2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、大阪大学理系数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1: 不等式評価と極限(20分)
2: ベクトルの処理(20分)
3: 定点から引いた接線の個数 (30分)
4: ベクトルを用いた軌跡の導出(35分)
5: 確率(30分)
計135分
<体感難易度>
2<1<3<4<5
昨年に引き続き、比較的易しめなセットかなという印象です。とはいっても第1問は第5問では発想力が要りますし、第4問は計算量が多めです。
<個別解説>
第1問
不等式評価と極限の計算問題です。
(1)中辺のΣが面倒なので、等比数列の和によって計算してしまいましょう。こうすれば、よくある「各辺の差を微分する」という形で証明できる式になります。
(2)当然(1)の結果を使ってはさみうちに持ち込むのだと予想できます。とはいえ、極限の方にはlog2が入っていて(1)をどう使うかを考える必要があります。
中辺には1/(x+1)という「いかにも」な分数が混じっています。ここから「(1)の式を、積分すればよさそうだ」と気付ければ勝ったも同然です。
ちなみに、anは「メルカトル級数」という有名な級数で、(2)で調べた通りlog2に収束することが知られています。
<筆者の回答>
第2問
ベクトルの処理に関する問題で、本セットの中では一番易しいと思います。
(1) 2本の関係式を連立することで、|OA|, |OB|. OA・OBの全てを計算することができます。結果として、知りたい内積は0になり、この情報が(2)で生きてきます。
(2) (1)の結果を踏まえると、2OA+OBとOA+2OBは、両方とも長さが1で直交するベクトルになっています。ということは、2OA+OB=(1,0), OA+2OB=(0,1)となるように座標軸を組んでも問題ないということになります。
この下で、Pの座標を(X,Y)として、2つの不等式からX,Yの条件、つまりPの存在範囲を調べてあげればよいでしょう。OPの長さの最大最小については、視覚的に調べられます。
<筆者の回答>
第3問
定点から引いた接線の個数に関する問題です。
x=tでの接線がP(a,b)が通る条件を処理すると、tに関する方程式ができます。この方程式が4つの実数解を持てばいいので、微分して増減を調べていきましょう。
その際、tの定義域に制限があることによってaの値による場合分けが発生することに注意です。
<筆者の回答>
第4問
ベクトルを用いた軌跡の導出の問題です。
(1)αの式と、Qの座標を調べることが先決でしょう。後者については座標をパラメータ表示して、それがα上に来るようにパラメータを調整する、という形になります。
(2) |OQ|=1という式を変形すると、(1)の式の一部になっていたAP・AOが登場します。(1)の結果を使って式変形していきますが、2乗の外し方で場合分けが発生することに注意です。
とにかく式変形していくだけなのですが、結構式も汚く計算も面倒です。
結果として|b|と1との大小関係によって、Pの軌跡は放物線、双曲線、楕円と変化することが分かります。
<筆者の回答>
第5問
確率の問題です。
(1)実際にb1, b2を書き下して、それが7で割り切れるようなa1, a2の組み合わせを調べていきましょう。
(2)は少し難しいです。項がn個あるという一般的な状況では、流石に(1)のような力づくでの調査ができません。そうなると「pnに関する漸化式を立てたい」という欲が出てくるので、まずはbn+1とbnとの間の関係を調べてきます。
このとき、「a1が7と互いに素である」というのが結構重要な情報で、このときa1×bnを7で割った余りとbnを7で割った余りは全て1対1対応します(証明はしませんが、似たような話をRSA暗号の記事で紹介しています。RSA暗号 カテゴリーの記事一覧 - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )
そして、an+1も決して7で割り切れず、かつ余りは全部バラバラなので、bn+1とa1×bnを7で割った余りがどんな組み合わせであろう(ともに0になる場合を除く)と、対応するan+1が一通りにバシッと決まります。
この事実からpnの漸化式を立てることができ、解くことができます。
<筆者の回答>