ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系数学 -2001年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

19回目の今回は、2001年の問題です。

第1問

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3次関数と直線の交点の個数を考察する問題です。

 

tanの加法定理を用いてLの傾きを計算しますが、接線の傾きが45°の場合だけ例外扱いする必要があります。

 

Pのx座標をtとしたときに、CとLを連立してできるxの3次方程式が、x=t以外に2つの相異なる実数解を持つ条件を求めることになります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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5次方程式が、虚軸上にある解を持つ条件を調べる問題です。この年のセットでは最も易しい問題です。

 

虚軸上にある解があると言っているので、x=it (tは実数)の形の解があることになります。これを代入して、実部=0, 虚部=0 という2つの連立方程式を解けばよいです。

 

一応、「虚軸上」なので、x=0もありです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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iの累乗の周期性を調べる問題です。

 

一般にi^nの値は、nを4で割った余りによって決まりますので、anの値は、f(n)を4で割った余りによって決まります。

 

f(n)を4で割った余りを調べればよいわけですが、1/2という分数が混じっているので、nを4で割った余りによる分類では不十分で、8で割った余りで分類する必要があります。

 

結局anは、8周期となるので、求めるkは8の倍数となります。

 

<筆者の解答>

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第4問

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正八面体のどの辺とも垂直でないvベクトルを取ってきたときに、どのベクトルとの内積も負になる頂点が存在することを証明する問題です。結構面倒くさい問題です。

 

まず、ベクトルの内積の値は座標軸の取り方によらないので、

正八面体の中心を原点、各頂点が座標軸上に来るように座標軸を設定しても一般性は失いません。少しでも内積の計算を楽にしましょう。

 

このとき、v= (a,b,c)とおいて、とにかく考えるべき内積を全て計算してしまいましょう。ここで、どの内積も0ではないので、a,b,cは全部0でなく、また|a| , |b|, |c|はすべて異なる値となります。

 

各kについて内積が列挙できたら、どんな条件の時に全て負になるかを各kについて書き出します。すると、それら条件を6つ合わせると、(a,b,c)のありとあらゆる場合を網羅できていることが分かります。

 

身も蓋もないゴリ押し戦法ですが、これが結局一番楽だと思います。

 

<筆者の解答>

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第5問

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条件を満たすn個の複素数の組の個数を数える問題です。

通常、誘導設問がつくことがない京大の問題ですが、この問題に関しては、誘導設問があっても十分難問です。特に(2)が難しいと思います。

 

まず、条件(イ)(ロ)の解釈からスタートします。

 

条件(イ)の意味するところは、zkが「1のp乗根のうち1でないもの」なので、一般に、cos(2mπ/p) +isin(2mπ/p) (m=1,2,・・・,p-1)と書ける代物です。

ここで、zkに対応するmを、mkと書いてしまいます。

 

条件(ロ)は、これらzkの掛け算が1となることから、「m1 +・・・+mn がpの倍数」と言い換えることができます。なぜなら、複素数の掛け算は、角度の足し算と同じだからです。

 

とどのつまり、この問題は、mk = 1, 2, ・・・, p-1となる整数mkについて、

m1 +・・・+mn がpの倍数となるような、(m1,・・,mn)の組の個数を数える問題となります。この解釈ができるかが、第1関門です。

 

(1)はn=3のケースを考えます。

pの値によって場合分けする必要があり、p=1,2の時は条件を満たす組はありません。

pが3以上であれば、m1 + m2 + m3 がpか2pであれば条件を満たすので、これを満たす組を数え上げます。

 

(2)は、発想の難しい難問です。「an, an+1の片方もしくは両方を使って書け」 なんて情報がなさすぎて考えづらいですね。はっきり言ってほしいですよね。。。

 

ともかく、anの漸化式を立てる問題です。

満たすべき条件は、

m1 +・・・+ mn+1 + mn+2 がpの倍数かつ

mkはすべて1以上p-1以下 です。

 

このとき、2番目の条件から、m1 +・・・+ mn+1はpの倍数になれません。m1 +・・・+ mn+1をpで割った余りをLとすれば、一つ目の条件を満たすには、

mn+2 = p-Lとなるしかありません。よって、(m1,・・,mn+1)を、和がpの倍数にならないようにとれば、対応するmn+2がただ1通りに決まります。

 

以上をまとめると、an+2は、(m1,・・,mn+1)の取りうるあらゆる組み合わせから、(m1,・・,mn+1)の和がpの倍数になる組み合わせ、つまりan+1を引いたものになります。

 

(3)は、(2)で立てた漸化式を解けばよいです。

 

<筆者の解答>

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第6問

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積分値の極限です。積分計算・極限計算のありとあらゆる要素をてんこ盛りにした難問です。

 

まず、sinの中身がnxのままだと考えづらいので、t=nxと置換してしまいましょう。

また、積分区間が0からn^2 *πとなっていてこのままでは絶対値を外しにくいので、0からπ、πから2π、のようにπごとに区間を区切ってしまいましょう。

kπから(k+1)πの区間では、kが偶数の時sint>0, kが奇数の時sint<0となって絶対値が外れます。

 

次に指数関数×三角関数 型の積分を計算することになりますが、部分積分でももちろんいいのですが計算ミスが怖いです。この場合は、指数関数×sint と指数関数×cost を微分した式2つを用意することで、原始関数を求めてしまうのがミスが少なく良いと思います。積分を計算した結果として、等比級数の和が出てくるので、これを計算します。

 

最後に、極限を計算する場面で、n{1-e^(-π/n) }の極限が、∞×0の不定形となって困ってしまいます。これは微分係数の定義を利用すればよく、f(x) =e^(-πx)としたときに、

-f' (0) と値が一致します。

 

あまりに要素過多で大変な問題でした。

 

<筆者の解答>

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