このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
7回目の今回は、2013年の問題です。
第1問
1次変換に関する問題です。
与えられた漸化式の形から、あからさまに1次変換の形をしているので、行列を使うという発想は割と出やすいと思います。
さて、問題文にある2つの条件を見たときに、「回転かな?」と思いついてほしいところです。もっと言えば、60°ずつ回転させる行列が答えなのでは?とこの時点で想像がつきます。
もちろん想像だけではだめなので、ちゃんとそうなることを証明しましょう。
aとbが同時に0になることは、条件2からありえません。よって、a=rcosθ、b=rsinθと置くことができて、行列を縮尺×(回転行列)の形に無理やり変形することができます。
6回行列をかけると元に戻るという条件1の性質から、rは1, θは60°の倍数に限られることが分かります。
あとは、60°, -60°(=300°)以外の角度が条件2を満足しないことを説明すればお終いです。
ここで、「高校で行列を習ってないよ!!」という人のために、別解も用意しました。
別解は、複素数を使う方法です。
初手が少し思いつきにくいですが、zn= xn+iyn, α=a+biとおいてしまうと、
zn+1 = αzn というかなりスッキリした漸化式が出来上がるので、zn = α^nと簡単に一般項が求まってしまいます。
条件1からz6=z0 =1となるので、αは1の6乗根ということになり、6つ候補が出てきます。
お目当てもの以外は6乗よりも前に1になってしまって不適だということになります。
行列での解き方と、この複素数での解き方は、本質的には何も違いがなく、
単純に「行列(=線形代数)の言葉では・・」「複素数平面の言葉では・・」という差でしかありません。
<筆者の解答>
第2問
2つの曲線の交点の個数に関する問題です。典型問題に少し毛が生えた程度の難易度です。
この手の問題は、xの入っている部分= xの入っていない部分に分けて、グラフと横棒の交わりで個数を数えるのが基本です。
グラフは、周期的に極大値と極小値が登場しますが、xが大きくなるにつれて単調に減っていきます。最初は振幅が大きいけど、先の方では振幅が細っていくグラフになります。
よって、解の個数を数える分には、xが小さい範囲で見れば十分です。
<筆者の解答>
第3問
おなじみ確率の問題ですが、この問題はボリュームが半端ないです。というのも、(1)(2)それぞれが単独でも十分大問として成立してしまうレベルに重たい問題なんです。
純粋な確率の問題は(1)だけで、(2)は実質Σ計算の能力が問われている問題といえます。
(1)は、まずは解法選択です。1.確率漸化式、2.直接場合の数を調べる の2通りですが、今回は2の方がいいです。
なぜなら、今回は、漸化式が苦手とする途中経過をきちんと考えないといけないからです。
Aからコインを投げ始めたときに、両者の得点の入り方を列挙してみます。
Aに1点: Aが表
Bに1点: Aが裏➡Bが表➡Bが裏
両者無得点: Aが裏➡Bが裏
これらを、条件に見合うようにいくつも並べる並べ方を過不足なく調べ上げることになります。(「両者無得点」がほとんどの列に、それ以外を1個ずつ入れたり入れなかったりする、最後はAが表、合計n回 あたりが条件です。)
効率よく調べるために、「初手のAが表?裏?」と「途中Bは無得点?1点取った?」の計4パターンに場合分けするとよいです。調べると分かりますが、nの偶奇による場合分けが発生します。
(2)は、(1)で求めたp(n)を使って、「(回数は不問にして)Aが勝つ条件」を計算する問題です。
このΣ計算がかなり大変です。
等比数列のΣなら典型ですし、(等差数列)×(等比数列)のΣもギリギリOKだと思います(公比をかけて引き算するっていう奴です)。
が、今回はなんと、(2次式)×(等比数列)のΣが要求されているのです。ほとんどお目にかかったことがありません。なんとか、「公比をかけて引き算する」が同じように使えないか模索してみるべきでしょう。
苦難の末得られる答えは、1/2より大きいので、今回のゲームは先行有利のゲームだということが分かります(そりゃそうですよね。。。)
<筆者の解答>
第4問
直角三角形の内部にある点と、頂点との長さをそれぞれ求める問題です。
(1)は、問題文にある方程式の各項が、長さ1の単位ベクトルになっていることに気づけたでしょうか?3方向の単位ベクトルの和が0になるときは、それぞれ120°ずれているというのは、割と有名な事実です。
(2)は、余弦定理を使うことで3つの長さの連立方程式が3個出来上がり、これらを解けばいいわけですが、意外と簡単には解けない連立方程式になっています。工夫が要りそうです。
ここで、右辺の形がa^3-b^3の因数分解で登場する形になっていることに着目して、あえて掛け算でa^3-b^3の形を無理やり出してしまおうという解法で解いています。
<筆者の解答>
第5問
整数問題なのですが、ヒラメキなしでは到底太刀打ちできない難問です。
逆に言えば種明かしをしてしまうと、「なーんだ」みたいになるのですが、それを試験場で思いつくのは不可能だと思います。正直、入学試験としては全く向いていない問題ですね。。。
まず命題Pからして、威圧感たっぷりです。(a)の連続3整数の積はともかく、(b)の「1が連続99個以上出現する」というのを読んだ瞬間に逃げたくなりますよね笑
(1)は、なんだかよく分からない不等式が与えられて、それを解けと言われています。仕方ないので解きましょう。
左辺と右辺に、(x+y)^3の展開式の残骸があるので、中辺をバラしてあげれば上手く消えてくれそうです。あとは、普通にxについて解くだけですが、答えは非常に汚いので、計算ミスを疑ってしまうのも無理はないかと思います。
(2)は、(1)が当然ヒントになっているのですが、どう使えばいいんでしょうか?
まず、中辺が連続3整数の積になっていることに気づきます。そして、111・・・1(1が99個並んでいる数)は各位の和が3の倍数なので、それ自体3の倍数なので、3yをこの数字にしてしまえば良さそうです。
ここまで考えると、xは10の何とか乗みたいな数であれば都合がよさそうです。
(1)を満たすように、xを目一杯デカくしてあげれれば、無事(a) (b)をみたす整数を構築することができます。
種を聞いてしまえば、大したことないように思えますが、このアイデアを初見で思いつくのは、まず不可能です。試験本番では、真っ先に捨ててしまいましょう。
(というよりも、この問題を作った先生が天才すぎると思います。。。)
<筆者の解答>
第6問
斜めの軸での回転体の共通部分の体積を求める問題です。これまた、高校生に解かせるには酷な難易度で、本番では捨て問確定です。
(1)は、見た瞬間に、「なんで回転軸と同じ向きに断面とらねぇんだよ!!」と作問者を小一時間ぐらい問い詰めたくなりますが、この向きでないと(2)がうまく解けません。
かくして、回転軸に対して斜めの断面を考えることを強いられているんだ!!状態で解き始めるわけですが、V1の断面をうまく式で表現したいところです。
まず、V1の外表面を考えましょう。これ、座標軸がもし45°向きがずれていればきれいに式で書けますよね。なので、そんな都合のいい45°傾いた座標軸を自分で作ってしまいましょう。その座標で式を作った後に、回転行列を使って元のxy座標に戻してあげればよいのです。
それから断面を切って条件を整理すれば、断面の形状を出すことができます。
(2)は、(1)でV1の断面を考えたので、同じようにV2の断面を求めてみましょう。両者はy軸について対称になっているので、共通部分を考えるのは難しくありません。
あとは、断面積を出してtで積分して終了です。
<筆者の解答>