このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
3回目の今回は、2017年の問題です。
第1問
cosの倍角の公式を題材にした問題です。至って標準的な難易度です。
(1)f(θ)については、cos3θ,cos2θをcosθの式で表して整理するだけです。
余談ですが、一般に、cosnθはcosθのn次式で書けることが知られています(チェビシェフ多項式)。
g(θ)については、f(θ)を代入して計算するするだけなのですが、ちゃんと多項式になるのか心配になった人もいるかと思います。
ここで、g(θ)の分子と分母にθ=0(つまりcosθ=1)を入れてみてください。両方0になります。ということは、因数定理によりf(θ)は必ずcosθ-1で割り切れますので、ちゃんとg(θ)は多項式になります。
(2)は、-1<x<1の範囲で2次関数の値域を考える問題になります。ここで、ちょっとした落とし穴なのですが、-1<x<1が開区間なので、もし2次関数がこの範囲で単調だった場合は、「最小値がない」のです。よって、2次関数の頂点が-1<x<1にある場合だけ考えればよいことになります。
<筆者の解答>
第2問
いわゆる2次元ランダムウォークを題材にした確率の問題です。
4方向それぞれの起こる回数をa,b,c,dとすると、その確率は、6!/(a!b!c!d!)/1024となります。(1)(2)それぞれについて、a,b,c,dの組み合わせに制限が出るので、それらを全部足し上げるという形で解いていきます。
余談ですが、このように点が各方向に等確率で動く現象を「ランダムウォーク」とよび、主にブラウン運動(水面の上で花粉などの微粒子がランダムに動き回る現象)の研究に使われるモデルとなっています。
<筆者の解答>
第3問
複素数平面上の点の軌跡を考える問題です。
(1)は、まずLの式を作るのが第一歩です。考え方的には、ベクトルを使って直線を表現するテクニックと類似しています。(通る点)+(直線の向き)×パラメータ という作り方です。複素数平面の世界では、直角は、iをかけることで表現できます。
上のパラメータは実数なので、複素共役をとっても変化しないので、それを利用してパラメータtを消去しましょう。
ご丁寧にも円の式になるとヒントがあるので、それを目がけて変形を進めましょう。
(このヒントは正直過剰な気がしますが・・・)
(2)は、独立で進めても構いませんが、(1)をうまく利用できると楽になります。つまり、βとβ^2をつないだ直線が、とある線分の垂直2等分線だと解釈できるわけで、(1)が利用できます。あとは、wの実部の取りうる値の範囲をチェックすればお終いです。
<筆者の解答>
第4問
一見整数に見えない数列の各項が整数であることを示し、隣り合う項の最大公約数を求める問題です。正直、サービス問題に等しいレベルで簡単な問題で、(1)(2)は小問として不要だと思います。
(1)は一般項に代入するだけです。
(2)は、よくある3項間漸化式を作る問題で、an+1を出発点に考えましょう。
(3)は、(2)の漸化式から明らかでしょう。一応証明するなら帰納法です。
(4)は、最大公約数を求める問題なので、ユークリッドの互除法です。
<筆者の解答>
第5問
2つの放物線の共通接線を考える問題です。方針は容易に立ちますが、所々細かい議論が必要になります。
(1)は、連立して重解を持つ条件を出していけばよいです。
(2)は、少し混乱するかもしれませんね。少なくともa=2となる共通接線をもつようなkの値を先に決めてしまうわけです。一個のkに対して、対応するaは複数存在しうるわけです。そのうちの1つがa=2だよという話。
さて、(1)で求めたkの式からは、aは2個しか出てきません。もう一本はどこに行ってしまったのか、悩んでしまうところです。
ここで思い出しましょう。(1)ではa=-1のケースを除外していたのでした。とすれば、3本目は、ひょっとしてa=-1なのでは?と疑ってチェックしてみましょう。無事a=-1が3本目になっています。
<筆者の解答>
第6問
回転体の体積を計算する問題です。
(1)と(2)のつながりがイマイチ分からなかったので、独立に解いています。
(1)は、Pの座標をパラメータ表示できれば容易いでしょう。
(2)は、(1)のようにQが固定されているときにOPの通過する領域Sを、x軸周りに1回転させてできる立体がKになっている、と考えて進めていきます。
ということで、Sを平面x=tで切った断面を考えて、それを回転させればKの断面になるというお馴染みのやり方で解けることになります。
Sの断面の考察が少し難しいですが、なんとか進めていきましょう。
<筆者の解答>