ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の東大理系数学 -2017年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

3回目の今回は、2017年の問題です。

第1問

f:id:stchopin:20210902074932p:plain



cosの倍角の公式を題材にした問題です。至って標準的な難易度です。

 

(1)f(θ)については、cos3θ,cos2θをcosθの式で表して整理するだけです。

 余談ですが、一般に、cosnθはcosθのn次式で書けることが知られています(チェビシェフ多項式)。

 g(θ)については、f(θ)を代入して計算するするだけなのですが、ちゃんと多項式になるのか心配になった人もいるかと思います。

 ここで、g(θ)の分子と分母にθ=0(つまりcosθ=1)を入れてみてください。両方0になります。ということは、因数定理によりf(θ)は必ずcosθ-1で割り切れますので、ちゃんとg(θ)は多項式になります。

 

 (2)は、-1<x<1の範囲で2次関数の値域を考える問題になります。ここで、ちょっとした落とし穴なのですが、-1<x<1が開区間なので、もし2次関数がこの範囲で単調だった場合は、「最小値がない」のです。よって、2次関数の頂点が-1<x<1にある場合だけ考えればよいことになります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328211225p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902074955p:plain



いわゆる2次元ランダムウォークを題材にした確率の問題です。

 

4方向それぞれの起こる回数をa,b,c,dとすると、その確率は、6!/(a!b!c!d!)/1024となります。(1)(2)それぞれについて、a,b,c,dの組み合わせに制限が出るので、それらを全部足し上げるという形で解いていきます。

 

余談ですが、このように点が各方向に等確率で動く現象を「ランダムウォーク」とよび、主にブラウン運動(水面の上で花粉などの微粒子がランダムに動き回る現象)の研究に使われるモデルとなっています。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328211816p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902075018p:plain



複素数平面上の点の軌跡を考える問題です。

 

(1)は、まずLの式を作るのが第一歩です。考え方的には、ベクトルを使って直線を表現するテクニックと類似しています。(通る点)+(直線の向き)×パラメータ という作り方です。複素数平面の世界では、直角は、iをかけることで表現できます。

 

上のパラメータは実数なので、複素共役をとっても変化しないので、それを利用してパラメータtを消去しましょう。

 

ご丁寧にも円の式になるとヒントがあるので、それを目がけて変形を進めましょう。

(このヒントは正直過剰な気がしますが・・・)

 

(2)は、独立で進めても構いませんが、(1)をうまく利用できると楽になります。つまり、βとβ^2をつないだ直線が、とある線分の垂直2等分線だと解釈できるわけで、(1)が利用できます。あとは、wの実部の取りうる値の範囲をチェックすればお終いです。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328212755p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902075043p:plain



一見整数に見えない数列の各項が整数であることを示し、隣り合う項の最大公約数を求める問題です。正直、サービス問題に等しいレベルで簡単な問題で、(1)(2)は小問として不要だと思います。

 

(1)は一般項に代入するだけです。

(2)は、よくある3項間漸化式を作る問題で、an+1を出発点に考えましょう。

(3)は、(2)の漸化式から明らかでしょう。一応証明するなら帰納法です。

(4)は、最大公約数を求める問題なので、ユークリッドの互除法です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328213330p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902075105p:plain



2つの放物線の共通接線を考える問題です。方針は容易に立ちますが、所々細かい議論が必要になります。

 

(1)は、連立して重解を持つ条件を出していけばよいです。

 

(2)は、少し混乱するかもしれませんね。少なくともa=2となる共通接線をもつようなkの値を先に決めてしまうわけです。一個のkに対して、対応するaは複数存在しうるわけです。そのうちの1つがa=2だよという話。

 

さて、(1)で求めたkの式からは、aは2個しか出てきません。もう一本はどこに行ってしまったのか、悩んでしまうところです。

ここで思い出しましょう。(1)ではa=-1のケースを除外していたのでした。とすれば、3本目は、ひょっとしてa=-1なのでは?と疑ってチェックしてみましょう。無事a=-1が3本目になっています。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328214223p:plain

 

第6問

f:id:stchopin:20210902075127p:plain



回転体の体積を計算する問題です。

(1)と(2)のつながりがイマイチ分からなかったので、独立に解いています。

 

(1)は、Pの座標をパラメータ表示できれば容易いでしょう。

 

(2)は、(1)のようにQが固定されているときにOPの通過する領域Sを、x軸周りに1回転させてできる立体がKになっている、と考えて進めていきます。

ということで、Sを平面x=tで切った断面を考えて、それを回転させればKの断面になるというお馴染みのやり方で解けることになります。

Sの断面の考察が少し難しいですが、なんとか進めていきましょう。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200328214337p:plain