ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

2023年度 九大理系数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、九州大学理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1(1): 4次方程式  (5分)

1(2):  複素平面上の三角形(10分)

2: 数列の収束性 (20分)

3:  1次変換(35分)

4:  関数方程式(40分)

5:  パラメータ表示された曲線に関する面積(25分)

計135分

 

<体感難易度>

1(1)<1(2)<5<2<3=4

 

難易度は昨年並みという感じで、至って通常の九大のセットという感じです。第1問が小問集合なのは意外でしたが。

第4問は昨年に引き続き、共通テストじみた読解問題の体裁をなしています。このタイプの問題は解きにくくて個人的にイヤなんですけどね。

 

<個別解説>

第1問

九大では珍しい小問集合です。

 

(1)4次方程式を解く問題です。

係数が2次の項を挟んで綺麗に対称的な形になっている、いわゆる「相反方程式」と呼ばれるタイプになっています。

相反方程式であれば、答案のようにx^2で割って実質t=x+1/xの方程式に帰着させるのが典型解法となります。

 

(2)複素平面上の三角形に関する問題です。

与式はα,β,γについての対称式になっています。この美し過ぎるほどの対称性の高さから、△ABC自体も対称性が高い三角形、つまり正三角形ではないかと予想できます。

 

ということで、△ABCが正三角形になっているときに与式が成立してることを確かめましょう。120°ずつ回転する要素がでてきますが、それは1の3乗根ωを使うことで実現可能です。

 

[追記] (2)について、読者さんから別解を教えて頂きましたので紹介します。

 

それは、(γ-β)δ=α-βとなる複素数δを定義して、与式全体を無理やり(α-β)^4で割ることでδの4次方程式に帰着させる、というものです。

この4次方程式なんですが、なんと(1)の方程式その物になります!!小問集合だと思い込んでいたら、そうではなくて(2)の伏線になっていたとは驚きました。

 

(1)の結果からδは60°回転を表す複素数になり、α-βやγ-βはそれぞれBAベクトルとBCベクトルに対応してるので、結局BAとBCの長さが等しく、なおかつなす角が60°だということになります。これで△ABCが正方形だと言えることになります。

 

私自身が「複素数平面」をがっつりやらなかった旧課程世代の人間なのもあって、こういう複素数ならでは式の取り扱いに慣れてないということを露呈しちゃいましたね。。。

 

<筆者の回答>

(2)の別解



第2問

数列の収束性に関する問題です。(3)までの考察をヒントに、本題である(4)に挑むという形式です。

 

(1)計算するとa2=0、以後も全て0になることがわかります。

 

(2)こちらは逆に全てのanが2よりも大きくなることが帰納的に分かるので、絶対値を外した綺麗な漸化式にすることができます。

この一般項から、今回は問われてませんがα=2のときは恒久的にan=2となることが分かりますね。

 

(3) a2が1未満となるので、a3以降が全て0になります。

このように、「一度anの値が1未満になったらその次からはずっと0になる」というのが、この数列の重要な性質だと分かります。

 

(4) a2の値は1より大きく2より小さくなるので、検討続行になります。このときにa3と1との大小関係がカギになるため、αの値の場合分けが発生します。

 

1,2回くらい進めてみると様子が見えてきて、2-1/2^k<α≦2-1/2^(k+1)のとき、ak+2が1未満となり、結果ak+3以降が全て0になることがわかります。

 

<筆者の回答>

 

第3問

1次変換に関する問題です。

現行の学習指導要領では「行列」が削除されてしまってますが、本問で実質やってる中身は「行列による1次変換」そのものです。ということで、行列の知識が背景としてあるとより解きやすい問題と言えます。

 

(1)Dはいわゆる「行列式」という奴です。実際に連立方程式を解いてみると、D=0のときだけ不都合なことが起こることが分かります。

もしD=0だとすると、mとnは平行になり、qがそれらと平行な時しかr,sが存在できなくなってしまうわけです。

 

(2)内積=0の情報からv,wを(定数倍を除いて)成分表示できるので、あとは内積=1の情報を使って、その定数を確定させましょう。

 

(3)これは経験がないと難しいと思います。

実は、aとc, bとdがそれぞれ互いに素なら、条件Ⅱが成り立つには|D|=1しかありえないことが知られています。この知識が念頭にあれば、|D|≧2だと仮定すると矛盾が起こるという背理法が思いつきます。

 

任意の(x,y)についてr,sが整数になるには、a/D~d/Dの全てが整数、つまりa~dが全部Dの倍数でないといけません。|D|≧2だとすると、これは前述の互いに素であることと矛盾するわけですね。

 

問題文では、「互いに素」という情報は特にないので、自分で最大公約数を設定することで「互いに素」な状況に帰着させることができます。

 

[訂正] aとcやbとdが互いに素でない場合はそもそも条件Ⅱが全てのqでは成り立たなくなる、というご指摘を頂き、実際にそれが正しいです。その理由は私の下のコメント欄を見て下さい。

だから、最初からこれらは互いに素前提で考えてよいため、D=±1が最終結果になります。

 

<筆者の回答>

 

第4問

関数方程式、特に「加法定理」を満たす関数について考察する問題です。

問題文が強制的に解法を誘導しているため、解きにくい問題ですね・・・同じような計算の繰り返しでもありますし。

 

(1) (A),(B)でx=y=0とした状況を考えればよいでしょう。そのとき、もしg(0)≠0だとすると矛盾が起こることを言えればよいです。

 

(2)微分の定義に従って極限値を計算し、きっちり極限値が定まることを言えればOKです。

 

(3) ある関数が「定数関数」になるという主張を証明したいので、微分した結果が0になることが言えればいいですね。x=0を代入することで、定数値が1だとわかり、(2)同様にg'(x)をこしらえることで、微分=0を示すことができます。

 

この状態で両辺にcosx+isinxをかけることで、実部虚部の比較からf(x)=cosx, g(x)=sinxに限定される、というロジックになっています。

 

(4)やることは(3)までとほとんど同じですので、解説は繰り返しません。ただし、f,gの引数が1/b倍だけズレているので、微分を計算する際には注意が必要です。

 

結果、f(x), g(x)はいずれも指数関数×三角関数の形になります。同じ加法定理から、一見すると互いに異質な「指数関数」と「三角関数」が同居する関数が生まれています。

 

これは、「指数関数」と「三角関数」には実は密接な関連がある、ということを示す1つの伏線になっています。その伏線回収こそが「オイラーの公式」です。数学界のKingとQueenは、愛で結ばれた・・~世界で一番美しい数式、オイラーの等式~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の回答>

 

第5問

パラメータ表示された曲線に関する面積を計算する問題です。

 

(1)接線がy軸平行になる、ということは、dx/dt=0になるということです。

 

(2)dy/dtも計算すると、Cはy方向には単調増加に上昇していき、x方向には(1)の結果から折り返しが発生する曲線になることが分かります。

Cとy=xの交点(に対応するtの値)を調べて、積分計算に持ち込みましょう。

 

<筆者の回答>