ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 九大文系数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、九州大学文系数学に挑戦します。

なお、原則文系ユニークの問題のみ解いていきます。理系の記事は↓

 

2023年度 九大理系数学 解いてみました。 - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1:  面積が等しい条件(15分)

2:  3次関数の接線が絡んだ三角形の外心(20分)

3:  ベクトルの処理(10分) ※理系第3問の類題

4:  複素数平面を絡めた確率(35分)

計80分

 

<体感難易度>

3<1<2<4

 

文系相手の試験としてはやや骨のある出題だったと思います。特に第4問は複素数平面をしっかり理解できていないと解けない難問です。

一方で理系の第3問を換骨奪胎した文系の第3問は非常に易しい問題になっており、完答必須です。

 

<個別解説>

第1問

面積が等しい条件を調べる問題です。

 

この手の問題では、S1やS2を単独で積分計算してもロクなことはありません。途中に訳の分からない交点が登場したりで積分区間が細分化してしまう上に非常に複雑な式になってしまうからです。

 

調べたい条件であるS1=S2は、S1-S2=0と同じです。ここで試しにS1-S2を計算してみると、なんと上記の面倒くさかった細かすぎる積分区間が次々と繋がって一本の積分にまとめられてしまうのです。

 

こうなってしまえば、被積分関数に絶対値が付いているので区間で分けて外す必要こそあるものの、計算は容易いですね。

 

[訂正]積分範囲を間違えるという凡ミスを犯していたので訂正しました。

 

<筆者の回答>

 

第2問

3次関数の接線が絡んだ三角形の外心に関する問題です。

 

(1)lの式を求めてy=-xと連立するだけですね。

 

(2)ベクトルの内積を使えばよいでしょう。ここで何で内積の定義に出てくるcosθそのものではなくわざわざsinθを調べさせているのかは後述。

 

(3)Pの座標を調べる→OA, OPを計算する、という解法だと非常に計算が面倒になってしまいます。ここは座標から離れて図形問題としてこの問題を見ましょう。

 

Pは△OABの外接円中心、つまり外心です。OAは「θと対面する」三角形の1辺であり、OPは外接円の半径になっています。ここで思いつくはずです。「正弦定理」を。

 

そうです。この正弦定理を使って楽にf(t)=OP/OAを計算させるために、わざわざ(2)でcosθではなくsinθを求めさせていたというわけです。

 

伏線回収が済んだところでf(t)を計算していくと、うまく変数変換することで2次関数に帰着でき、平方完成して最小値を調べることができます。

 

<筆者の回答>

 

第3問

理系第3問の類題である、ベクトルの問題です。完全に理系のそれからは換骨奪胎されており、非常に易しい問題になっています。

 

(1)mとnが平行であることはa:c=b:dと言い換えられます。この式を変形すればD=0となります。

 

(2)理系第3問(2)と全く同じ問題なので、詳しくはそちらをご覧ください。

 

(3) (2)で調べたv,wをqにかけてあげれば瞬殺です。r,sといった係数を調べるに当たり、vとwのような直交関係にあるベクトルの存在は大変に都合がいいわけです。

 

<筆者の回答>

 

第4問

複素数平面を絡めた確率の問題です。

この問題は複素数平面への理解度と、確率漸化式の処理への精通度合いを2つとも試せる良問ですが、他の大問と比べるとどうしても難しく感じるでしょうね。

 

(1) まずωは直接値を求めることができます。その上でω^3=1を因数分解することでω^2とωの関係式が調べられるので、そこにωの値を代入して複素共役になってることを確かめればよいです。

 

(2)ある意味この問題一番の山場です。

今回のznの登場人物は問題文にも書いてある通り0,1,ω, ω^2の4つだけです。ということはn回後にznが0,1,ω, ω^2になる確率をそれぞれpn, qn, rn, snとしてこれらの漸化式を立てればいいという方針は立つでしょう。ということで、漸化式を立てていきたいわけですが、そのためには、ルールを把握して変化の仕方をしっかり調べる必要があります。

複素平面上においては、「複素共役を取る」=「実軸対称に上下をひっくり返す」、「ωをかける」=「原点の周りに120°反時計回りに回す」という操作になっているので、それに注意して丹念に変化の仕方を追っていきましょう。

 

こうして4つの漸化式を立てることができるわけですが、(2)で調べたいのはpnです。確率の和が1になることに注意すると、pn+1の式をpnだけの漸化式に書き換えることができます。

 

(3) とりあえず求めた漸化式を使って実験してみようという問題です。pnの値は(2)の結果を使って調べた方が速いですね。ここで、q, r, sがどの番号でも等しい値になってると気付けるかが(4)を特にあたり肝要です。

 

(4)残りの漸化式を解くのですが、このままだとどう解いていいか見えにくいです。しかし、そこで(3)で実験したことが生きてきます。「どうやらqn=rn=snになりそうだ」そう予想を立てられるので、まずはそれを帰納法で示してあげましょう。

 

こうなればpn+qn+rn+sn=1が分かっていて、なおかつ(2)でpnが分かっていますので、qn=sn=rn=(1-pn)/3で計算できる、と分かるわけです。

 

<筆者の回答>