ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 慶応医学部数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、慶應義塾大学の医学部に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1(1): 三角形の線分の長さ (5分)

1(2): 複素数平面(10分)

1(3): 曲線の接線と面積 (5分)

2: 確率 (40分)

3: 接線に関する漸化式、軌跡・面積(30分)

4: 互いに接する複数の円の配置(60分)

計150分

 

<体感難易度>

1(3)<1(1)<1(2)<3<2<4

 

昨年に比べると難易度は低下した印象ですが、それでも計算量が多く時間がかかってしまうセットですね。

小問集合の第1問はすべて完答したい所であり、できれば第3問も仕留めたい所です。第2問については発想は難しくないですが時間がかかり、(5)は特に手間がかかります。

第4問も計算量がかなり多いので、(3)以降は時間内に間に合わないと思いますね。

 

<個別解説>

第1問

小問集合です。

 

(1)三角形の線分の長さに関する問題です。

線分の2乗ばかりの式になっているので、左右2つの三角形で余弦定理を使ってcosをけせばよさそうだと、思いつけるでしょう。

 

(2)複素平面に関する問題です。

PQの長さは|β-α|で、PQの中点は(α+β)/2で、PQの傾きはβ-αの偏角を調べれば事足ります。

ただ、β-αを計算する際に「虚数平方根」が登場するので、そこが少し考えにくい所でしょうかね。

 

(3)曲線の接線と面積の問題です。

接線については教科書通りの計算でよく、2回微分することでCが下凸の単調増加なグラフだと分かります。

これに基づいて積分計算で面積を求めていけばよいですね。logについては部分積分でもよいですが、今回はx^2+1=tと中身を置換したほうが早かったと思います。

 

<筆者の回答>

 

第2問

確率の問題です。

 

(1)a1=2となるのはAが2連勝するとき、a1=1となるのは、AとBが1勝ずつして最後にAが勝つときです。

 

この段階で、1セットの中で起こり得る結果を列挙しておくと、

a: Aが2点勝ちしてBは全敗で負け(0点)

b: Aが1点勝ちしてBは1勝で負け(0点)

c: Bが2点勝ちしてAは全敗で負け(0点)

d: Bが1点勝ちしてAは1勝で負け(0点)

の4つだけです。

(1)の結果から、この4つが等確率でかつ互いに排反な事象であることが、(2)以降を解いていくカギとなります。

 

(2) 上記のa~dを重複を認めてn個並べたとき、aとbがそれぞれ2個だけ含まれるような並べ方を考えてあげればよいですね。

 

(3) bn=0ということは、nセットの中でaとbしか起こりえないことが分かり、an=n+2となるのは、このうちaが2回、bがn-2回起こる場合に限られます。

 

(4)an=2ということは、aが1回でbが0回、またはaが0回でbが2回、の場合しかありえません。

 

(5) an>bnの場合を直接考えようとすると、考える範囲が広すぎて難しいです。なんとか工夫して考えやすくします。

 

設定上AとBが互角の実力なので、an>bnとなる確率とan<bnとなる確率は等しいことになります。ということは、「an=bnとなる確率を出して、それを1から引いて2で割れば」an>bnとなる確率が計算できることになります。

 

an=bnであれば条件を絞りやすいので、こうなる確率の算出に注力しましょう。

これを考える際、Aの勝ち数とBの勝ち数の和が必ず4になることに注意する必要があり、これによって、anの取りうる値を絞り込むことができます。

 

<筆者の回答>

 

第3問

接線に関する漸化式、軌跡・面積に関する問題です。このような接線を繰り返し作る問題、確か過去にも慶応で(理工の問題だった気がしますが)出題されていたような気がします。年度は忘れちゃいましたけど。

 

(1)(2)

ルールに基づいてanの漸化式を作って解けばよいでしょう。漸化式はシンプルな等比数列の形になります。

 

(3)重心の座標をa1だけの式で表して、最後にa1を消去してあげれば軌跡が求まります。

 

(4)鋭角三角形であることの条件は、大きく「長さの大小で検討」「角度で検討」の2つの切り口があります。

今回はせっかく各頂点の座標がシンプルなa1の式で書けていて、角度が90°より大きいか小さいかが内積の符号で即座に判定できるので、後者の戦略で行きましょう。

 

(5) S1は簡単に計算できますが、S2を直接計算するのは大変です。ここは図形的に計算しやすいS1+S2から間接的にS2を調べることにします。

 

<筆者の回答>

 

第4問

互いに接する複数の円の配置に関する問題です。

 

(1)まずは、P,Q,Rの座標を慣れ親しんだデカルト座標で表現することが第1歩です。

 

あ:PQ=PRを利用して解きます。

 

い:三角形の相似を使うと、先にtとθの関係式が求まり、t=tan(θ/2)という結果が得られます。

これは三角関数の混じった分数関数の積分をするときに頻出する変換式で、sinθ、cosθ、tanθを全てtだけの式で表現できるので、それを利用して「あ」からθを消去してあげましょう。

 

(2)「あ」の結果を使うことで面積がθだけの式で表現できるので、θで微分して増減を調べるとよいです。(tの式で面積を書いてtで微分するのもありですが、かなり式が重たくなります)

 

(3)C3はx軸対称の円になるので、中心Tはx軸上に乗ります。この知見を利用すると、まずC3が左側でC1に内接することからTの座標が求まり、さらにC2に外接することから、PT=(C2の半径)+(C3の半径)となることが分かります。

この関係式を変形することでbが計算でき、想像以上にシンプルな式になります。

 

(4)外周の和Lをtの式で求めて、tで微分することで増減を調べていきますが、かなり計算が大変です。

 

<筆者の回答>