このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
6回目の今回は、2014年の問題です。
第1問
直方体を平面で切った時の断面積を考える問題です。
東大としては、珍しく図を載せてくれているので、ありがたく使わせて頂きましょう笑
(1)まず注目すべきことは、「直方体を平面で切った時の断面は必ず平行四辺形になる」ことです。この時点で、OPやORの長さ、あるいはP,Rの「座標」が分かれば目途が立ちそうだと分かります。
この問題は、座標を設定してしまえば、ベクトルを使った平行四辺形の面積の公式でサクッと解けてしまいます。座標は、直方体を扱っているので各辺を座標軸にしてしまうのが自然でしょう。
(2) (1)の答えには、(tanα)^2+(tanβ)^2という2次の対称式が登場しています。これは、tanα+tanβとtanαtanβという2変数の2つの基本対称式で表すことができますが、これだけではそれぞれの値は分かりません。そのためには、もう1つの関係式が必要です。
それが、角度の和が45°という条件で、tanの加法定理を使えば、もう一つの関係式が出てきます。
これで未知数2つの方程式が2本立ったので解くことができます。
このとき、αもβも鋭角なのでtanは正になるということに注意しましょう。
<筆者の解答>
第2問
確率の問題です。白を引いたときに、問答無用で白×a個、赤×1個にするという設定が見慣れないかもしれませんね。
(1)は、素直に計算するだけです。
(2)は、最初の数回で実験をしてみましょう。
すると、初期状態以外は、袋の中は「白×a個、赤×1個」か「白しか入っていない」の2状態しかありえないことが分かります。
こうなれば、確率漸化式と立てて解き進めればよいでしょう。
(3)は、(2)で出した確率の平均を出す問題で、(2)の答えをΣしてmで割り極限を飛ばすだけです。
ちなみに、(3)のような「数列の平均値」のことを「チェザロ平均」と呼び、チェザロ平均の極限値は、元の数列の極限値と一致することが知られています。(2)の結果の極限を取ると、1/(a+2)となって確かに(3)の結果と一致してますね。
<筆者の解答>
第3問
2放物線の交点にまつわる積分の計算問題です。(3)の積分が面倒です。
(1)は、連立して、2次方程式が実数解を持つ条件を出せばよいですね。
(2)は、x1,x2をuで表現して直接計算・・・なんて絶対にしないでください。計算ミスのリスクを増やすだけです。
せっかく(1)でx1とx2が解になる2次方程式を出しているのですから、解と係数の関係を使いましょう。最終的に、「(uの2次式)×√(uの2次式)」の形になります。(2)では、△OP1P2の面積にあたるものを計算していることになります。
(3)は、(2)の式を積分するわけですが、特に物理的に意味のある量を計算しているわけれはないので、単純に積分の計算能力を問うている問題と言えると思います。
(2)の答えは、積分するにはかなり厄介な形をしています。ルートの中身が2次式という時点で相当面倒なのに、おまけにさらに2次式が係っているのが最高に厄介です。
ここで考えてほしいのは、「ルートの中身を微分したら、ルートの外の形にならないかなぁ・・・」という視点。もしそれが実現できれば、置換積分で計算を進めることができます。
この発想のもと、ルートの中身を微分してみると、-2u-2=-2(u+1) となって、ルートの外にあるu^2+u+1の1次以下の部分とほとんど一致することが分かります。
ということで、u^2の部分はあとで考えることにして、u+1の部分を先に計算することができます。
残ったu^2の部分はどうするか?これは√(2次式)が出てくるときによく使うテクニックですが、
「ルートの中身を平方完成 → sinで置換する」
でたいてい何とかなります。
三角関数の積分計算が大変ですが、これで何とか解ける形にすることができます。
※いきなりこの置換をやってもよいのですが、その分三角関数の種類が増えて計算が大変になります。なので、置換しなくていい部分は先に計算してしまうという小技です。
<筆者の解答>
第4問
多項式と指数関数の混じった方程式の解を考察する問題です。全体的に発想力が必要な難問です。
この問題は、f(x)=xをなんとかして解きたい という趣旨で、x=0が解になることはすぐに分かります。それ以外の解があるかをpとqの大小で場合分けして検討するのが、(2)(3)でやっていることです。
(1)は一見簡単そうですが、意外と発想が難しいです。
こういった大小関係を調べるときには、
1. 左辺と右辺を引き算して正負を調べる。
2. 微分して増減を調べる。
の2通りがあります。(1)では、2を使おうとするとf'(x)=0となる値をうまく見つけることができないため、頓挫してしまいます。よって、1を使います。
1を使うという発想が、意外と思いつきにくいのです。
(2)は、p>qのときは、f(x)=xは0以外に解はないということを証明する問題です。
xnの極限が0にいくことを言いたいので、xn< (0以上1未満の定数)×xn-1 がなんとか言えればはさみうちが使えそうだ、という話になります。
f(xn-1)を最終的にxn-1の1次式で抑え込みたいので、与えられた指数関数の不等式をうまく使ってあげる必要があります。その使い方にも相当頭を使います。
(3)は、p<qのときは、f(x)=xは0以外の解を持つということを証明する問題です。
こちらは、(1)とは逆に、2.微分を使う で進めるとうまくいきます。とはいっても1回微分だけでは足りないので、2回微分までやる必要があります。
この大小関係を調べる方法をうまいこと使い分ける必要がある、はさみうちが使えるような不等式を構築する という2点において非常に難しい問題でした。
<筆者の解答>
第5問
割り算の余りの性質を考察する整数問題です。
(1)は、言わば「合同式」の証明です。合同式のシステム自体を証明することになるので、この小問では合同式を使わないほうが良いです。素直に、余りと商をそれぞれ文字でおいて証明します。
(2)は具体例でbnの性質を見ましょう、という趣旨です。
素直に計算して列挙するだけですが、答えが「周期性を持っている」ことが重要なポイントです。
(3)は、合同式を立てて連立すると、「bn+1と、bm-bnの少なくとも一方はpの倍数だ」ということが分かります。
ここで注目すべきは、bの取りうる範囲。bはpで割った時の余りなのですから、0からp-1までしか取れません。問題文にbn+1>0とあるため、bn+1はpで割り切れない、つまりbm-bnがpの倍数という結論になります。
同様に議論すれば、bm-bn=0しかありえない、ことも分かるわけです。
(4)は、背理法を使うとよいでしょう。つまり「a1がpの倍数⇒a2以降にpの倍数が1個は紛れ込んでしまう」を証明します。
さて、ここにきて(2)が伏線として効いてくるわけです。つまりbnには「周期性がある」のです。周期性があるとしたら、b1=0のとき周期をmとすればbm+1=0となるわけです。
よって、「bnには周期性がある」ことを証明すればよいことになります。
さて、bk+2は、bk, bk+1という前2つが決まれば自動的に決まって、その後も一意に数が決まっていきます。
そこで、(bk, bk+1)の2数の組み合わせは無限にあるのでしょうか?
そんなことはないです。なぜなら、前述のように、bは0~p-1の数しか取れないので、そんなに頑張ってもp^2通りしかないのです。
ということでp^2番目に到達したときの(bk, bk+1)は、今まで出てきたどれかの組み合わせにならざるを得ません。この論法は、一般に「鳩の巣原理」と呼ばれています。
(※「鳩の巣原理」:鳥籠1つに1羽のハトを入れようとしたとき、ハトの数が籠の数より多ければ、どれかの籠にはハトを2羽以上入れざるを得ない というのが由来)
ということで、bnは、上記鳩の巣原理から、周期をもつことを示すことができました。
以上から、b1=0ならば次の周期でb=0になる瞬間が現れるから矛盾 となります。
<筆者の解答>
第6問
線分の通過領域を求める問題です。(1)の設問からして、今回は順像法で解いていきます。
点Pのx座標をp(0<x<2)とおいて、tをpの関数で書いて取りうる値を調べます。
その時にsの値による場合分けが生じるわけです。
0<s<1の時は別段注意することはないのですが、1<s<2の時は要注意です。
注意するポイントは「pの動く範囲」です。今回が「線分の通過領域」になっているが故の注意ポイントです。(筆者は最初、これを見落として大慌てしました。。。)
最終的に、求める領域はグラサンみたいな形になります。
しっかりと境界に、y=±√3xがあることを確認しましょう。
<筆者の解答>