このシリーズでは、平成の九大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
16回目の今回は2004年になります。
第1問
確率・期待値の問題です。
(1)k回目で終了する確率P(k)を計算して定義通りに期待値を求めていきますが、n=1だけ例外扱いする必要があり、n≧2の場合もk=nだけ別個に扱う必要があります。
最終的には1次式×等比数列の形のΣを計算することになります。
(2)こちらも考え方は同じで、k回目で終了する確率Q(k)を計算して期待値を計算します。こちらの場合はn=1,2の場合が例外扱いとなります。
期待値を計算する際にΣk(k-1)x^(k-2)の計算が要求され、これが非常にハードです。
流石に(1)で計算したΣkx^(k-1)の計算方法では対処困難なので、ここは微分の知識を使います。
Σx^kはΣの取れた形で計算できるので(等比数列の和なので)、それをxで2回微分するとΣk(k-1)x^(k-2)の形が出てきます。
<筆者の解答>
第2問
高校物理の「屈折の法則」を証明する問題です。
Pの軌跡を光だと思えば、「水中Dから空気Eへ光が飛び出すときに、どう屈折するか?」という状況を考えていることになります。光は「一番短い時間で到達できる経路をたどる」という性質があるため、まさにこの問題の状況は光の屈折に例えることができるわけです。
(1) f(t)の式自体は容易に立つと思いますが、増減はすぐには分かりません。1回微分しても増減が調べにくいので、2回微分する必要があります。
以後f'(t)=0となるtをaとします。
(2) f'(a)=0を式変形しつつ、sinαとsinβをaの式で表してあげましょう。「入射角と屈折角のsinの比が光の速度の比に等しい」、まさにここで証明する式が「屈折の法則」そのものになっています。
(3)β=2αの時には、u/v=1/(2cosα)と求まるので、あとはcosαを求めるのみです。f'(a)=0を実際に解いてaの値を求めましょう。
<筆者の解答>
第3問
双曲線と直線で挟まれる領域の回転体の体積を計算する問題です。
(1) Pとlとの直線の距離がPQそのものです。
(2) (1)の誘導に従って考えると、lに沿ってπPQ^2を積分すれば良さそうです。しかし、注意しなければいけないのは、pで積分するのではなく、AQ=qで積分する必要があるということです(Aは、Cとlの左側の交点)。なので、まずはこのqをpの式で表す必要があります。
ここまでくれば置換積分で体積計算すればいいのですが、計算ミスが多発しやすく、答えを合わせるのはなかなか厳しい所です。
別解としては、(1)を使わずCとlを原点の周りに45°回転する、という方法があります。
こちらであれば面倒な変数変換は必要なく素直に体積を計算できます。ただ、途中で∫√(x^2+2)dxの計算が要求され、これは過去に京大で1つの大問として出題されたくらいには難しい積分計算です。
参考までに、その京大の過去問を張っておきます(第4問です)
平成の京大理系数学 -2002年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)
<筆者の解答>
(2)の別解
第4問
数列に関する問題です。
(1) 余分なn-3を除けば、漸化式は公比2の等差数列の形をしています。なので、anは等比数列+(nの1次式)と表せそうです。よって、漸化式を使って、このnの1次式を確定させましょう。
「番号を一個ずらして辺々引いてnを消す」という、鈴木貫太郎さんがよくやる方法でも解けると思います。
(2) 第1項から第n項までの和Snを計算すれば、Pk=S2k - Sk-1 で計算できます。k=1のときだけ例外処理になります。
(3) (1)と(2)の結果を使って不等式を処理するだけです。
にしても何で、「○○かつ△△が成立『しない』kの条件」なんて出題の仕方をしたんでしょうね?素直に成立『する』条件を訊けばいいのに。
<筆者の解答>