このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
4回目の今回は、2016年の問題です。
第1問
不等式評価の問題です。微分して増減を調べるという方針は立ちやすいですが、計算の工夫をしないと大変になります。
まず、指数にxが入っているのはイヤなので、対数をとるというのは良いでしょう。
すると、logの中に1/xが入っている少し嫌らしい関数ができます。今後微分することを考えるとlogの中身はスッキリさせたいところです。そこで、t=1/xとすれば大分スッキリします。
この変換をしたあと、logにかかってくるtの式が分数になっています。これも避けたい要素です。なぜなら、このまま微分を繰り返すと、いつまでたってもlogが解消されないからです。微分した青写真を描いたときに、大小比較しやすいようにできるだけtの分数式にしたいわけです。
というわけで、できるだけ分数の形を排除するように分母を払ってしまいましょう。
logにかかるtの関数が只の多項式であれば、いつかはlogが消えます。
こんな形で見通しの良い式変形をして微分をしていかないと大変なことになる、という意味で少し難しい問題でした。
これができれば、あとは典型問題です。
<筆者の解答>
第2問
連勝勝ち抜けシードを題材にした確率の問題です。
まず、できるだけ優勝者がでないように試合数を引き延ばしてみましょう。そのときに試合に勝つチームを順番に並べて実験してみると、
・A⇒C⇒B⇒A⇒C⇒B・・・
・B⇒C⇒A⇒B⇒C⇒A・・・
というように繰り返しが発生することが分かり、初戦でAとBのどっちが勝つかで分岐することも分かります。
ということで、Aが優勝を決めうるのは、試合数が3の倍数でないときに限ることが分かります。
(※n=1のみ例外なので、そこだけは個別で考えます)
(1)は以上の考察で解けることになります。
(2)は条件付確率を訊かれています。
「Aが起こったとき、Bが起こる確率」は、
「AとBの両方が起こる確率」÷「Aが起こる確率」で計算することができます。
今回の場合は、
「Aが3m回以内で優勝し、かつ最後の対戦相手がBになる確率」÷「Aが3m回以内で優勝する確率」
を計算することになります。
<筆者の解答>
第3問
三角形の面積を最小化する問題で、非常に易しい問題です。
問題文に従って、R1, R2, R3の座標を計算、結果△R1R2R3は直角三角形になるので、その面積をaで表して、微分するだけ。
本当にこれだけの問題でした。
<筆者の解答>
第4問
複素数平面の、シンプルな良問です。
鋭角三角形という条件を処理するので、長さで攻めるか、角度で攻めるかの2通りが思い立ちます。
角度で攻めようとすると、三角形の各角度を表現するのがとても大変になりそうなので、今回は長さで攻めるのが正解です。
複素数平面での長さは、「差の絶対値」という形で簡単に求まってしまう上に、今回は嬉しいことに、全ての辺の長さが|z-1|の倍数になっているので都合がいいです。
あとは、辺の長さをつかって鋭角になる条件を立てて、zの条件を積み上げればよいです。
<筆者の解答>
第5問
小数を題材にした整数問題です。
(2)までと、(3)は実は全く別の問題になっていて、誘導ではありません。そのあたりが嫌らしいです。そのうえ、問題文冒頭の小数の表記を見た瞬間にじんましんが出てしまいそうな、近寄り難さがあります。
しかし、この問題は、実は見かけ倒しです。言わんとしていることを理解してしまえば、そんなに難しくはありません。
(1)(2)でやろうとしていることは、ルートでかかれた数をできる限り有理数で近似してやろうという趣旨になっています。
(1)は、1000・・0. △と計算されるルートの中身は何? という問題です。
とりあえずルートがあるので、1/10^kを追いやって2乗しましょう。
すると、両辺に整数と小数の足し算が現れるわけです。ここで、小数点以下kケタの小数に0をk個分掛け算すると、その数は整数になる、というのがポイントです。そして、1未満の小数は2乗しても、1未満の小数です。この事実を使えば、nの候補を絞ることができます。
(2)は、計算すると先頭が5~9になるルートは必ず存在するよ、という意味です。
(1)と同じように、2乗してみます。ここで、整数の存在を証明するテクニックでよく使うのが、「不等式の区間の長さが1以上 → みたす整数が必ずある」という事実です。これを使うと(2)の証明ができます。
(3)は、打って変わって、平方数以外の自然数のルートは無理数になることを証明するという趣旨になっています。当然背理法です。
√sの小数部分が有理数だと仮定すると・・・で矛盾を引き出します。
<筆者の解答>
第6問
東大でお馴染みの体積の問題なのですが、王道パターンから外れた設定で難しい問題です。
Kをどうやれば作れるかをイメージすることが第一歩です。
いきなりABを自由に動かすと訳が分からなくなるので、最初はAを固定して、徐々にその固定を外していくという発想でいけば考えやすいと思います。
まず、Aを思い切ってy軸上に固定してしまいましょう。(軸に固定するのは、Bの座標などの計算を楽にするためです)
すると、AB=2, 途中Cを通過するといった条件から、Bの座標をAのy座標で表現することができます。(Aのy座標の満たすべき条件もこの時点で決まります)
次に、固定を少し外して、Aがy軸上をある程度自由に動ける状態にしましょう。
すると、それに応じてBもyz平面上を動くことになり、軌跡を描くことになります。
この軌跡を求めるのが第二段階です。
ここまでで、線分ABがyz平面に拘束されている場合の通過領域Sが分かるというわけです。
あとは、Aをxy平面を自由に動けるようにすると、結果としてSをz軸周りに一回転してできる立体こそが、今回体積計算をするKだということが分かります。
その後、積分を実行するわけですが、これが最終関門。中身がかなり複雑で、変数変換をうまいことしないと、計算がとん挫します。
<筆者の解答>