ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系数学 -2000年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

20回目の今回は、2000年の問題です。

第1問

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円に内接する四角形の1頂点を、残りの頂点で表現する問題です。

 

ここは、せっかく正三角形という情報があるので、座標を設定すると見通しが良くなります(しなくてもできるかもしれませんが。。。)。ベクトルの関係は、座標軸の位置と向きに依存しませんし、今回の問題の場合は相似になるので、縮尺にも依存しません。なので、こんな芸当が行えるというわけです。

 

線分APとBCの交点をQとすると、比の情報からAQベクトルをABベクトルとACベクトルで表現でき、AQベクトルの定数倍がAPベクトルになることと、OP=1となることから、APベクトルの表式が求まります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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2次方程式の解の絶対値のうち、大きいほうの最小値を求める問題です。

(1)(2)はもちろん関連していますが、独立に解いても特に支障はないでしょう。(2)を解く過程で(1)の答えは勝手に出てきますし。

 

(1)の2つの関数を連立して2乗してあげると、(2)の2次方程式ができるので、(2)の中で一括して考えることにしましょう。

 

(2)の方程式からは、√x = (2/a)x + 1-1/a と、-√x = (2/a)x + 1-1/aという2つの方程式が出てきますが、後者が実数解を持たないのは明らかです(左辺はマイナスなのに右辺はプラス)。なので、(1)の方程式が実数解を持つ条件と、(2)の方程式が実数解を持つ条件は全く同じになります。

 

2次方程式が実数解を持つときと、虚数解を持つときとで大きく話が変わるので、判別式によって場合分けします。

 

実数解を持つときは、この方程式は2つともプラスの解なので、βは単純に大きいほうを選べばよいです。βはaの複雑な式で書かれるので、これの最小値を微分で調べるのはしんどそうです。しかし、よく考えれば。前半の(a-2)^2はaが2に近いほど小さくなり、後半のルートの式はa= 4-2√2 の時以外はプラスになるので、a=4-2√2のときに最小値をとるとわかります。

 

虚数解を持つときは、αとβは共役な複素数なので絶対値の値は等しくなります。解と係数の関係からαβの式が分かるので、|β|の式がシンプルに求まります。

 

(1)の別解は、お馴染みaを定数分離して、グラフと横棒の交点の数を数える方法です。

このグラフを描いておけば、|β|の最小値が3/2-√2になることが視覚的に分かります。

 

<筆者の解答>

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第3問

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三角関数の不等式を考察する問題です。

 

(1)は、3次元空間にある長さ1のベクトルcが一般に、

c = (sinθcosΦ, sinθsinΦ, cosθ) と書けることを利用します。これは、3次元空間における極座標となります。別名球座標ともいいます。大学以降でバンバン使いますので、覚えておいて損はないです。

このcを代入して、与式を丁寧に計算してあげれば、(1)は証明できます。

 

(2)は、(1)の不等式を、cosβの2次不等式とみなして解くのが見通しが良いでしょう。

解くと、cos(α+60°) < cosβ <cos(α-60°) となりますが、安易にcosを外してはいけません。単位円を描いたときに、α-60°とα+60°で挟まれたエリアが、と0°と180°を跨ぐか否かによって場合分けが発生することに要注意です。

 

<筆者の解答>

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第4問

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実部と虚部が互いに素な自然数の時、複素数素数乗が実数にならないことを証明する問題です。一見簡単なように見えて、実は、この年のセットの最難問です。

 

初手の方針決めからして難しいです。

複素数の○○乗、という形を見て、a+biをsin, cosを使った極形式にして処理したくなります。しかし、今回は残念ながらこの方法だとどうにもなりません。なぜなら、aとbが互いに素、pが素数といった整数問題要素をまるで生かすことができず詰んでしまうからです。

 

仕方ありません。極形式にすることはあきらめて、泣く泣く二項定理で進める方針にします。

 

二項定理で展開してあげると、(a+bi)^pの虚部をΣの入った式で表現できます。

この式の中ではpは奇数でいてくれたほうが好都合なので、先に例外としてp=2のケースを個別に考えます。p=2のときに虚部が0にならないのは明らかですので、以後pが3以上の場合を考えます。

 

pが3以上の時に、虚部が0だと仮定すると矛盾が生じるという、背理法を考えます。

 

虚部のΣの式は、aを含まない項が1つだけあり、他は全てaの倍数になっています。aとbが互いに素という情報を生かすと、a=1以外はNGだと分かります。

 

a=1としてあげると、今度はpだけの項と、bの倍数の項に2分されますので、pはbの倍数でないといけません。pは素数だったので、b=pまたはb=1に可能性が絞られます。

 

b=1の時は、1=pの倍数 となって矛盾、

b=pの時は、pの倍数= pで割り切れない整数 となって矛盾 となります。

 

ここまで多様な場合分けを行った末に、一番都合がいい場合でも矛盾が起こってしまうため、虚部は絶対に0にならないということができます。

 

<筆者の解答>

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第5問

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積分で書かれた数列の極限を求める問題です。(2)で発想が必要となります。

 

(1)は、cn+2を素直に部分積分を使って計算しましょう。

 

(2)は、自分で適切な不等式を作ってはさみうちの定理に持ち込まないといけない難問です。

土台となる不等式をどうやって作ろうかと考えたとき、まず、cnの範囲を絞ってみましょう。

-1<cosπx<1となることを生かしてあげると、-(n+1)∫x^ndx < cn < (n+1)∫x^ndxという不等式を作ることができ、計算すると、-1<cn<1が分かります。

このままでははさみうちを使えないので、-1<cn+2<1 として、(1)と組み合わせてあげると、両辺が0に収束するハッピーな不等式が見事に出来上がります。

 

(3)は、(1)の関係式を使えば容易に分かります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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サイコロの出た目の和の余りについて考える確率の問題です。見た目は仰々しいですが、至ってやることは標準的な問題です。

 

(1)は各余りの推移を考えてあげれば、余りが1増えるときだけ確率1/3, 残りの移動は全て確率1/6であることが分かり、漸化式は簡単に立ちます(書くのが少々面倒ですが。。。)

 

(2)は、(3)のヒントです。

条件(イ)は、全部の確率を足して1になることに気づけば自明です。

条件(ロ)も、(1)で立てた漸化式と睨めっこすれば分かると思います。

 

(3)は、(2)の条件(ロ)を使うことで、kによらず、pn(k)の極限が等しくなることが分かります。全部の確率を足して1になることから、その極限は1/5になります。

5で割った余りは、何回も回数を重ねれば平等に均されていくので、この結論は当然の結果と言えます。

 

<筆者の解答>

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