このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
17回目の今回は、2003年の問題です。
第1問
数列の和を求める問題です。
条件(ⅱ)を整理すると、(n+1)an+1 = (n-1)an-1 となります。こんな漸化式は、両辺にnをかけてあげれば形が整い、解くことができます。
1/{k(k+1) }のΣは、部分分数展開して間が相殺されてバッサバッサ消えていくパターンになります。
<筆者の解答>
第2問
回転体の体積を求める問題です。
問題文通りに法線の式を出して、グラフに描いてしまいましょう。あとは、お馴染みの回転体の体積を積分計算する問題です。
<筆者の解答>
第3問
京大の大好きな四面体に関する証明問題です。空間図形を扱うので、ベクトルを使うのが良いでしょう。
条件(ⅰ)から、OAベクトル、OBベクトル、OCベクトルの互いの内積の値は全て等しくなります。
条件(ⅱ)から、4つの面のうち頂点Oを含む3つの面の面積がすべて等しいので、OA=OB=OCが言えます。
残りのOを含まない面の面積の情報から、△OAB, △OBC, △OCAが全て正三角形になっていることを確かめましょう。
<筆者の解答>
第4問
多項式の割り算に関する問題です。
x^2 + x + 1 = 0という2次式を見た瞬間に、1の3乗根ωを思い浮かべてほしいところです。ωは1でない虚数で、ω^3 = 1、ω^2 + ω + 1 = 0 を満たします。
今回の多項式の割り算の余りをax+b (a,bは実数)としたときx=ωとすると、最終的にaω+b = 0 となります。aとbが実数である一方でωは虚数なので、この関係式を満たすためにはa=b=0でないといけないことが分かります。
よって、余りが0、つまり「割り切れる」が答えになります。
<筆者の解答>
第5問
rE+sAが、任意のr,sについて零行列以外の時に必ず逆行列を持つ条件を求める問題です。
まず、r=s=0のときはB=rE+sAは零行列になるので、以後rとsは同時に0にならないとします。
このとき、Bの振る舞いは、Aによって変化します。場合分けの仕方は、AがEの定数倍でかけるか、そうでないかです。
前者の場合は、Bは、零行列になるかEの定数倍になるかの2択ですので、零行列の場合を例外にして必ずBは逆行列を持ちます。
よって、AがEの定数倍になること、すなわちa=dかつb=c=0がそのまま求める条件の1つになります。
後者の場合は, Bは零行列になりえないので、Bの行列式が常に0でない条件が求める条件になります。
行列式を素直に計算してできる式について、r=0を代入すると、s≠0なので、ad-bc≠0が分かります。
すると、行列式がr,sの2次式になるので、平方完成することで常に0にならない条件を求めることができます。
<筆者の解答>
第6問
リーグ戦で最終戦積が1敗のチームが2チーム出る確率を求める問題です。これは難問です。
まず、1敗のチームが2チーム出るという状況を考察しましょう。この2チームの名前をA,Bとします。
もし全勝のチームがいたとして、そのチーム名をZとします。このとき、AとBはZに負けてないといけません。この時点で1敗ですね。しかし、AとBは直接対決をしているはずなので、どちらかが2敗となります。これはAとBがともに1敗という事実と矛盾します。
よって、全勝のチームはいません。
AとBの直接対決の勝者をAとしましょう。
そうすると、AはB以外の他のチーム1つだけに負けて、残りは全勝しています。また、BはA以外には全勝しています。Aに勝ったチームをCとしましょう。
Cは2回以上負けていないといけないので、Aには勝っていてもBに負けていてかつ、残りのチームに少なくとも1回負けています。
ここまでの考察で登場したA,B,Cの選び方はn(n-1)(n-2)通りあります。
これらの確率を掛け算するのですが、注意しないといけないことがあります。
「AがBに勝ちCに負け、かつ残りを全て勝つ確率」×「BがAに負けて残りを全て勝つ確率」と計算してしまうと、「AがBに勝つ =BがAに負ける」をダブって計算していることになってしまいます。
よって、この掛け算の片方を、「(BがAに負ける条件下で)残りを全て勝つ確率」という風に、条件付確率にしないといけないのです。
リーグ戦の状況把握と、条件付確率の使い分けの双方を問われる難問でした。
<筆者の解答>