ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 早稲田理工数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、早稲田大学理工学部に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1:  多項式の割り算の余りの係数 (40分)

2:  確率(35分)

3:  逆関数となる2つの曲線(15分)

4:  複素数平面(45分)

5:   回転体の体積(45分) 

計180分

 

<体感難易度>

3<2<1<4<5

昨年に比べると方針の立てやすい問題が多く、易化した印象です。ただ、それは昨年が難し過ぎた故の易化判断であり、早稲田理工のセットとしては例年並み(より少し難しめ?)という感じです。

 

第1問は意外と(2)の方針が立てにくい整数問題で、第2問の確率も若干思考力が必要です。第3問は突出して易しい問題なので確実に完答が必要な問題だと思われます。第4問は計算こそ面倒ですが、方針自体は至って標準的な複素数平面の問題です。第5問は、誘導にうまく乗って進めていけばよいですが、(3)で場合分けが発生することに注意が必要です。

 

<個別解説>

第1問

多項式の割り算の余りの係数に関する整数問題です。

 

(1) (3x+2)^n = (x^2+x+1)Qn(x)+anx+bnとして両辺に3x+2をかけて、余りの部分をさらにx^2+x+1で割ればよいです。

 

(2)意外と方針が立ちにくい小問です。

「割り切れないことを示せ」という問いなので、背理法を使って示すのでは?と想像が付きます(実は帰納法でも証明できるのですが、初見では思いつきませんでした。。。)。

 

そうなると、よくある論法が「ak+1, bk+1が7の倍数と仮定すると、それ以前の項も全て7の倍数になるが、初項が7で割り切れないので矛盾する」というものです。(3)の先取りでak, bkをak+1, bk+1で表現して考えようとしますが、この方法だとak, bkが7の倍数だと示せないため、行き詰まってしまいます。それ以前に、ak+1とbk+1は「同時に7で割り切れる」ではなく「少なくとも一方が7で割り切れる」なので、論法としても破綻しています。

 

この壁にぶち当たってかなり悩んでしまいました。ここは、漸化式を使わずに、直接(3x+2)^n = (x^2+x+1)Qn(x)+anx+bnという恒等式を利用できないかと考えました。

 

幸いにして、帰納的にQn(x)は整数係数の多項式、特にxが整数ならQn(x)が整数だと言えるので、そこを突破口にします。

つまり、x^2+x+1が7の倍数になるようにxを選んで、3x+2が7の倍数になる場合とならない場合で議論すればよさそうだということになります。

 

具体的にはx=4の場合とx=-3の場合を考えることで、anとbnは「両方7の倍数」になるか「両方7で割り切れない」の2択しかありえないことが示せます。あとは、前者の場合が矛盾することを示せれば、題意が示せたことになります。結果、これでうまくいきました。。。かなり寝技に近い解法になってしまいましたね。

 

一通り解き終わって、twitterで他の人の解答を見ていると、帰納法を使ったシンプルな別解が上がっていました。その別解についても紹介します。

 

小さいnで実験すると、anを7で割った余りは常に3, bnを7で割った余りは常に2であることが予想できるので、それを帰納法で証明する、というのが別解の肝です。

 

言われてみれば、「何で思いつかなかったんだろう・・・」という解法でしたね。ちょっと悔しい。

 

(3)こちらは解法を思いつきやすいと思いますし、最悪(2)の結論ありきで証明することができます。

an, bnをan+1, bn+1で表すと、両方(整数)/7の形になります。an+1, bn+1がもし共通素因数pを持つとすれば、(2)の結果からp≠7が分かっているのでpは7で約分されることなく生き残り、結果an, bnも両方pで割り切れることになります。

 

この議論を繰り返すことでa1, b2もpで割り切れることになりますが、実際にはa1, b1は互いに素なので矛盾、という背理法になります。

 

<筆者の回答>

(2)別解

 

第2問

確率の問題です。

 

(1) n=1,2の場合は状況を考えれば容易に計算でき、両方ともkによらず確率は一定という結果になります。この時点で、nが一般の場合も、Pn(k)はkによらず一定なのでは?と予想できます。

 

次に考えるべきは、当然漸化式ですね。

赤が出るたびに赤の個数が1つずつ増え、同じく黒が出るたびに黒の個数が1つずつ増える、という規則性に注意して、「n回目に赤と黒のどっちが出るか」で場合分けすることで漸化式を作ることができます。

 

この漸化式を使って、数学的帰納法で先の予想を証明すればよいでしょう。

 

(2)玉の増え方に注意して、実際にQn(k)を計算していけばよいです。k=1の場合とk=nの場合だけ個別に例外処理する必要はありますが、結果としてkによらず全部同じ値になります。

 

<筆者の回答>

 

第3問

逆関数となる2つの曲線に関する問題で、今回のセットの中では突出して簡単な問題です。確実に完答すべきです。

 

(1) g ( f(x) )=xとなっていれば、f(x)とg(x)は逆関数の関係となるので、これを示せばよいです。

 

(2) h(x) =e^(x-2) -xとしたときに、h(x)=0の実数解の個数が2つあることを示せばよいわけです。h(x)を微分して増減を調べましょう。

 

(3) C1とC2が直線y=xについて対称なことに注意して図示しましょう。

 

(4) 非積分関数に対数が登場するのが嫌らしいので、y=xに対する対称性を利用して下半分の面積だけ計算することで、指数関数の積分だけに留めてしまうとよいです。

α、βの「多項式」で答えろと指定されているので、(2)を利用して指数関数を最終的には消去する必要があります。

 

<筆者の回答>

 

第4問

複素数平面に関する問題です。

 

(1)ただただ代入して計算するだけのボーナス問題です。

 

(2)こちらもただ計算するだけの問題です。後半を計算する際に前半の結果を利用すると楽です。

後半の計算結果が「定数」になることが重要なポイントで、左辺もよく見ると|w-α|^2になっています。もうお分かりですね。wはαを中心とする円弧を描きます。

(※この時点では「円全体である」とまでは言えないことに注意です。)

 

(3) (2)のzは意味深な定義のされ方をしていますね。t=0のときzはAに、t=1のときzはBになっていることが分かるので、少なくともzは直線AB上を動くことが分かります。

 

問題文では「zは『線分』AB上を動く」と指定されているので、それはベクトルと同じ考え方をすれば0≦t≦1と範囲を絞ることで達成できます。

 

(2)でwの軌跡はα中心の円弧だと調べていましたが、tが0≦t≦1の範囲を動くときに、wは具体的に円のどの部分を動くのかを今度は調べる必要があります。それには、zの定義式からwの実部と虚部をtの式で表して、取りうる値の範囲を調べればよいですね。

 

こうなればLの通過領域は簡単に図示でき、面積も積分なしの図形の組み合わせで簡単に計算できます。

 

<筆者の回答>

 

第5問

回転体の体積を計算する問題です。(3)までで体積計算の準備をして、(4)にて体積計算を実行するという誘導形式になっています。

 

(1)ABベクトルとACベクトルの大きさ・内積の情報からなす角が求まりますね。今回の問題に関しては、実はこの角度の情報は(2)以降ほぼ使いません。

 

(2)OPベクトルとOQベクトルのそれぞれをパラメータ表示し、x座標がhになるように調整してあげればよいです。

 

(3)線分PQ上の点Rと、点(h,0,0)との距離を計算して、それが最小になるようにRの位置を調整する、という方針でよいです。

Rの座標をパラメータr (0≦r≦1)で表現すると、距離は実質rの2次関数となりますが、rの範囲に縛りがある故にhの値によって距離が最小になるrの値が変わります。このhの値による場合分けを見落とさないように注意しましょう。

 

(※この場合分けを図形的に解釈すると、Rから直線PQに下した垂線の足が、線分PQ上に乗る場合と線分PQの外に行ってしまう場合、ということです)

 

(4) (3)までで9割方体積計算のお膳立てが済んでいます。

三角形の回転体を平面x=hで切った断面は、線分PQをx軸周りに回転してできるドーナツです。その内径は(3)で計算できていることになるので、あとは外径が分かってしまえば断面積が計算でき、断面積をhで積分すれば体積が計算できます。

 

ということで、あとは外径が分かればOKで、それはOPとOQの長さの内長い方になりますね。

 

積分は単純な多項式積分ですが、計算ミスしやすいので注意しましょう。

 

<筆者の回答>