。

 

第1問:2次方程式の実数解を使った関数の最小値を調べる問題です。明らかに解と係数の関係を使ってkの関数に帰着させて解くことが見え見えなので、今回のセットでは落とせません。

 

第2問:絶対値付きの積分に関する問題です。aの値でちゃんと積分区間を場合分けして区切れれば標準的な問題です。できればこの問題も抑えたいです。

 

第3問:確率の問題です。(1)はこのレベル帯の大学であれば標準的な難易度で、(2)も同じ調子で考えでばいいのですが、(2)についてはダブルカウントの有無などを慎重に調べる必要があります。理系第2問との共通問題でした。

 

第4問:四面体の体積を求める問題です。補助線を引いて三角形を作って色々と長さを計算していけばいいのですが、(1)は確実に解くとしても(2)は結構工程が長いです。

 

第3位:一橋大学

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3位は一橋です。今年は一橋も例年に比べるとかなり易しめと言えるセットです。実質東大と同率ですが、最難問の難易度がこちらの方が難しいと感じたためこの順位です。

 

第1問:2項係数の方程式の問題です。2項係数を元の階乗の式に直してn,kの2次式にしてあげれば、よくある整数問題になります。

 

第2問:共通接線に関する問題です。3次関数の接線を式にして2次関数に接する条件を考えるのが定石ですね。

 

第3問:四面体の体積に関する問題です。結局Pのz座標の範囲が分かればよいので、Pの条件式を整理してそれを調べることに注力します。

 

第4問:2変数漸化式に関する問題で、本セット最難問です。というより、このセットで堂々と難問と呼んでいいのはこれだけだと思います。図をよく見てf(m,n)の規則性を把握することが肝要で一般項を作れますが、(2)のm,nの特定はそれでも難しいです。

 

第5問:確率の問題で、きちんと状況を整理できれば比較的簡単に解けます。

 

 

第2位:北海道大学

2位は、北大です。

今年は、他の文系のセットが軒並み易しめだったという点を差し引いたとしても、まさか北大が最上位クラスになるなんて誰が想像したでしょうか。今までの北大文系では考えられない高難易度の出題で、もはや「旧帝大で一番簡単」という固定観念は捨てた方が良さそうです。今後しばらくは難化傾向が続くのかもしれませんね。

 

第1問:関数方程式の問題で、これは実質因数定理の活用と恒等式処理の問題です。全体を考えると、この問題はぜひ仕留めたいです。

 

第2問:傍心のベクトル表示に関する問題で、(1)は完答すべきですが(2)は難しいです。傍心というマイナーな概念について扱っているため、実質初見で1から解法構築する必要があります。

 

第3問:絶対値の和に関する確率の問題で、文句なしに本セット最難問です。(1)(2)は力づくで調べれば何とかなりますが、(3)は論証が非常に難しく本番では捨て問にすべきだと思います。理系第4問でもほぼ同じ内容が出題されています。

 

第4問:接する円と放物線に関する問題で、こちらは接線が一致することを確かめる標準的な問題です。今回のセットでは落とせない問題です。

 

第1位:早稲田大学商学部

栄えある第1位は、早稲田商学部です。文系のセットとしては相変わらずのトップクラスの難しさで、総合的な難易度で抜きんでています。圧巻の優勝です。

 

第1問:例年通りの小問集合です。

(1)面積の不等式評価の問題です。台形の面積をΣ公式で足し合わせるまではよいと思いますが、その後「指数関数が1次式に対して圧倒的に強い」という数Ⅲチックな考え方が必要になります。

(2)三角形の内接円に関する問題で、正弦定理を使って三角形の各辺を求めれば内接円半径がm,nが求まるのですが、実はm,nの値が具体的に絞れることに気付かないといけません。

(3)積分に関する問題で、偶関数・奇関数をうまく利用することで計算がスムーズに進みます。

(4)格子点に関する確率の問題で、本セット最難問です。頂点として考えられるが、2×2×2の立方体に含まれる格子点27通りなのですが、ここから正三角形になる例を漏れなく見つけるのがかなり難しいです。

 

第2問:球に内接する四面体の体積に関する問題です。ベクトルの式を考えることで線分の比が分かるので、それを利用して体積計算し、微分で増減チェックするという1本道の問題です。

 

第3問:整数問題で、7で割った余りと13で割った余りを合わせて考えていく必要があります。余りを検討する計算もかなり量が多く面倒です。

 

 

ということで、文系編のランキングでした。今年も受験お疲れさまでした。