ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系数学 -2002年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

18回目の今回は、2002年の問題です。

第1問

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(筆者注: 誤 an+2 正 an+1)

数列の一般項を求める問題です。漸化式の与えられ方がSnが混じっていて、かつ境界条件にSnの極限の情報があるという、なんとも変則的な問題です。

 

ともあれ、Snを含む漸化式は、an = Sn - Sn-1 を使ってSを消去してしまうのが定石です。

これを用いてaだけの漸化式を作ると、a1,a2だけ特別扱いで、a3以降はan= 2*a3/(n-1)(n-2)と求まります。この時点でa2とa3の値が未知なので、漸化式と極限の情報を使って両者を求めましょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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円に内接する三角形の、辺の長さの2乗和について調べる問題です。

正弦定理を用いると、AB^2+BC^2+CA^2 = 4(sinA^2 +sinB^2 +sinC^2)となるので、

以後、カッコの中の関数f=sinA^2 +sinB^2 +sinC^2の取りうる値を考えることになります。(1)ではf>2について、(2)ではf<9/4について考えます。

 

ここで、A+B+C=πなので、fは実質2変数になります。2変数の最大最小を考えるので、予選決勝法です。答案では、Bを固定して考えています。

 

このとき、Bが鋭角か、直角か、鈍角かでfの振る舞い方が変わります。

丁寧に調べていけば、Bが直角、鈍角の時は、fは2以下となります。

 

(1) ここまでの考察で、f>2となるためにはBが鋭角であることが必要だと分かりました。対称性から、AとCについても同じ議論ができるので、f>2となるには、△ABCが鋭角三角形であることが必要です。

 

(2)は、これまでの考察によりfの最大値が9/4になることが分かり、等号成立条件は、cosB=1/2 つまりBが60°になることです。対称性から残りのA,Cについても同様なので、△ABCは正三角形です。

 

 

<筆者の解答>

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第3問

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4次式の係数を決定する問題です。

まず、f(x)=0の整数解としてありうるのは、定数項1の約数、つまり±1のみです。

1と-1の両方が解となる場合、また1あるいは-1が重解となる場合で、f(x) = 0が虚数解を持つ条件を考察します。

 

その際、x=αが重解となる時、f(α)=0 かつf'(α)=0になることを押さえておきましょう。

 

<筆者の解答>

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第4問

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アルキメデスの螺旋」の長さを求める問題です。(2)を解くためのヒントとして、(1)が用意されています。

 

(1)は、単に微分を計算するだけの問題です。この答えが、(2)の伏線となります。

 

(2)は、x=θcosθ, y=θsinθと書けるので、長さは、√(x'^2+y'^2)の積分で計算されます。計算すると、結局√(θ^2 +1)を積分する問題に帰着します。なんとなく(1)の答えっぽい形が出てきました。

 

しかし、そのままでは(1)を使えないので、(1)を使えるように無理やり変形しましょう。

√(θ^2 +1) = (θ^2 +1)/√(θ^2 +1) = θ^2/√(θ^2 +1) +1/√(θ^2 +1) としてあげて分母に無理やり√(θ^2 +1)を作ってあげると、(1)が使える形になりました。使わないほうは、部分積分で計算できます。

 

今回は定積分でしたが、同様にすれば、√(x^2 +1)の原始関数が、

[x√(x^2 +1)+log{x+√(x^2 +1) } ]/2 というかなり複雑な形ですが求めることができます。

 

√(x^2 +1)の積分はかなり難易度が高いため、(1)のようなヒントがあると非常にありがたいですね。

一応別解で(1)を使わず積分する方法を2通り紹介してますが、tanで置換するとかなりえぐい計算となり、もう一方はこの置換方法を知ってないと無理、というパターンです。

 

<筆者の解答>

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(2)別解その1 tanで置換する方法

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(2)別解その2 定番の置換方法

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第5問

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三次関数と横棒の交点が3つあるときの状況を考察する問題です。

 

3次関数と横棒が3つ交点を持つためには、3次関数が極大値極小値を持っていないといけないので、この3次関数をf(x)とすると、f'(x) = 0は異なる実数解を持たないといけません。これにより、a^2 > bが言えます。

 

この状況の時にグラフを描いてあげると、結局

f(x) = 極大値、f(x) = 極小値の状況を考えてあげればよいことが分かります。

 

計算が大変ではありますが、-a±2√(a^2 - b) がこれを満たすことを確かめましょう。

 

<筆者の解答>

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第6問

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複素数の数列が初期値に戻るための回転角θの条件を考える問題です。

 

今回、θは「度」で与えられていますが、この手の問題は、単位「ラジアン」で取り扱うことに慣れていると思うので、ラジアンに変換しましょう。(度数法のままで行く場合は、最後まで度数法で貫いてください。途中で度とラジアンを混ぜないように注意です)

 

θ°は、πθ/180 ラジアンです。

 

今α = cos(πθ/180) + isin(πθ/180) とおいて、漸化式を解くと、zn = z0となる条件は、

α^n = 1と分かります。

 

このとき、nθ/180が偶数となるので、θは有理数であることが必要です。

 

これで終わりにしてはダメです。θがどんな有理数であってもOKであること、つまり十分性を証明しないといけません。

 

θ=a/b (a,bは互いに素な自然数)と書けたとすると、n= 360b*l/a (lは自然数)と書けるので、lを、aの倍数となるように選んであげれば、nは整数として見つかります。

 

これで十分性の確認も終了です。

 

この問題の結果から、度数法でθが有理数であれば、θ回転を何回も行えば、いつかは一周して元の位置に帰ってくることが分かります。逆にθが無理数であれば、何回回転させても元の位置には戻ってこれません。

 

もっと言えば、πは無理数なので、弧度法(単位ラジアン)で有理数となる角度については、何回転させても元の位置には戻ってこれないということです。

 

<筆者の解答>

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