ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -2015年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

5回目の今回は、2015年の問題です。

第1問

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曲線の通過領域を求める問題です。典型問題なので、解いておきたい所です。

 

通過領域を求める方法には、大きく2つあります。

1. 「逆像法」: 曲線の式をaの方程式とみなして、それがa>0の解を持つようにx,yの条件を求める方法。

2. 「順像法」: xを固定して、aを正の範囲で動かしたときのyの取りうる値の範囲を求める方法。

 

まずは、よりメジャーな逆像法での解き方について説明します。

 

Cの式をaの方程式とみなすと、Cはaの2次方程式に帰着されます。2次の係数が正か、0か、負かで解の様子が変わるので場合分けです。

 

それぞれについて、正の解を持つ条件を、「判別式」「軸の位置」「切片の位置」の3点に注意して決めていきましょう。

 

次に、別解として順像法を用いた解法を紹介します。

 

Cの式の右辺をaの関数とみなしてf(a)とおいてしまいます。

そして、xの値を固定した状態でf(a)(つまりy)の取りうる値の範囲を調べることになります。

 

そのためにf(a)をaで微分しますが、xの値によって様子が変わるので、そこで場合分けが生じることになります。当然、出てくる結果は、先の逆像法の結果と一致します。

 

結果論、順像法の方が面倒ごとがなく楽だったかもしれませんね。。

 

<筆者の解答>

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第2問

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Aだけ2文字分追加するという設定の確率の問題で、この設定のせいで非常に考えにくくなっている、この年の最難問です。(私も答案を何度も書き直してます。。)

 

この2文字になっているAのややこしさを、まず何とか解消したいです。

ややこしさの原因は同じ文字が2つあることにあります。であれば、AAという2文字のAのうち、「左側をA1, 右側をA2」と2つを区別することにしましょう。

 

この区別をして、n番目にA1がくる場合、n番目にA2がくる場合で場合分けできます。

あとでこの2つの確率をドッキングすればよいのです。

 

さて、この後の方針としては、

1. 確率漸化式を立てる、2. 直接場合の数を数え上げる があると思いますが、

2で解こうとすると、「途中でAAがk回でてくるとして計算、それをΣして・・」と計算が行き詰まってしまう(実際詰まりました笑)ので、1の確率漸化式で行きます。

 

漸化式の方がいい理由としては、今回はn番目付近だけに興味があり、途中経過には興味がないので、末尾だけで計算できる漸化式と相性が良いからです。

 

漸化式で行くことを決めたとして、どこまで考えればよいか。今回は一度に2文字追加される可能性があるので、n+2番目まで考えて漸化式を作るのが良いと思います。

 

すると、一個飛びの漸化式が出来上がるので、nの偶奇によって場合分けが生じます。

(最終的には、ドッキングして1つの式で書けるのですが、気づけたでしょうか?)

 

ここまでやって、ようやく「(サイコロの振る回数はともかくとして)n番目にAがくる確率」が計算できました。さて、問題文には「n回サイコロを振って」という指定がありますが、これはどう考えればよいのか。実は無視しちゃってOKです。

 

なぜなら、一度に2文字追加される場合がある以上、n回以下の回数で文字がn個並んでしまうので、文字がn個並んでしまった時点で、残りを何回振ろうが、n番目の文字には何も影響がないからです。

 

ここまでが(1)です。長かった。。。

 

(2)は、n-1番目にA2がきて,n番目にBがくる確率なので、(1)で求めた、「n-1番目にA2がくる確率」に、1/6をかけてしまえばお終いです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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2直線の交わる個数、囲まれた領域の回転体の体積を計算する問題です。

これも典型問題なので、頑張って解き切りたいところです。

 

(1)は、交点の個数なので、連立してできるxの方程式が何個解を持つかという話になります。今回は、pの式で書けと言われているので、aを定数分離してあげればよいでしょう。あとは、曲線とy=aの交わりを考える、よくあるパターンです。

 

(2)は、回転体の体積のセオリー通りに、積分計算を実行するだけです。ここでlogの入った積分が出てきますが、logのある積分は、隠れた(x)' =1を無理やり作って部分積分、です。計算結果は、(3)を見すえた形に整えておくとよいです。

 

(3)は、(2)の答えが2π+○○の形をしているので、○○=0で良いです。

(何気に、(2)の計算ミスを発見できる設問ですね笑)

 

<筆者の解答>

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第4問

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数列の漸化式に関する問題です。誘導が丁寧なので、素直に解いていきましょう。

 

(1)は、与えられた数列をInとして、漸化式を使ってIn+1=Inを言いましょう。

 

(2)は、(1)のInの具体的な数値を計算して、pn+1 + pn-1を愚直に計算します。

 

(3)は、pnもqnも3項間漸化式なので、特性方程式などを使ってそれぞれの一般項を出すのが、一番確実でしょう。

ちなみに、qnは、フィボナッチ数列と呼ばれる非常に有名な数列で、(3)の結論は、Pnは、フィボナッチ数列の奇数番目だけを集めた数列、ということになりますね。

 

<筆者の解答>

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第5問

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この年のセットで一番話題になったであろう、シンプルな整数問題です。2015年の問題だけに、2015に因んだ問題ですね。

 

まずmが小さい数で実験してみると分かりますが、最初のうちはam=2015Cmは全部奇数になります。すると、mが1個増えるとamがどう変化するのかが知りたくなってきます。

 

二項係数は、階乗から出来上がっている数なので、比の計算と相性がいいです。なので、am+1/amを計算すると、mのきれいな分数式bmが出てきます。

 

さて、bmは分数で書けている式なのですが、これを約分したときに分子が奇数のままだと、amは偶数になりようがないです。よって、bmを約分したときに分子が初めて偶数になる瞬間を求めればよいことが分かります。

 

それが起きるには、2016-mを素因数分解したときの2の個数が、m自身を素因数分解したときの2の個数を上回ればよいわけです。mが奇数の時は当然NGなので、mは偶数であり、mが2で何回割り切れるかで、考察を進めればいいでしょう。

 

 

<筆者の解答>

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第6問

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抽象的な関数について、積分の不等式評価・極限を出す問題です。(2)で発想が必要になっていきます。

 

(1)は、gの中身にnxが入っているのが嫌らしいので、取りあえずt=nxと変換してしまいましょう。すると幾分スッキリとした形になります。gの定義から、tの積分範囲を-n~nから-1~1に絞り込むことができます。すると、fの中身がt/nになり、これの値の範囲が-1/n~1/nになるので、与えられたfの不等式が使えることが分かります。

ここまでできてしまえば、できたも同然でしょう。

 

(2)は、あることに気づけるかが勝負の分かれ目です。

h(x)の形をよく見てください。(1)のg(x)とよく似ていませんか?

実は、h(x)は、g(x)を微分した形になっています。これに気づけないと、この問題は厳しいです。

 

これに気づけると、与えられた積分を部分積分できることが分かり、部分積分を実行すると、(1)の形に持ち込むことができます。

 

あとは、p,qの式を求めて、(1)で証明した不等式を使って、はさみうちの定理です。

 

<筆者の解答>

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