ちょぴん先生の数学部屋

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2024年度 慶応理工数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、慶応義塾大学理工学部の数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1(1).  2024にまつわる整数問題(5分)

1(2).  数列の極限(20分)

2.  確率(20分)

3.  抽象関数に関する面積の増減(80分)

4.  平行六面体に関するベクトル(30分) 

5.  複素平面上における内サイクロイド(35分) 

計190分

 

<体感難易度>

1(1)<2<4<1(2)<5<3

 

難易度は昨年と同等くらいというところでしょうか。ですが、相変わらず計算量が多く時間内に解ききるのは極めて厳しいセットです。まして基本穴埋め解答形式ですから。

 

第1問は例年通りの小問集合ですが、計算や発想が若干面倒で誰でも完答できるボーナス問題では決してありません。

第2問は確率で、今回のセットではかなり易しめな問題なので完答を目指したいところ。

第3問は本セット最難問だと思います。(4)以降は発想の必要な難問であり、(6)に対する誘導になっているとはいえどう使えばいいかが分かりにくいですね。

第4問は力づくでゴリ押すベクトルの問題で、計算ミスさえなければ完答を十分狙えると思います。

第5問は計算力勝負な複素数平面の問題ですが、(4)の方針建てには経験がいるかもしれません。

 

<個別解説>

第1問

 

小問集合です。

 

(1) 2024にまつわる整数問題です。

アについては2024を素因数分解すればいいわけですが、解答では2025=45^2であることを使った和と差の積の因数分解を利用しています。地道に素因数を探すなら、11の倍数であることはすぐに判断したいところですね。

(各位の数字を足し算引き算を交互にやった結果が11の倍数であれば、その数は11の倍数です。今回の場合は2-0+2-4=0です。)

 

イは、6乗の計算によって候補が3か4であることは簡単に分かります。あとはどっちにより近いかを判断するために3.5^6を計算する必要があります。力づくでは厳しいので、3.5=7/2と分数にしたり、49=50-1と計算しやすくする工夫をしましょう。

 

(2)数列の極限の問題です。

(i)一見すると何したらいいか分かりにくいですが、そんなときこそまずは手を動かしましょう。an≦2については、漸化式と不等式を使ってa2の値を評価してみると、a3以降も同じロジックで証明できそうだとわかります。数学的帰納法ですね。

an≦2さえ言えてしまえば、不等式からf(an)≧0が言えるので漸化式からanが単調増加だと判断できます。

(ii)結論はすでに提示されているので、そこから逆算すると|2-an|を0に収束する数列で上から抑えてはさみうちをすればいいと予想できます。その数列は、不等式から構築できます。

 

<筆者の解答>

※初稿では(1)アを「6番目に『小さいもの』」と誤読し解答してしまっていたので、訂正しました。問題文の読み間違いには注意ですね・・・

 

第2問

 

確率の問題です。

 

(1)最初にどのタイプのコインを取り出すかで状況が変化するので、それぞれについて確率を計算して足し合わせればよいでしょう。

 

(2)Ⅲを取り出しかつHが出る確率をウで割れば条件付確率が求まります。(3)についても同様です。

 

(4)コインを2回投げてコインのタイプが分かるパターンは「1回目と2回目で違う文字が出る⇒Ⅲだとわかる」の時だけです。

よって、最初にⅢを取り出し1回目と2回目で違う文字が出る確率がお目当ての物となります。

 

(5) (4)での考察を踏まえると、コインを複数回投げてタイプが判別できないのは「n回とも同じ文字しか出ない」時ですね。Hだけ出る場合とTだけ出る場合とで分けて考えればよいでしょう。

※n=1では絶対に判別不可なので確率は1, n=2のときは1-カになっているはずです。これで検算できるでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

抽象関数に関する面積の増減を調べる問題で、本セット最難問です。本番では最低限(3)までは正解しておきたいところですが、(4)以降は難しいです。

 

(1)aの条件がまどろっこしいですが、要はy=f(x)とy=axが交点を持たない場合の面積計算となります。それぞれのグラフの上下関係で場合分けが発生しています。

 

(2)y=f(x)とy=axが交点を持つ場合の考察です。g(x)=f(x)-axの増減を微分で調べるのが定石でしょう。

 

(3)(2)の場合の面積計算なので、x=tを境に積分計算が分かれることに注意しましょう。

 

(4)如何せんf(x)が抽象関数なだけに、式計算で不等式を証明するのは難しそうです。ここで注目すべきはF(x)の存在です。F(x)はf(x)の積分、つまり面積でした。

ここから、「グラフの面積」という図形的なアプローチで証明すればよさそうだと気付けたかがポイントですね。t0とxの大小関係による場合分けが発生することに注意しましょう。

 

(5)p(x)というまた別の抽象関数が登場しており、一見すると何が問われてるかすら判然としません。

f(x)は正の値なので示すべき不等式からf(x)を抹消することができて、結局p(x)≧2(t0-x)が常に成り立つことを示す問題となります。

p'だとかp''が問題文に登場しているので、とりあえずG(x)=p(x)-2(t0-x)とでも置いてG(x)の増減を微分を使って調べてみようかとなります。(ゴールはG(x)≧0を示すこと)

 

p''>0を使うとG'(x)が単調増加だと分かるので、あとはG'(x)の符号変化が分かればG(x)の増減が分かることになります。すると、ゴールのG(x)≧0を満たすパターンは、G'(x)が最初マイナスで途中からプラスに転じる場合だけだと分かります。この場合、G(x)はあるところで極小となるわけです。

 

一方でp(t0)=0の情報からG(t0)=0も分かります。もしこの値が極小値ならゴールを満たしており、逆に極小値でなければゴールに到達できない、ということも図を描けば理解できるでしょう。

 

以上の流れからG(x)はx=t0で極小値0を取ることが分かるので、ここからp'(t0)の値が何でないといけないかがわかる(G'(t0)=0じゃないといけない)。という流れになります。

 

まぁ、こうスラスラと流れを書いてはいますが、もちろん解いてる最中は色々考えながら試行錯誤してました。手を動かしているうちに思いついたわけですが。

 

(6)さて、(4)以降(3)までの流れとは隔絶したよく分からない不等式評価の証明が続きました。これらは当然ラスボスである(6)を解くためのヒントになっているわけですが、一見するとどう使えばいいかが分かりにくいですね。

 

「最小値を調べる」ということですぐに思いつく方法は「Sをtで微分する」だと思いますが、実際試すと分かりますが今回は残念ながらこの方法では全くうまくいきません。

 

ちょっと寄り道してみます。

そういえば(5)においてp(x)は「分数関数」という意味深な指定をされていました。(5)自体では全く使わなかったこの情報は一体何だったんだろうと。

それでふと思い出すのが(3)の結果です。ここで求めたq(t)の形は、そう「分数関数」でした。

 

あれ?ひょっとして、(3)のq(t)はp(x)と同じ性質を持ってて(5)の不等式が使えるんじゃないか??そう思って試しにq(t)=0になるtの値√5をt0に見立ててq'やq''を調べると・・・なんと目論見通りにp(x)の性質をドンピシャ満たしてくれているのです!

 

これでq(t)を(5)の結果を使って不等式評価できました。

 

さらにもう1つの伏線を見ておきます。(4)では、F(x)同士の差を評価してましたね。

 

Sを微分する方法ではうまく増減を調べられなかったわけですが、実はもう一つ増減を調べる方法があります。それは「S同士の差を取ること」です。数列とかではお馴染みのテクニックですね。

今回の場合は、Sの式にもろにF(x)が含まれていました。もうお分かりですね。これによって(4)の不等式が使えるようになるんですよ。

 

(4)(5)いずれの不等式も等号成立がt=t0の場合なので、Sの差を(4)(5)の不等式を使って下から抑えることによって、どこで最小値になるかが分かってしまいます。

 

一見すると分かりにくい(4)(5)が、実に巧妙な伏線になっていて(6)を解決に導く、そんな力作と呼べる問題でした。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

平行六面体に関するベクトルの問題です。ほぼ計算でゴリ押すタイプの問題です。

 

(1)スについてはお決まりのベクトルを使う面積公式で仕留められますし、セソはCH⊥a, CH⊥bを使ってCHをベクトル表示していく流れ、タは底面積×高さで体積を調べる問題で、ここまでの情報を使って計算するだけ、といった感じです。

 

(2)これも結局はJIとJKのベクトル表示を求め、面積公式にぶち込むだけです。

 

(3)平面OAB上にある点Pと、辺DE上にある点Qそれぞれのベクトル表示を調べ、両者が一致する条件を考えてあげればよいです。DEについてはあくまで有限長さの「辺」であることからtの範囲に制限が付くことになります。

 

<筆者の解答>

[訂正] タについては、四面体の体積なので、

△OAB×CH÷3=√2/3 が正解です。失礼しました。

 

第5問

 

複素平面上における内サイクロイドを題材にした問題です。

 

(1)C2の回転角θを考えてあげるとよいでしょう。θは、転がった部分のこの長さがC1とC2で一致することからtの式で書け、θが2πの整数倍になった時にちょうどC1が1回転することになります。

 

(2)ベクトルと同じような感覚で複素数を求めるとよいです。複素数平面における回転は「複素数の掛け算」で表現できるんでしたね。

 

(3)道のり、すなわちPの描く曲線の長さを求める問題です。z(t)の実部虚部をxy座標に見立ててあげればお馴染みの問題に化けます。(4)を見越してこの時点でl(t)の式を求めてしまうのがいいと思います。

ルートを外すとき、絶対値が残ることにはくれぐれも注意しましょう。

 

(4) l(t)の式に残ってる積分が直接計算できないので「不等式評価してはさみうちだな」と方針建てしたいところです。

そのベースとなる不等式をどう準備するかが、この問題のメインテーマです。

 

y=|sinx|のグラフは、π周期で合同な山が横一列に並ぶものになります。そこで、その周期性を生かし、積分の上端が何番目の山にあるか?で評価するとうまくいきます。

 

<筆者の解答>